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中島健人は突然に〜ひよっこセクラバ紀元前〜

その瞬間は、アイドルの神様のほんのちょっとしたイタズラだったのかもしれない。

2023年11月10日夜21時頃のリビング。
家族が寝静まって、私は待ちに待った一人時間を楽しむため、今日のお供は何にしようかとNetflixを探していた。
なかなかこれ!と言ったものが見つからず、かれこれ30分ほどダラダラと探していると、ふと1つの作品が目に止まった。

『桜のような僕の恋人』

主演はSexy Zoneの中島健人。
う〜ん…中島健人って「セクシーサンキュー」が決めゼリフのあのキラキラ王子様キャラの彼だよね。。
作品自体は面白そうだけど、いうてジャニーズアイドル。王子様キャラ隠しきれてないんじゃないの〜???
まぁでも…見たいものないし、ちょっと見てみるか。。。

…この一瞬が自分の人生を変えるとも知らず、私は呑気に再生ボタンを押した。

始まった途端、私は一気に彼に惹き付けられてしまった。
画面に登場した瞬間、私の頭の中から“中島健人”の存在は消え去った。
王子様のオーラなんか微塵もなく、不器用で真っ直ぐな一人の青年がそこに生きていた。

ボサボサ頭で美容院の椅子に座り、自信なさげにおどおどと話す朝倉晴人。
何事にも不器用で上手くいかず、くすぶりながらもプライドだけはある鬱屈した青年。

美咲との恋に一喜一憂し、美咲が発した苦しい一言に、なじり怒りを爆発させ、自分が美咲にしてしまったことに絶望し、そして彼女の深い愛を知り再び自分を再生していく。
そんな不器用で痛いほどに真っ直ぐな一人の青年の成長を、“演じている”ということを忘れるほど、彼は画面の中で生きていた。

どうせアイドルのお芝居だろうと穿った見方をしていた私は、中島健人の芝居に殴られたと感じるほどの衝撃を受けた。

中の人のオーラを全く忘れさせるほどの自信のない暗い表情。
綺麗な顔をお構い無しにグシャグシャにして怒りを爆発し、絶叫するように泣く彼に、私はすっかり心を奪われていた。

中でも映画の冒頭、人が一瞬で恋に落ちた瞬間を、瞳の動きだけで見てる側に理解させる彼の芝居に私は一気に持っていかれてしまった。

べしょべしょに泣いて見終わったあと、私は
「この人、すごいな…」と思わず自分のXで呟いていた。

私は役者・中島健人にすっかり夢中になってしまった。
他の作品も見たい!!
彼のお芝居をもっともっと見てみたい!!!

Netflixを探してみると「彼女はキレイだった」「シッコウ!」「銀の匙」などが入っていた。

手始めにそのまま「彼女はキレイだった」を見始めた。深夜1時。
そこに現れたのは朝倉晴人とは全く違う青年だった。
凛とした立ち姿でスーツを颯爽と着こなし、冷たい視線を投げてよこす長谷部宗介という、はちゃめちゃにカッコいい人間がここでは生きていた。

驚いた。心の底から。
あれ??さっき見た人と同じ人???
さっき自信なさげに背中丸めてた人と中の人が同じ???
頭バグりそう………

なんだ!?この人は!?!?!
とんでもない役者じゃないか!!!!
どこに隠れてたの!?!?
なんで誰も教えてくれなかったの!?!?!?
ちょっとーーーもうーーーもっと早く教えてよーーーー!!!!!

その晩、私は一気に3話まで見て、さすがに徹夜はキツいと泣く泣く布団に入り眠りについた。

一夜明けても、私の興奮は収まらなかった。もっと見たい!もっと知りたい!!
なんでも良いから中島健人という人を知りたい!!

Xを覗くと昨日のポストにたくさんの「いいね」が付いていた。びっくりした。
当時フォロワー10人とかの、某グループの情報を収集するためだけに作った最弱アカウントの深夜の呟きに、こんなにたくさんの人がいいねをしてくれている。
中島健人ってこんなに愛されてる人なんだな……

私は、彼をもっと知りたい!!という衝動が抑えられず、この際恥はかき捨てだ!!と、こんなポストを再び投稿した。

この呟きにセクラバさん(SexyZoneのファンネーム。正式にはSexylovers。)が、たくさんの自分のお気に入り・とっておきの中島健人を教えてくれた。
彼には色々な顔があるらしい。
ドラマ、映画、アイドル、、、アイドル、、、?
…っっっは!!!
そうだ!!!!!!!
この人アイドルだった!!!!

私は彼の原点を思い出して、YouTubeで「Sexy Zone」を検索した。

『彼女はキレイだった』の主題歌「夏のハイドレンジア」。
シルエットの中島健人が表れた瞬間、私は息が止まってしまった。
なんだ…この美しい横顔は………
こんなに美しい人がこの世に存在してるのか………
そして、甘く、優しく響くその歌声。
私の目は、耳は、心は、一気に掴まれてしまった。

これは、とんでもない人に出逢ってしまった。
これは危険だ、、、この人の沼にハマってしまったらきっと抜け出させなくなるぞ、、、そう思いつつも、YouTubeのMVを暇があれば見漁った。もう止まらない。止められないかった。

しなやかで華やかで力強いダンス、甘く、優しく、澄んでいて、海の向こうまでも届くんじゃないかと思うくらいに響き渡る歌声。。。

あの曲もこの曲もむちゃくちゃ良いじゃないか!!!
あのパフォーマンスもこのパフォーマンスも、最高にカッコいいじゃないか!!!
私の心は抗いようもなく中島健人の虜になっていた。
私の人生に中島健人が舞い降りたのだ。
私の世界がキラキラと輝き出した音が聞こえた。
目に映るもの全ての彩度が、昨日よりも鮮やかになったのが見えた。

そして気がつけば息をするかのようにファンクラブの入会方法を調べていた。
……っは!!いかんいかん!!!
おかき!!落ち着いて!!!!
アンタ、まだ出会って2日目よ!ファンクラブはさすがに早いって!!
そう自分に呼び掛けて正気(?)を取り戻しながら、でも暇さえあればSexy Zoneについて調べてしまっている自分がいた。
そして調べてみて気がついた。
彼らのデビュー日は、11月16日。
しかもその2日後にはドームコンサートの一般発売があるという。
これはきっと何かの巡り合わせだ。
私の心は決まった。
そして、Sexy Zoneの記念すべきデビュー日である11月16日、出会って1週間も経たずに私はセクラバの仲間入りをした。

ひよっこセクラバの誕生である。


この出会いは、アイドルの神様のほんのちょっとしたイタズラだったのかもしれない。
 日々の生活に退屈している女に、絶世のアイドルを与えてみたらどんな風になるのか。神様のほんの出来心だったのかもしれない。
もしかしたら、今この瞬間もアイドルの神様が、空の上でニヤニヤと観察しているのかもしれない。

もしそうだとしたら、私はアイドルの神様に感謝したい。
私に中島健人を与えてくれて、ありがとう。
こんなに素敵なアイドルに出会わせてくれて、心からありがとう。

そして、
あの日、あの映画を選んだ、私、ありがとう。
中島健人を見つけてくれて、ありがとう。
彼に出会ってくれて、心からありがとう。


こうして私のセクラバ人生は幕を明けた。
最高に楽しくて、最高にワクワクして、ピッカピカに輝いている私のセクラバ生活は、このあとも怒涛の展開を迎えるのだが、それはまた別のお話。