見出し画像

はじめての骨髄提供

【目的】

骨髄バンクの登録や骨髄移植に関する情報は増加しているようですが、骨髄提供に関する当事者目線での情報は限られていると感じています。
ドナー登録や実際の提供事例を増やすためにはより多くの情報が必要だと考えました。
誰かの命を救うことができるかもしれない取り組みを広げるため、私は当事者としての視点から情報を提供したいと思いました。

私自身が骨髄提供を行う際には以下の記事を読ませていただきました。
https://note.com/sho_77/n/n4f60a7ea11cf
骨髄バンクやコーディネーターさんが提供してくれている情報もとても参考になりますが、やはり実際の経験にもとづく情報はとてもありがたかったです。
事例が多い方が良いと思ったので、拙い文章ですが書いてみることにしました。

【おことわり】

正確な日時や場所が特定できるような記載はできないため、具体的な日時や場所を特定できる記述は避け、病院や個人名の記載はありません。
ここに書かれている内容は、医療関係者ではない一個人としての視点と感想です。正確な情報については、骨髄バンクの公式情報をご確認いただくことをお勧めします。
https://www.jmdp.or.jp/reg/

【1:2カ月半前 HLA型一致の連絡】

骨髄ドナーとして登録して約3年が経ち、ドナーであることも忘れるくらいの状況の中、骨髄バンクからの一致通知がSMSで届きました。
普段、SMSといえばワンタイムパスワードやフィッシング詐欺の類が多いのですが、Web問診のURLが記載されていたため、内容を確認したところ、正規のものであると判断しました。

休み明けには郵送で正式な一致通知が手元に到着しました。通知を受け取ったその日、コーディネーターさんから電話があり、Webでの問診回答内容の確認が行われました。また、提供に際して私の仕事やプライベートで不都合な時期がないかも尋ねられました。

その際に、ドナー登録をした理由について軽く訊ねられました。
私が登録を決めたのは、親が白血病を患っていたことが大きなきっかけでした。日中は電話に出ることが難しいため、可能な限りSMSでの連絡をお願いしました。
また、過去に経験した腰痛(いわゆるギックリ腰)の症状や経過については、発生時期や経過について非常に詳しく質問されました。

電話をいただいたのが仕事の外出中ということもあり、確認検査の日時と病院の調整は、後日行うことになました。
この時点で事前の検査や移植が混みあっているということも教えていただきました。

【2:2カ月前 確認検査】

確認検査の日。外来入り口で、骨髄バンクの封筒を手にしたコーディネーターさんと待ち合わせました。バンクの封筒はオレンジ色ということもあり、すぐに見つけることができました。簡単に挨拶を交わしてから診察室前の待合スペースへと移動しました。

外来の合間に検査が行われることになっていたため、待合室でしばらく待機しました。この間、コーディネーターさんのタブレットを使用して交通費の精算を行い、現金を受け取りました。公共交通機関の場合は実費を、自家用車の場合は1キロあたりの金額×距離を申告することになっていました。
その時、コーディネーターさんから聞いた話によると、ドナー登録する人は肉親が患者さん、医療関係者、献血している人であるケースが多いそうです。

その後、診察室でドナー向けのガイドブックを見ながら、コーディネーターさんから提供に関する詳細な説明を受けました。この段階では、提供方法は骨髄か末梢血かはまだ決まっておらず、選定されるかどうかも不明でした。確認検査を終えて選定されてからが本格的なスタートだということでした。提供方法の希望を聞かれた際には、特に判断材料もないので「どちらでも」と答えました。海外では末梢血が主流になっているとのことでしたが、当時はまだ骨髄提供の事例が多い状況とのことでした。

コーディネーターさんによる説明が終わったので、診察室を移動し、医師による診察が行われました。簡単な診察の後、腕の血管を確認された際に、献血の痕を見て「ラブラッド会員ですか?」と尋ねられました。献血痕だけで分かるとは、さすが血液内科の先生だなと思いました。
採血をして、検査は終了しました。訪問から帰途につくまで90分くらいだったと記憶しています。

