小説(タイトル未定) 一章


一章 


----------------------------------------------------------------------------

朦朧とした頭でコーヒーを流し込む。

昨晩は四時間しか眠れなかった。
四時間も眠れれば充分だ、という人もいるだろうが、私はいつも八時間きっちり寝ているから、それより下回る睡眠時間はとてもきつい。

こんな平日の昼間から誰にも気を使わず街中でぼーっとしているが、ニートでも学生でもない。しがない勤め人だ。そして何を隠そう、私はカエルだ。

私は西の方の池からやってきた。生まれた時は手足もないオタマジャクシで、それはそれは大変な数の同胞から逃げるように、人間の世界へやってきた。

今日も早朝から街角の自動販売機の下を一つ一つ丁寧にのぞき、落ちている小銭を拾い集め、出勤前に喫茶店で一杯のホットコーヒーを飲む。私の一日はそうして始まる。

ここから先は

1,406字

¥ 280

いただいたサポートは、音源作りの費用とツアー資金に使わせていただきます。そしてたまにスタッフにおいしい焼肉をごちそうしたいです。