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【「超」入門 失敗の本質】を読んで

本書は名著【失敗の本質】を噛み砕いて要点をまとめた良書である。【失敗の本質】は、時を経て読み継がれている名著である。しかし、具体例が詳細に記載されているが故に、要点を掴めずに挫折してしまった人も多いと聞く。私も何を隠そう、失敗の本質を読んで中途挫折した一人だ。だが、「失敗の本質」から学ぶことを諦めきれずにいた中、出会えたのが本書である。

本書では、【失敗の本質】をビジネスシーンに重ね合わせ、今すぐ使えることを目的に、7つの視点(1. 戦略性、2. 思考法、3. イノベーション、4. 型の伝承、5. 組織運営、6. リーダーシップ、7. メンタリィティ)で、23のエッセンスが抽出されている。忙しいビジネスパーソンにとって効率的に学びが得られ、有り難いことこの上ない。特に、このVUCAの時代と呼ばれる現代で、戦略立案や組織運営に新たな気づきを得たい方には、是非読んでもらいたい一冊だ。

ここからは、本書 2項で取り上げられている 思考法について深掘りしていきたい。なぜなら、今まさに社会は転換期にあり、国家や企業には、新たな戦略や指標を定める思考法が重要になっているはずだ。とりわけ、気候変動対策に取り組むことが世界的なコンセンサスとなり、既に国家の経済活動や企業の経営指針にも大きな変化をもたらしている。この機に失敗の本質を振り返り、同じ過ちを繰り返さない為にも、今一度、思考法に関する教訓を示したい。


本書では、残念ながら大東亜戦争において日本人が指標※を見直すことが不得意な気質であったことが示されている。一方で、一つの指標をクリアするための改善や練磨は得意。

※本書では「戦略性は追いかける指標のこと」であり、指標を見直すことは柔軟に戦略を見直すことになる。

しかし、第一次世界大戦までは、軍組織の中においても柔軟な戦略の見直しがあったことも述べられており、それまでは、武士道の練磨と併せ「兵法」が教えられていたという。そこで、孫子の兵法に「柔軟に戦略を見直す」に通ずる教えがあるか否かあたってみた。

(私の解釈では)やはり、あった。

兵を形するの極は、無形に至る。無形なれば、則ち深間も窺う能わず、智者も謀る能わず。

孫子の兵法 虚実篇

現代語訳は、ネットで検索すると出でくるのでそちらを参照願いたい。
要するに、戦略において、決まった型で臨むのではなく、相手に応じた柔軟性、臨機応変さをもつことが、(軍隊)組織の究極だと説いている。まさに、失敗の本質で語られていた「柔軟に戦略を見直す」ことの価値を説いている。

本書では、なぜ、第一次世界大戦まで活用されていた兵法の思想が、大東亜戦争時の軍組織に根付いていなかったのかについて言及はない。翻って、現代では、孫子の兵法の思想はビジネスにも応用が利くことから読み継がれているが、多くの気づき、学びが得られる古典として今一度再読の必要ありと感じた次第だ。

「超」入門 失敗の本質から始まり、孫子の兵法への展開は想定外だったが、現代史と中国古典の知が繋がるエキサイティングな読書体験であった。

■「超」入門 失敗の本質


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