【3:1カ月半前 最終同意面談】

その後、確認検査の結果とドナーに選定された通知が届き、最終的な同意面談を迎えました。
家族のい同意が必要で、家族が遠方に住んでいる場合は、病院側が柔軟に対応してくれると聞いていました。私はその日のために仕事を少し早めに終え、病院で妻と落ち合いました。コーディネーターさんとも合流し、準備が整いました。

担当のコーディネーターさん、立会いのコーディネーターさん、妻、そして私の4人で個室に入り、ガイドブックに沿って一通りの説明を受けました。
改めてガイドブックに沿って提供方法や安全への配慮、リスクについて説明していただき、疑問点がないか丁寧に確認されました。説明の間、立ち合いのコーディネーターさんは説明や確認に抜け漏れがないかチェックされていたようです。
重要な点として、同意しない選択肢もあることがしっかりと説明されました。ただ、私も妻も既に心を決めていたため、面談の場で迷うことはありませんでした。

その後、医学的な疑問点があればとのことで医師が部屋に入ってきましたが、私の方に特に疑問点はなかったので、手続きはスムーズに進みました。医師は忙しそうにしていましたが、必要な説明はきちんとしてくれました。そして、署名と捺印をして終えました。この日も90分程度かかったと思います。

面談が行われた病院は、採取を行う病院とも、確認検査を行った病院とも異なる場所でした。

【4:1カ月前 ドナー健康診断】

採取を行う病院への通院が始まりました。午前中に健康診断が行われましたが、普通に朝食を食べても良いとのことでした。これまで訪れた2つの病院と比べて、かなり大規模な大学病院でした。初めての場所で迷いそうになりましたが、コーディネーターさんが付き添ってくれたおかげでスムーズに進むことができました。

受付を待っている時に「患者さんの居住地、性別、年代をお伝えすることができますが、どうしますか?」と聞かれましたが、聞いたことによって自分の気持ちが少しでも揺らぐのが嫌だったので、教えていただかないことにしました。

採血、検尿、胸部レントゲン、肺活量、心電図と、次々と検査が行われました。それぞれの窓口で「ドナーの方です」とコーディネーターさんが一声かけてくださると、待ち時間もほとんどなく、最優先で検査を受けることができました。
健康なのにこれほど優先的に扱ってもらえるとは、少し恐縮する気持ちになりましたが、時間休暇を取っていたこともあり、スムーズに進むのはとても助かりました。
採血の窓口で「なんのドナーさんですか?」と尋ねられ、さまざまな移植を行っている大病院ならではの質問だなと感じました。

検査結果を待つ間、血液内科で少しの間待機しました。この待ち時間には、輸血を必要とする患者さんや医学部の学生と思しき人々が出入りしていました。その後、病院所属のコーディネーターに初めてお会いしました。とても明るい方で、話しているだけで心が晴れやかになるような印象を受けました。

診察室に呼ばれて、血液、尿、レントゲン、肺活量の結果に問題がないことを説明された後、心電図の結果について話される段になり、少し微妙な空気になりました。普通の手術であれば問題ないレベルだが、ドナーとしての安全が最優先されるため、場合によっては提供がNGになる可能性があるとのことでした。
医師もコーディネーターも、今日で入院手続きや同意が進むと思っておられたような雰囲気で、こちらも申し訳ない気持ちになりました。
患者さんの移植予定日が迫っていたため、翌日循環器内科での診察と検査後に最終的な判断が行われることとなりました。

ドナーにならなければ知ることのなかったリスクを偶然知ることとなりました。通院が想定外に増えたため、会社にテレワークの利用可否を問い合わせましたが、特別な対応はできないという回答でした。社会や会社の認知や理解がもっともっと必要だと痛感しました。
この日は翌日の検査で少しでも良い結果がでるよう、早めに就寝しました。
(早く寝たからといって、結果には影響ないのでしょうけど。。)

【5:1カ月前 追加の健康診断】

特別に優先的に予約を取っていただいたおかげで、その日の朝一番に診察と検査を受けることができました。朝は病院への交通機関も、病院内も非常に混雑していました。
具合の悪い人がこの混雑を乗り越えて通院するのは大変だなと感じました。

