チャッターアイランド vol.3

『チャッターアイランド』はDJ/プロデューサーのokadadaとDJ/ライターのshakkeがしゃべったことを記録する、という趣旨のテキスト/音声コンテンツです。毎月1回、月末の配信を予定してます。


『フォレスト・ガンプ』のバス停


okadada ありました? 気になるニュースとか。
shakke 気になるニュース? ないなぁ……。でもニュースっていうか、話した
いなって思ったんだけど。
okadada なんすか?
shakke オカダさんとこないだ収録とか関係なく家に行ってダベったときあったじゃないっすか。そのときも夜通しこんな感じでしゃべってたんですけど。あのときしゃべった話で、オカダさんが天井見上げながらひとりでブツブツしゃべってるって言ってたのがけっこう不思議で。そのあとも反芻してたんだけど。すごいなぁと思って。
okadada あぁ。それはけっこう昔からある癖なんですけど、読んだ本とか考えたことの概念がひとに説明できるぞってなったら、ひとりで寝っ転がりながら説明してる感じでしゃべるっていうのがあって。
shakke フフフフフ……。
okadada 一ヶ月くらい前に夜の1時くらいに最近バーっと読んだ本の感想……クラブの話、音楽の話、いろんな政治の話とかがまとまっていって、ひとりでしゃべりだしたら気付けば朝の5時だったという。
shakke ハハハハハ! すごいよな、やっぱ!
okadada ま、ずっとしゃべってるわけではないですけど。トイレ行ったり水飲んだりとかはしたけど……4時間くらいはしゃべってましたね。
shakke ハハハ! もうひとりでラジオできるじゃん!
okadada でもそれはいつ起きるかわかんないんですよ。
shakke あ、それは“いま全部つながった!”みたいな瞬間にできるんだ?
okadada そうそう。っていうか、1回外に出さないと逃げていくじゃないですか。
shakke でもそれがすげえなぁと思って。自分もすぐ物事とか忘れちゃうし、記憶をひとにしゃべるときにどう留めておけばいいかって思うけど、その発想はなかったから。
okadada ほんとはメモしとけって話なんですけど。
shakke でもメモよりそっちのほうが実地じゃない?
okadada 自分はしゃべりながら考えるほうが気持ちいいんで。その結果として、気付いたらそんな時間までやっててビックリしましたよ。“えっ、ひとりで?朝まで?”みたいな。
shakke チャッターアイランドにオカダともうひとりいる意味よ! ひとりで4時間しゃべって編集せい! って話よ。

okadada いやいや、それは違いますよ。あと2回目の書き起こし、よかったっすね。シャケちゃんのほうの話が主軸になってるのがよかったですね。
shakke あぁ、1回目はオカダさんの話が多かったもんね。まぁでもオカダさんのその話はある意味でライフハックだと思いますよ。自分のなかでしゃべるのが下手とか、説明するの下手って思ってるひとは、ひとりでもブツブツ言ってたら意外とできるようになんじゃないかなぁっていう。オカダダみたいにしゃべりたいひとはぜひ、って感じだよね。
okadada こんなこと言ってもしょうがないっすけど、自分がそういうの上手いとは思ってないですけどね。
shakke 上手いっていうか、単純に記憶力はいいなぁと思うけどね。それもそういうのに起因してるのかなぁと思って。
okadada っていうか、楽しいっていうのはありますけどね。
shakke ひとりでしゃべってても?
okadada うん。あとなんか前に宇多丸さんも言ってたと思うんですけど、音楽とか映画とかマンガのストーリーものあるじゃないですか。フィクションものの話をひとに詳細に説明するときに、そのときの感情が再生されるっていうのがあるんですよ。
shakke ふーん……。
okadada ないっすか? 感動した映画の話をしてるときは感動しますからね。
shakke うーん、自分は回路が別かもなぁ。
okadada 宇多丸さんも昔『ブラスト公論』で言ってましたよ。話してる途中で泣きそうになっちゃうから止めるっていう。
shakke それはある意味、感受性が強いってことなんじゃないですか?
okadada あの映画のここでこう思ったんだよねって話をしてるとき、ほぼ(映画を観てるときと)おなじ感情になってますからね。
shakke それは本来の意味での脳内再生ですねぇ。
okadada かといって脳内で絵が見えてるわけじゃないっすからね。
shakke 逆に言うと、観てるときに自分がしゃべってることを想像しながら観てるって可能性もあるね。だとしたら、マジのおしゃべりモンスターよ。しゃべることが前提になってるんじゃないですか?
okadada そんなことはない、そんなことはない。しゃべっててはじめて思考になってるんですよ。
shakke あぁ、なるほどね。わかるわかる。
okadada 取り出せない、認識できないものなんで。だからしゃべるのが好きなだけで。だから音楽作ったり、DJしたりもしててっていう。
shakke ひとつの思考法のやり方として有効なのではと思いますね。
okadada こういうひとってあんまりいないんですかね。好きな音楽の理由とかまで話してたら、聴いてるときとおなじ感覚が再生されるっていう。けっこうあるんですけどね。思い出しただけでそうなるときもありますけどね。

