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中国の大都会でダチョウを飼ってみた!

 以前の記事「食糧安全保障の危機ー食肉自給率を上げるための方策!」でダチョウの導入が究極の方策であると紹介しましたが、実は私自身が中国に在住していいた数年前に、中国の大都会である広東省中山市で実際にダチョウを飼育した経験がベースになっています。
 今回の記事ではその貴重な体験を紹介します。
 なお、このような実験が大都会でできるなんて中国国家のふところの深さには改めて感心します。何かと規制だらけの日本では絶対にできません。

ダチョウの一般的な知識

ダチョウは現在生存する鳥類の中では最も古く、数千年前に現れたと言われています。
その特徴は、飛べないし鳴きません。寿命は約60年で、走る速度は60km、目は超遠視で40m先の蟻が見えますが近くの物はほとんど見えず、キラキラと光るものがあれば突いてしまう習性があります。私も餌を与えるときに頻繁に突かれました。
 繁殖性は年に約50個の卵を産み、その内半分は孵化しますので家畜として飼う場合は大きな初期投資が必要なく事業として導入するにはリスクの少ない家畜です。
 食肉用としての事業化を考える場合、ダチョウの最大の特長は、与える飼料(重量)に対する増体重の割合、すなわち「飼料効率」が肉牛の約10倍で、今後ますます飼料の価格が高騰することを考えれば非常に魅力があります。ちなみにダチョウは草食動物で肉牛と同じものを食べて育ちます。
 もう一つの大きな特長は、誕生後1年から1年半でほぼ成長しきってしまい回転の速い屠畜が可能です。重量にして約120kg程度です。肉牛が屠畜まで2年半程度であることを考えるとリスクの少ない健全経営が可能です。
 日本ではダチョウの肉はほとんど口にすることは有りませんが、中国の地方に行くと総合市場でよく見かけます。(写真1)
 写真2はダチョウの肉の値段表で、あらゆる部位を売っています。通常の肉の部位で100g,100円程度です。
 写真3はダチョウの卵で約1.5kg程度あり、1個1000円程度で売っています。鶏の卵よりもあっさりしています。
 写真4は全てがダチョウの料理で、いろいろな部位を調理したものです。通常の肉の部位は牛肉に似ていますが、あっさりしています。全ての部位の味を楽しめます。
 ダチョウは皮や羽毛も利用され捨てる部分がありません。しかも非常に高価なものです。

写真1.ダチョウの販売風景
写真2.ダチョウの肉の部位別500g単価(1元=20円)
写真3.ダチョウの卵
写真4.ダチョウの各部位を使った料理

ダチョウの放牧風景と飼料配合

 私は中国で牛を飼った経験はありましたが、ダチョウは初めてでした。
 何度もシミュレーションした結果、生後10ヶ月のオス1羽とメス2羽を購入し順次繁殖させる計画で始めました。また、いきなり中国の田舎で飼うこともできないので、前述したように大都会で空き地を見つけて始めました
 動画1、動画2、写真5、写真6が放牧の状況です。
 動画2は珍しい情景ですがオスのダチョウの求愛ダンスです。
 まだ子どものダチョウで半年後には繁殖が可能になる時期の写真です。
 写真7は私が考えた飼料配合で、写真8のように小さなバケツ1杯もあれば十分です。こんな少量で順調に成長してくれます。
 飼料の量は1日2kg程度で、牛の約10分の1です
 したがって、糞の量も片手で持てる程度で、牛のような糞尿処理は必要ありません。すぐに乾いて土になってしまいます。この効率の良さはさすが数千年もの長きにわたり種が生き延びてきた動物だなあと感心させられます。もっとも、水をよく飲むので排尿はバケツをひっくり返したように激しいです。
 ダチョウを数か月間飼いましたが、不思議なことにダチョウが座って休んだり眠ったりしているのを見たことがありません。また、毎日餌をやっているのに全く覚えてくれません。どこかの資料で、脳が極めて小さいと書いてありましたが本当のようです。

 実はこの試みは2020年のことでして、コロナ禍が始まった年です。
 中国のゼロコロナ政策の影響も少しあり、残念ながら私自身の判断で試行を途中で断念しました。
 しかし、わずか数ヶ月でしたが、ダチョウが種として、なぜ数千年も生きながらえてきたのかを知ったことは、私にとっては何物にも代えがたい貴重な体験であったと考えています。

 最後に一言! 日本人のみならず人類が食肉に困ったときの救世主はダチョウ一択です!

写真5.ダチョウのオス
写真6.ダチョウのメス
写真7.飼料配合表
写真8.飼料の量(赤がメス2羽分、青がオス1羽分、この量を1日2回)


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