「念のため心エコーを撮りましょう。ただし、今日は予約が混み合っているので、別の日に」と医師に言われました。しかし、廊下で待機してくれていたコーディネーターさんが、状況を説明してくれました。患者さんへの移植日が決まっており、日程に余裕がないことを伝えると、結果的に医師が自ら心エコー検査をしてくださることになりました。柔軟な対応が本当にありがたかったです。

心エコーは初めての経験でした。ドナーの安全が優先されるためか、非常に入念に検査をしていただき、その場で「問題ありません」と言われて安心しました。その後、血液内科に移動し前日に行う予定だった同意書へのサインや入院申し込みを済ませました。

連日、付き添ってくれたコーディネーターさんには深く感謝しています。彼女の存在がなければ、この日のスムーズな進行は難しかったかもしれません。

【6:3週間前 自己血貯血1回目】

骨髄採取では800ml前後の骨髄液を採取するため、事前に自分の血液をキープする自己血の貯血の日がやってきました。今回はコーディネーターさんの付き添いはなく、自分で受付を済ませて検査場所に向かいました。事前に説明を受けていたにも関わらず、少し迷ってしまいましたが、まるでそれを予想していたかのように、病院のコーディネーターさんが途中で合流してくれました。

麻酔科での説明を受け、手術の流れや麻酔のリスクについて詳しく説明を受けました。リスクの確率は非常に低く、道を歩いていて車にはねられるリスクよりも低いとのことでしたが、初めての全身麻酔で人工呼吸も行うとのことで、不安がゼロかといえば嘘になります。
「途中で目覚める可能性」についての説明を聞いて、思わず詳しく尋ねてしまいましたが、そういったことが起こらないように最善を尽くすとの答えが返ってきました。

貯血は全血献血と同様に400ml行われました。自分の名前を書いたシールを採血したてのしたバッグに貼るのは、献血ではあまり経験できないことでした。
貯血後、鉄剤を処方されました。

輸血部の看護師さんもとても明るく、面白い方でした。血管を褒めてくれたり、「こんなに良いことをしているんだから、天国に行けますよ」と励ましてくれました。
病院で、天国に行くとか、そんな話をする看護師さん明るさが、初めての体験ばかりでそれなりに緊張している自分にはとても救いになりました。

【7:2週間前 自己血貯血2回目】

朝から多少の頭痛がありましたが、鎮痛剤を飲むのは我慢しました。通常は電車やバスで病院に行くのですが、車での通院も経験しておこうと考えて、この日は車で向かいました。

病院に着くと、例の明るいコーディネーターさん迎えてくれました。その優しさと明るさが、頭痛も軽減してくれました。前回の貯血では後半に血液の流れが少し悪くなったため、今回は十分な水分補給を心がけましたが、待ち時間が長かったため、結局トイレで出て行ってしまいました、たぶん。。

鉄剤を飲むと軽めの二日酔いのような胸焼けがすると伝えると、コーディネーターさんはすぐに鉄剤の種類を変更することを検討してくれました。私は我慢できないほどではないと伝えましたが、「ドナーさんは我慢する人が多いので、変えましょう」と言ってくれました。

採血中には心拍などを測るモニターを装着され、時折ピッピと鳴るので、その理由を尋ねました。「ちょっと動いただけで電気信号が発生して鳴るので、不整脈ではない」と教えてもらい、安心しました。ベッドに20~30分横になっている間は、スマホをチラ見しても良いかと尋ねたところ、「ガン見してOK」とのこと。看護師さんのユーモアのある対応に感謝しました。

貯血中に「これからは体調を崩さないようにしないといけないですよねー」と軽く話すと、看護師さんは真剣な表情で「(体調を崩されると)困るんです」と答えられました。
改めて、自分の健康、体調が移植を受ける患者さんや関わる全ての方に影響があることを認識させられました。

翌日、普段通りに通勤しましたが、体が重く感じられ、簡単な階段でも息切れするような気がしました。800ccもの血液を抜いた影響かもしれません。体調を崩さないように、飲み会を控えたり、鼻うがいをしたりと、できる限りの対策をしました。

