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ふと自分が発した言葉の現実化力におののいた話


私は現在セミナー講師をしながら医療事務として働いている。医療事務歴は20年以上。一言に医療事務といえど、業務内容は様々だ。


病院に行くとまず受付がある。受付も医療事務の業務の一つ。帰る前には会計窓口。そしてカルテの入力。


私は他にもクラーク(診療事務)、地域医療連携室、調剤補助などもやってきた。この中で一番医療事務らしい仕事と言えば、カルテ入力とレセプト業務だ。

わたしはこのレセプト業務が大好きだ。カルテを読み解きながら、最大値の入力をしていく。医療行為の計算は「これは◯円」と決まっているようで、そうでもないところもあり、いかに正確に高い点数を算定していくのかがキモである。こう書くと「金の亡者か!」と思われるかもしれないが、医師をはじめ医療専門職の医療行為を正しく最大限に点数に置き換える、これが医療事務に求められることだ。(もちろんそれだけではないが)日々のカルテ入力がレセプト業務に直結している。


私は去年の今頃も、医療事務をしていた。しかし私が担当していたのは、受付と会計のみ。それでも2年ぶりの医療現場はうれしく感じた。だがだんだんと欲が出てきた。受付会計だけだと物足りないのだ。


こんな偉そうに書いているか、当時の私がそんなことを言えるほどの業務習熟はしていない。だけど受付の後ろから聞こえる言葉が気になって仕方がない。
「この算定であってる?
「これ、この病名でいける?」
そんな言葉を聞くたびに、受付を放っておいて駆けつけて、一緒にあーだこーだ言いながら一緒にカルテ入力やりたい!そんなふうに思ってた。


そんな1年前の私はこんなことを書いていた。

SNSに1年前の投稿が上がってきた。
そうだ。
久しぶりに医療現場に復帰して、受付と会計だけの仕事がなんだか味気なくて。カルテ入力をしている人たちの会話に入りたいけど入れない。なんなら「その解釈はちがーう!」とツッコミを入れたくなったり。
そんな毎日の中、ふとつぶやいた言葉だ。


「レセプトやりたいなーと。レセプトだけの仕事ないかなー」
こうつぶやいたのは覚えていたけど、いつかは忘れてしまっていた。そうかちょうど1年前だったのか。


こんなことを書いた私は4ヶ月前に転職をして、今は毎日カルテ入力をしている。転職理由はレセプトがやりたいからではなく、勤務日数と時間を増やすためだったが、ちゃんとレセプトをやる方向へ向かっている。
なかなか私やるやん!と単純に思っていた。


しかし、よくよく見て考えてみると…。
私はふと自分の発した言葉の現実化力におののいた。


医療事務の仕事を始める時、受付に配属されることがほとんどだ。たとえ小さな医院でも、受付の仕事から覚えて次に会計、次にカルテ入力を覚えていくことが多い。しかし、今回私は転職をして「レセプトだけの仕事」をしている。


今勤めている職場でも、通常は受付から業務を教えるらしい。しかし私は異例中の異例で、カルテ入力から覚えることになった。カルテ入力はレセプト業務と読み替えてもいい。(厳密に言えば違うのだが、医療事務以外の方はほぼ同じと捉えてもらって差し支えない)


1年前想像していた「レセプトだけの仕事」とは違うけど、カルテ入力業務のみをしている私。
いいかえると「レセプトだけの仕事」だ。
現実化力半端じゃないな、私。


1年前の私は「絶対レセプトの仕事をするんだー!」と意気込んでいたわけじゃない。ほんとうにふと「レセプトの仕事をしたいな」と思ったことを、SNSで呟いただけだ。


やりたいことを実現させたい時。
なんだか意気込んでいる時よりも、こんなふうにふと軽く言葉を発した時の方が叶う確率が高い気もする。


だからとりあえず、やりたいことは口に出せばいい。口に出せないのなら書けばいい。タイムラグはあるかもしれないけど、叶っちゃってることも出てくるに違いない。


さて明日も出勤日だ。なんだか今日よりも足取り軽く、出勤できそうな気がする。

いやまてよ。
そうだ明日の最初の仕事は、
患者さんに計算間違いのお詫びの電話をすることだった。

前言撤回。足取りは重いぞ。


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