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かき書き、しかじか。

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Okakiのエッセイ集です。
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記事一覧

失敗した人生を歩みたくないから400人分の伝記を読んだのに、本の中の彼らは「失敗しなさい」と私に言う

一度きりの人生だから、失敗しないように歩みたかった。 しかし人生に教科書は無い。既に生を全うしている先人たちは多くいる。そうだ、彼らに学ばせてもらえばよいと思い、伝記集を読んでみた。輝かしい成功の人生を浴びたかったのである。 しかしそこに書かれていたのは失敗だらけの偉人たちの物語であった。 火の燃え方を知りたいがために古屋を燃やしたエジソン、人に騙されてイギリスに置き去りにされたアメリカの政治家フランクリン。 今なら軽い火傷で終わる出来事も昔は大火事だ。深刻さのレベル

取り除かれた焼きそばを眺めて、ペンギンに救われる人間。

「あ、お肉は抜いてください。あと上に乗せるかつお節もいらないです」 インド人の知人と一緒に京都の伏見稲荷に観光に行ったとき、「屋台で焼きそばを買おうよ」と彼が言った。その後、屋台の前で彼が冒頭の台詞を言ったのである。 彼の言葉を聞いた屋台のおじさんは一瞬「え?」ときょとんとした顔をして、あぁはいはいと小さく細切れになった豚肉と、熱い麺の上で踊っていたかつお節を丁寧に取り除いている。 そのやり取りを後ろから眺めていた私は、ぼんやりと「この人とご飯屋さんに行くのは大変そうだ

一人海外旅行って想像以上に怖いし緊張するし寂しい。そしてやっぱり楽しい

あなたは一人で海外旅行に行ったことがありますか? こんにちは、Okakiです。 私は世界の博物館や歴史を探すのが好きで、博物館に行くことを目的に一人で海外旅行に行くことがあります。 海外旅行と言えば、おいしい食べ物とかリゾート地とか海で遊ぶこととか、そういう観光目的の人が多いと思います。一方で私はその国の歴史博物館とか美術館とか、政治の中心地とか、その国の過去から現在までの在り方を感じられる場所を巡ることを旅行の主な目的としています。 恐らく、少しニッチな目的です。

ペンネームに恋をして 正体が分からない方がなんかワクワクする

「ビジネスをするなら名前は本名で顔出しした方が良いですよ」 ぐうも出ない正論。 正に仰る通りでございます。 そうですねぇそうですねぇと相槌を打ちながら、じゃあなんで私はそれでも匿名で活動しているんだろうなぁとぼんやり考えたのであります。 こんにちは、Okakiです。 私は現在個人でデザインやら文章やらを書いたりしてお金をいただき暮らしている人間です。表向きには本名ではなく、匿名で活動しています。 個人で仕事をするのなら「本名で顔出しした方が良いですよ」とよく耳にしては

ボランティアに行って、バスで泣いて、1年後の盛岡冷麺

「君たちニュース観た?東北の方、すごいことになってるみたいだよ」 友人と京都観光をしていた私は、全く見ず知らずのおじさんにそう話掛けられて「あ、さっきちょっと揺れたやつですか?地震怖いですよね」と世間話をするかのようにそう言い返した後、街中で流れる緊急速報に目を奪われた。画面の中で必死に背後の津波から逃げる自動車が映り出されていたからだ。 東日本大震災から10年。 私はあの震災で被害を受けなかった関西の人間だ。だからこそ、どこか他人事のような、違う世界の話のような気持ち

どうせ誰も気にも留めない、だから叫んでやろうと思った〜部落差別の記事を書いて〜

Twitterで「部落差別についてはもう二度と語らない」と言っておきながらこうして再び記事を書いてしまったことをまずは謝罪します。 前回の記事「部落差別という呪いを受けた村に生まれた話」(以後「あの記事」と呼びます)を公開して約半年が経とうとしています。 自分の想像を超える反響があったことで色々なことを考えさせられました。 「またこんなものを書いて何の意味があるのだろう」と思いましたが、きちんと自分の中で纏めておきたいと思ったので続編とも言えるこの記事を書きました。 あ

戦友だった私たち。彼女は家庭を手に入れて、私はキャリアを手に入れた

大学の広いキャンパスにあるラウンジで、隣同士で午後の紅茶を飲みながら笑っていた私たちはいつの間にか違った人生を歩んでいた。 数年振りに大学時代の友人と再会した。 大学時代の彼女はとても行動力のある人で、大学のサークルでリーダーをしながら学生と社会人が集まって面白いことをする全国的な団体のリーダーもしていた。団体の仲間がたくさん居て、よく数百人規模のイベントを開催しては全国を飛び回っているような人だった。まさに「意識高い学生」そのもののような人だった。 そんな彼女を私はとて

大人になって高校の授業を受けてみたら懐かしさと悔しさと嬉しさがそこにあった

2020年7月の終わり、私は4月から学んできたオンライン授業の日本史全28講を全て修了することができました。3ヶ月間少しずつ受講して最後の授業を終えた時は小さな達成感を胸に抱いていました。 私は現在、スタディサプリという大学受験用のオンライン学習サービスで高校の授業を受けています。 いわゆる、社会人学生と呼ばれる存在です。 大学受験?あ、いやそれは受けないです、すみません。 「学生を卒業して大人になっても学校の授業を受けるとか変態かよ」と思われる方もいるかもしれない。..

部落差別という呪いを受けた村に生まれた話

このnoteを公開するかどうかかなり悩んだ。 それは私の中での感情の着地点が見えず、これを公開することでなんの意味があるのだろうと自分でも分からなかったからだ。 だけど、もうこのタイミングではないと恐らく今後もう一生これを書くことはないだろうと思った。だから備忘録として残してみようと思う。 これは私の奥深くに居座り続ける一種のアイデンティティでもある。 ◇◇◇◇ アメリカで広がっている人種差別のニュースを観て愕然とした。 アメリカ建国の父の一人であるトーマス・ジェファー

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絵師を諦めた私がとあるイベントを立ち上げた話。小さな主役になれる居場所がほしかった

前回『憧れだった「絵師になること」を諦めた話』という記事を公開したら想像以上にたくさんの反響をいただきました。 自分のコンプレックスを赤裸々にネットの世界に公開することは怖くもありましたが、「共感した」「勇気出た」などの意見をたくさんいただきました。 長年自分を苦しめていたものがこんな形となって再び自分の目の前に現れるとは思ってもいなかったので、ただただ驚きました。 本当にありがとうございました。 私は「絵師になる」という憧れを諦めて「調べて発信するオタク」という新しい

憧れだった「絵師になること」を諦めた話 絵も小説もコスプレもできない私は「調べて発信するオタク」になりました

私は小さい頃から絵を描くのが好きなオタクでした。周りの人から自分の絵を見て褒めてもらえるような所謂「絵師」になることが憧れでした。ですがいまはその憧れを諦めました。 これは誰かに共感してほしいとか、慰めてほしいとかそういう気持ちは全然なくて、「絵が描ける人間」にしがみついて苦しかった過去の自分に「別に描けなくてもいいんだよ」と言いたい、同じように考えて苦しんでいる人にお伝えできればいいなと思って書きました。「オタクの在るべき姿なんてな、なんでもいいねん」。これはそんなお話で

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