【8:入院初日】

休日だったため、病院の時間外入り口から入院の手続きを始めました。コーディネーターさんと合流し、休日で閑散とした院内を複雑なルートを通って入院病棟に到着しました。支度金として5000円を現金で受け取り、入院生活が始まった実感が湧きました。病院内のコンビニに行くためにも、セキュリティのかかった扉を通過する必要があることに気づき、入院することを実感しました。

採血、身長体重測定、体温と血圧の測定を行い、病室で入院に関する書類を記入しました。私が割り当てられたのは個室で、テレビや冷蔵庫が自由に使える快適な空間でした。浴槽はありませんでしたが、シャワー、洗面台、トイレは完備されていました。

昼食は病院食で、ベッドで食べるのは意外と食べづらかったです。病室のドアにはカギがかかっておらず、ノックはされますが、基本的に返事を待たずに開けられるので、慣れるまで少し落ち着かない気持ちになりました。部屋にはトイレがありましたが、においや音のことも気になり、入院期間中個室内のトイレを使ったのは一度だけでした。

昼食後、医師が挨拶に来てくださり、採血結果を伝えてくれました。貯血の影響でヘモグロビンが基準値以下でしたが、採取には影響がないとのことでした。看護師さんはとても忙しそうで、夜勤時間帯は特に忙しそうでしたが、とても親切でした。

入院の準備として、院内のコンビニで術後に履く紙パンツを購入しました。種類が多く、枚数も様々でどれを選ぶのが正解か迷いましたが、最終的には男女兼用のMサイズ1枚入りが正解でした。
万一足りなくなってもなんとかなるとのことでした。

悩みに悩んで選んだ一品。


最後の最後で風邪をひいたり熱を出さないように、特に気をつけました。

病室は緩和ケアの病棟と同じフロアにあり、快適な個室で過ごす一方で、病気と闘う人々が同じフロアにいるという現実に、命や健康について色々考えさせられました。夕方に検温を行い、平熱より少し高い36.9度でしたが、特に問題はないとのことでした。

夜には早めにシャワーを浴び、バスマットは持参か購入が必要でしたので、入るタイミングや身体を拭いて着替える際には気を使いました。手術後はベッドの角度は30度までしか上げられないとのことだったので、事前にその角度を試してみました。

夕食後から翌朝までに水分をペットボトル2本分飲むよう指示されました。消灯前の巡回では睡眠導入剤の必要性を聞かれましたが、必要ないと答えました。個室なので消灯は自分のタイミングで良かったのですが、廊下の光や緊張感からなかなか寝付けず、結局深夜に導入剤を処方してもらい、ようやく眠りにつきました。
努めて平静を装ってはいたものの、それなりに緊張や不安があったのだと思います。

【9:入院2日目】

手術当日の朝、普段と変わらない時間に目覚めました。トイレや洗面を済ませ、看護師さんの巡回を待ちながら、今日が手術の日であることを改めて実感しました。検温の結果は36.4度でした。

手術後は麻酔で眠っている間に下着から紙パンツに履き替えられると聞いていたため、排便後は特に入念にウォシュレットで洗浄しました。エコノミー症候群防止用のきつめの靴下を履いて、手術の準備を整えました。

けっこう圧迫感がありました

病院コーディネーターさん、主治医、看護師が迎えに来るのを病室で待っている間、緊張で腋や手足に汗をかいていることに気づきました。どれだけ気が小さいのかと自分でも呆れるほどでした。
迎えが来て、自分の足で手術室に向かいました。手術室のフロアには複数の手術室があり、他の患者とすれ違いました。使い捨ての帽子を自分で着用し、手術室前の椅子で氏名や受ける手術内容など最終確認を受けました。

手術室に入ると、手術台に横たわり、うつ伏せになるため首の位置をどうするか聞かれましたが、どちらが良いか分からないと答えました。心電図や酸素濃度のモニターを装着し、左手の甲には点滴用の針が挿されました。麻酔科医から「麻酔が入れば、あとは何も分からないから大丈夫ですよ」と説明され、マスクを装着して深呼吸を何度かしました。周りで確認の声が聞こえている中、左手に冷たい感触が伝わり、その直後に意識が遠のきました。

