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鏑木清方展

年始に書いた「やりたいこと100リスト」に「美術館・博物館に20回行く」と書いた。美術館や博物館には時々は行くけれど、今年は少し意識的に行ってみようと考えたからだ。

5月の連休はほとんど外出しないで過ごしたが、鏑木清方展は5月8日までなので、この機を逃すと行けないなと思い5月2日(月)に出かけた。

行って良かった。

今回の展示のメインは入口のパネルにもなっている「築地明石町」とその連作の「浜町河岸」「新富町」。

私は絵を見るとき、服飾ばかりに目がいく。「築地明石町」はとても素敵だった。写真や図録ではわかりにくいのだけれど、この黒の和装コートというのだろうかの質感がとてもリアルで美しかった。

左右の「浜町河岸」「新富町」と比べたときの赤の使い方も、胸と袖と下駄の3点に絞りシンプルで、その赤が着物の翠と黒に映えている。

着物の文様と紋もリアルで丁寧で綺麗だった。さらに右下の朝顔と左上の霧の中の船も彼女を引立、浮かび上がらせている。

鏑木清方は美人画で有名だということで、それすら知らずに出かけたのだけれど、美人というものが、抽象化されて掬い取られた美しさだということが、「築地明石町」でとてもよくわかる。着物の地模様、指輪、下駄にいたるまで細部まで描き込まれ、それがあってこその彼女のまぶたの下の薄紅色も意味をもって映える。

「明治風俗12ヶ月」も良かった。特に八月の「氷店」や九月の「二百十日」が、その場の喧噪や音、風まで感じられそうで好きだ。

上記に限らず、どの作品も本当に丁寧に人物と人物を取り巻く情景が描かれており、「ああ、この鏑木清方という人は、人と風景を本当に愛していたんだな」と感じさせてくれた

それはスケッチにも表れており、「金沢游心庵にて」の一連の日記の挿絵は、鏑木清方という人が日々の何気ない時間を大切にしていたのだということを感じさせてくれる。

鏑木清方展、もっと早く行っていれば、何回も来たかもしれない。

訪問していただきありがとうございます。これからもどうかよろしくお願い申し上げます。