今年も夏が死んだ

パパパパパーテッテー パパパパパーテッテー
パパパパパッパパッパパッパパッパパー

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札幌記念のファンファーレ耳コピ

日が沈むともう半袖じゃ寒くて、バイトの帰り道に腕をさすって帰るたび、今年も夏が終わったんだなと実感する。今年もまた、短い夏だった。コンビニの店内で夏の歌を聴くことはなくなったし、街はちらほらとハロウィン模様だ。

そんな夏も昨日や一昨日までは生きていて、相変わらず馬鹿みたいな日差しでニタニタ笑っていた。やりきった夏にピリオドを打とう、隣町の水族館を目指す。着いてすぐ見えるのは水族館ではなく隣の小さな遊園地にある観覧車で、全部遊ぶぞーって、子供みたいにはしゃいだ。

幼い頃に何度もコースアウトし逆走した思い出のゴーカートは未だに道が整備されていなくて、最後のありえない急カーブは21歳になってもやっぱり曲がりきれなかった。運転、下手でごめんね。

海が見えますよなんて言われてまんまと端っこに乗ったバイキング、このまま死ぬんだと思いながら乗ってたな。いちばん高くまで上がりましたよと言われ、ああここから低くなるのかと安堵したのに、ずっと最高地点で振り回された。海はよく見えた。

遊園地で時間を使いすぎてしまい、水族館RTAが始まる。ウンウン、魚魚魚魚。隣の水槽も魚、魚、魚、あ、これどうぶつの森で釣れるやつだ。たしかイトウって高く売れるよね。で、魚魚魚。説明書きなど読んでいられなかった。大好きなミノカサゴは今年も元気そうに泳いでいて、ちょっとだけ嬉しい気持ちになった。

おたる水族館には天才のトドがいる

1番好きなクラゲのコーナーはタイムアップで見れず、名残惜しくてお土産屋さんを物色する。もう1000円も持っていないのに、660円のチンアナゴリコーダーを買ってしまった。せめて、たくさん吹こうと思う。聞きたい人は是非。

「夏に、線香をあげよう」

100回花火するぞ!と言っていたのに1割も達成できなかった。せめて最後にと、夏を弔う手持ち花火を日没後の寒空の下で強行する。一番イカれた売り文句の花火を買って、ウキウキで街を闊歩する。

桑園から大学に抜ける裏道には光が一切ない。前から迫ってきたら怖いとか、後ろから追いかけられたら怖いとか、横から来ても怖いとか、怖い怖いと騒ぎながら歩いていく。道の真ん中に黒い塊、何?怖いって、何、、、え、人、、、、、、このあと怖すぎて1分くらい無言だった。真っ暗な道の真ん中に微動だにせず座り込むの怖いのでやめてもらっていいですか?

今年の夏を思い出しながら火をつける、これ楽しかったなとか、ここまた行きたいなとか、ここ行けなかったな、とか、やりきったぞとやりきれなかったながゆらゆら燃えて、夏と一緒に死んでいく。全部火をつけて、足元に転がる夏の遺骨を一本一本拾っていく。

「これは大曲の花火大会」「これは差さなかったプログノーシス」「これはめちゃくちゃでかいスイカ」「これは最強のファミリーマート」「これは一面の向日葵」「これは登別の閻魔大王」「これは……」

全部拾って、少し黙った。燃え尽きた花火を見る。何も言ってくれやしなかった。マジ?夏、本当に終わったの?ぼくが考える最強の八月が終わって、将来に立ち向かう九月が始まる。嫌だ!!!就活なんてしてたまるか!!!そのままヤケクソでパピコを2袋買って食べたら、焼け焦げた脳がキーンと冷える感じがした。手からはまだ花火の匂いがして、秋みたいな風がずっと吹いていた。

夏終わらせるの、もう少し待ってもらえますか。


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