気がつくと、「終わりましたよ」という声が聞こえ、ベッドで運ばれているような感覚でした。部屋に戻ったのは部屋を出て3時間後で、家族に無事を伝えるためにLINEを送りました。ノドには違和感と軽い痛みがあり、風邪の初期症状のような感覚でしたが、それほど強い痛みではありませんでした。

部屋に戻って数十分後に再び検温と血圧測定を行い、36.7度でした。腰はじんわりと痛み、とにかく排尿したくなりました。看護師に尿瓶をもらい、ベッド上での使用に苦労しましたが、付き添いでトイレに行くのも避けたかったため、尿瓶を使うことにしました。

看護師は淡々としていながらも親切で、その対応に感謝とプロの凄さを感じました。午後には痛み止めが切れてきたため、再び看護師に連絡し、点滴で痛み止めを追加してもらいました。そのおかげで15分ほどで圧迫感以外の痛みは和らぎました。

動けないので何もできないのと、何かをする気力もなく、かといって眠れる気もしなかったので手元のスマホでラジオを小さな音で聴きながら、ボーっとした時間を過ごしました。

部屋に戻って3時間ほど経ち、、ようやくベッドの角度を30度まで上げることが許可され、少し楽になりました。主治医から「新しい命が生まれました」との言葉を聞き、思わず涙がこぼれました。自分の行動が誰かの命を救う役に立ったと実感しました。

夕方には夕食が運ばれてきましたが、30度の角度のまま食べるのは少し難しかったです。おにぎりとおかずが用意されていましたが、食欲はそこまでなく、おにぎりは一つだけ残してしまいました。

夜には、看護師が巡回してきて、睡眠導入剤の必要性を確認しました。普段は使うことのない睡眠導入剤でしたが、昨夜のこともあり、処方してもらいました。夜中に何度か看護師が点滴の交換に来てくれました。消灯前に「何度か(点滴交換に)忍び込ませてもらいますけど、気にしないでくださいねー」とサラッと笑いを誘ってくれる看護師さんでした。
しんどい状況で、笑いが力になることを強く感じたひと時でした。

手術後の夜は仰向けを維持しないといけないことや点滴の制約があったため、ぐっすり眠ったという実感はありませんでしたが、睡眠導入剤のお陰で眠れない夜という程ではなかったです。

【10:入院3日目】

翌朝、頭痛も残っており、少し気だるい朝でした。7:45頃、点滴が抜かれて右手が自由になりました。左手と胸につけられたモニターだけが残りました。

看護師さんが時々、採取した傷口の様子をチェックしてくれ、「順調ですね」と励ましてくれました。「順調」というその一言がとても心強く、励みになったとメモに書いてありました。
朝食は完食しました。

9時には血液内科の医師が診察に来て、傷口の消毒を行いました。傷自体の痛みはなかったものの、頭痛がまだ残っていたため、痛み止めをいただきました。その後、全てのモニターが外され、完全に自由な身体に戻りました。

全ての管が外れた後は、身体を拭いて術衣から病衣に着替えました。看護師さんが温かいタオルをたくさん用意してくれたおかげで、体を拭くことがとても心地良かったです。久しぶりに病棟内のコンビニとトイレを訪れ、回復を実感しましたが、少し歩くだけで疲れることに驚きました。

昼食時、配膳された食事を見て思わず「美味しそう!」と声を漏らすと、看護師さんが「おかわりは無いですよぉー」と返してくれ、ほっこり。
午後は特に予定もなく、頭痛も痛み止めの効果で収まってきたので、PCを取り出して仕事に少し手を付けることができました。

夕方、病院のコーディネーターさんと術後初めて会い、手書きのお手紙をいただきました。その丁寧な文字に、感動しました。

【11:入院4日目 退院日】

退院の朝、病衣から普段着に着替えると、家に帰る実感がじわじわと湧いてきました。早めに着替えて部屋を片付け、PCで作業していると、看護師さんが部屋に来て、「退院をお急ぎなら時間を早めましょうか?」と気遣ってくれました。

その後、主治医の先生が診察に来て、ガーゼの交換と朝の採血結果について説明を受けました。貧血状態はほぼ解消しているとのことで、安心しました。

退院の準備が整い、病院を後にして普段通りのバスと電車で帰宅しました。しかし、短いバスの乗車やたった20~30分の電車の移動でも疲れを感じ、これが手術後の体の変化なのだと実感しました。

