おかかねこたろう

あなたが少しでもやわらかな日々を過ごせますように。ひとりごとも物語も吐き出します。

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最近の記事

『透明になりたかった私へ』 2

 遠くで電車が走り去る音を感じて重い瞼がぴくぴく痙攣する。それを合図にまだ開きたくなかった目を開ける。乱雑にほっぽりだされた服と下着がいつものように、恨みがましそうに床へ横たわっていた。いつもなら寝返りをうっても広い布団が今日はせまい。普段は春樹の仕事に行っている時間だが、今日は久しぶりの休みだから。 「春ちゃん、もう12時だよ。そろそろ起きない?」    投げ出されて冷たくなっているパジャマに袖を通しながら私は春樹に声をかける。眠りの深い彼がそんな声で起きるはずがない、そ

    • 『透明になりたかった私へ』 1

      都合のいい女、とはなんだろう。  遠くで電車が走り去る音を感じて重い瞼がぴくぴく痙攣する。それを合図にまだ開きたくなかった目を開ける。乱雑にほっぽりだされた服と下着がいつものように、恨みがましそうに床へ横たわっていた。  もちろん部屋の主はいない。  なんせ土日祝が儲けどきの職業だ。 「うわ、ケータイ充電してない。」  時刻を見ようとして手に取ったスマホは画面に触れても、ボタンを押してもなんの反応も示さず、画面は真っ暗なまま。 「いつものことか。」  ひとり呟いても

      • ~きもちわるいわたし~

        ひとに甘える、それがなんだか悪いことだとおもう、気持ち悪いことだとおもう、してはいけないことだとおもう。 どきっとした人はいませんか。わたしはそう。 どんなに信頼している人でも好きな人でも、甘えることが怖くて怖くてたまらない。そうなった理由は家庭環境だったり今までの人間関係だったり、思い当たるふしがあり過ぎてはっきりわからん。 大体から日本人という性質自体が『一人で頑張ることがえらい』みたいなふうだから、そこにオプションで環境が取り巻いているわたしとって甘えるとはまじで

        • ~自分なんか好きにならなくても~

          突然ですが、今わたしは好きな人とうまくいっていません。とても大切で長い間時間を共有していて、わたしのことをわたしより分かってくれているような、そんな人とでもうまくいかないのです。 わたしは昔から自分のことがきらいでした。 何でも平均ほどにできるけれど平均以上のものがなにもない自分がきらいです。面接ではいつも「人の話を聞くことが好きです」とか「相手の意見を尊重できます」とかそんなことばかりペラペラと話しています。またそんな自分もきらいです。 でもそんなわたしに『好き』と言

        『透明になりたかった私へ』 2

          ~気づいたら手に何もなかった~

          自分自身のことを説明するとしたら『お姉さんのようなポジションで、気づけば人の顔色をうかがって疲れている』という人生を歩いてきた、という感じ。 小学校では学級委員長に立候補しないくせに細かなところに気がついてこっそり意見し、クラスメイトには『お前なんもしてねーじゃん』とからかわれていた。中学校の部活では2年間学年リーダーを任命されたけれど、最後の年なぜか部長でも副部長でもなく、楽譜を印刷する係になった。 振り返ると人の中心にはいなかったけれど中心を支えるように、いつもなにか

          ~気づいたら手に何もなかった~