家に無事に帰り着き午後からはテレワークで仕事を再開しました。採取部が何かにあたると軽い痛みがあり、腰を曲げた時にも突っ張るような感じがあるため、仕事のパフォーマンスは普段通りとはいきませんでした。

【12:退院翌日】

退院後初めての通勤しての出社。少し疲れやすい感じはしましたが、普通に出社できたことには一安心しました。オフィスの椅子に座ると、採取部が椅子にあたり、激しい痛みはないものの鈍い痛みを感じました。これが気になり、また普段とは腰の力の入れ方が違うせいか、体が疲れやすくなっているように感じました。

その日は無理をせず、残業をせずに早めに退勤しました。帰宅する際、リュックを背負うと採取部にあたり、激しい痛みはないものの違和感を感じたため、リュックを背負うのは避けることにしました。

家に着いてからは、入院中に飲めなかったビールを数日ぶりに楽しみました。その夜はビールのおかげもあってか、ゆっくりと深い眠りにつくことができました。

退院後初の出社日は、体の変化に気をつけながら日常に慣れる一日でした。

【13:その後】

退院後、仕事や日常生活は入院前と同様に行うことができましたが、それでも体には変化があるように感じました。気のせいかもしれませんが、疲れやすくなったと感じることがしばしばありました。

特に、手術を受けた腰を無意識にかばってしまうためか、普段とは異なる動きや姿勢を取ることが多くなりました。その結果、足に痛みが出たり、入院前よりも肩こりを感じやすくなったように思います。これらの変化は、手術の影響によるものか、または単に生活リズムの乱れによるものか、はっきりとはわかりません。

また、採取部付近には時々痒みが出ることがありました。これは手術に使用した紙パンツによる締め付けの影響かもしれませんが、数日で収まりました。

普段通りの生活を送りつつ、移植を受けた患者さんは一番きつい時期を過ごしているのだろうな、と時おり思い浮かべて、回復を願うこともありました。

【14:術後14日後 健康診断】

最後の通院日がやってきました。この日はまず採血を行い、その結果が出た後に診察がありました。採取箇所の状態を医師に診てもらい、幸いにも特に問題はないとのことで安心しました。

血液検査の結果についても話を受け、完全には元通りではないものの、順調に回復しているとの評価をいただきました。そのため、追加の鉄剤の服用は必要なく、普段の食事で必要な鉄分を摂取するようにとのアドバイスを受けました。

この通院で、一連の通院や入院が完全に終了したことを実感しました。これまでの経験を振り返りながら、病院を後にしました。

【15:初めて骨髄提供を経験して】

追加の検査もあり、結果として7回会社を休む必要があり、退院後も身体を激しく使う仕事や出張は控えるなど「ドナー登録ほど気楽にできるものではない」というのが正直な感想でした。
家族にも多少なりとも負担や心配をかけたのも事実だと思います。

ただ、厳しい前処置や移植後の治療を乗り越えてでも「生きよう」と決断した患者さんの希望になったり、命の役に立てたのなら大した負担ではないと思っています。
また、コーディネーターさんや病院関係者のみなさんの誠実で丁寧なプロとしての仕事ぶり、ドナーとの接し方は本当に素晴らしく、自分自身の仕事の仕方や生き方を考えさせられました。

実際に提供を行う際に産休や慶弔休暇のようにドナー休暇があたりまえに整備されると、提供するハードルも下がると思います。

普通の会社員(2児の父)が、誰かの命の役に立てる機会というのは、そうそう無いと思います。
健康、命、家族、仕事、いろいろなことを考える機会になりました。
信頼できる人から訊ねられたらドナー登録や提供を奨めると思います。

この場を借りて、

骨髄バンクのコーディネーターさん
主治医やサポートしてくださった医師のみなさん
自分の子どもくらいの若さなのに、頼もしく、誠実に対応してくださった看護師さん
病院所属のコーディネーターさん
家族

への改めて感謝の気持ちを書き残しておきます。
お読みいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?