shakke うーん、それが強烈な体験とかだったりしたらもしかしたらあるかもしれないけどね。
okadada それなんですよね。音楽とかだと、場合によっては聴かなくても、聴いたときのことを思い出したら鳥肌立ったりもしたんですよ。昔は特に。
shakke たしかに若いときとかはあったかもねぇ。
okadada 簡易的に気持ちよくなる、みたいな。脳内であの感覚を再生、っていうか。
shakke 鳥肌が立つほどの劇的なものではないけど、自分は原稿を書きながら、話を聞いて“おおっ”って思ったところを書いてるとエンジンがかかるっていうことはあるかもしれないなぁ。それがおなじ話かどうかはわからないけど、あるかもね。
okadada “感覚の再生”みたいなテーマはけっこう好きですね。それこそクオリア性じゃないですか。感覚識、っていうんですかね。なにかを触ったときに“ザラザラしてるよね”って自分らは言葉として言い合ってるけど、実際にザラザラしてる感覚は伝わってるわけじゃない、っていうのはあるじゃないですか。結局それがいちばんいい、みたいな。それで言うと、友達の女の子としゃべったときに“泣くのって気持ちいい”って話になって。ポルノ的な快楽があるよねっていう。それで“わたし、めっちゃ家族と仲がいいんですよ”って相手の子が言うんです。で、たまに夜、寝る前に泣きたいなって思ったときに家族が死ぬことを想像したら涙がボロボロ出てくるんですって。それでスッキリするらしくって。それはすごいなと。自分はそこまでポンって感覚が出てくるわけじゃないんで。
shakke それは極めてマスタベーションに近い感覚ですね。
okadada そうそう。おんなじ話っすよね。家族がいなくなっちゃったことをふと思って涙が出てきて、それでスッキリして寝れる、みたいな。自分が架空のひととしゃべるのとかも、そういうことなのかもしれないなって思わなくはないですね。
shakke でもオカダさんが天井とか壁に向かってひとりでしゃべってるのは
……
okadada 壁に向かっては言い過ぎ!
shakke フフフ……。天井に向かって話したりするっていうのは、それは第三
者っていうか相手がいる想定でしゃべってるんだ?
okadada それはね、いないんです。
shakke えぇ……こわっ……。
okadada 特定のだれかの顔が浮かんで、ってこと? まったくないですね。
shakke もしくはイマジナリーフレンド的ななにかとか。
okadada まったくないですね。そう考えると、たまにこわなるんですよね。自分が“愛失い男”とか言われるのもしょうがないかなっていうか。『フォレスト・ガンプ』みたいな感じですよ。しゃべってて隣にいるひとが変わってても気付いてないんじゃないかっていう。

shakke ハハハハハハハハ!
okadada ハハハハ! バス停で生い立ちの話をしてたら、隣の聞いてるひとが変わってくじゃないですか。でも気にせずしゃべるっていう。
shakke こわぁ!
okadada いやいや、もちろん自分はそんなことないですよ? でも、こういう風にしゃべってると、たしかにそういうとこあるかもしれない……みたいな。
shakke オカダさんはたしかにそうかも! 話す相手が変わろうとも論法とかしゃべり方は変わらんような気がするね。
okadada あぁ、もうおんなじ話してますね。全然シャケちゃんが関係ない若い女の子とかにもほぼおんなじ話をしてますよ。
shakke フフフ……。逆に言うと、それだけオカダさんがコミュニケーション
のなかで主導権を握ってるってことなんじゃないかなと思って。
okadada どうなんかなぁ。というか、意志を疎通させる方法ってほかにあんまわかんないんすよね。思ったことを言って、相手の思ったことを聞いて、それを細かくして理解を深めるってことしか知らないっていうのはありますねぇ。
shakke もっとぬるいコミュニケーションの方法もあるでしょう。
okadada もちろん。それはありますよ。ただ、あくまでそれはふたりでメシ食ってるとか、電話してるとかそういう前提ですよ。
shakke でも1時間とか2時間とか表面すくうだけのコミュニケーションでも楽しいってひとはいるやん。
okadada そういう話をしてるときあんのかなぁ? それこそ覚えてないかもしれない。


多様性ソード


okadada もうね、“オカダさん、普通じゃないですよ”って言われたところでなにも思わないですからね。
shakke これも多様性だっつって。多様性棒で。
okadada 多様性棒でみんなをぶん殴っていく所存なんですよ。
shakke こわっ!
okadada 多様性ソードで……
shakke ぶった斬る。“多様性ソーーーードッ!”でしょ。
okadada 多様性ベルトで変身して、多様性ブレスレットも使って。
shakke 2期はネオ多様性マンとして……
okadada ただ多様性マンは敵がいないですからね。フフフ……。
shakke フフフ。でもぶん殴るほうの多様性は認めないのかよっていう。
okadada 普通を大事にする人間を敵にしてる時点で、それは多様性じゃないっすから。だから多様性マンには悪おらず。
shakke 日常って感じの。
okadada ヤバぁ。ヤバい作品っすね、それ。多様性を尊重した結果、敵がいなくなるっていう。

shakke ハハハ! ドラマツルギーは一切排除っていう。
okadada そう。そうなんすよ。これはおもろい話っすね。多様性を重視していくとドラマツルギーが生成されないっていうのはめっちゃあると思う。
shakke めちゃ平坦になるっていうね。
okadada そうですよ。マジでそう思ってますから。
shakke でもやっぱそれが求められてるんじゃないですか?
okadada あぁ……“やさしい世界”的な? でも実際そうじゃないっすか。どっちも求められてるっていうか。矛盾してるじゃないっすか。自分も多様性がいいとは言いながら、やっぱりゲームで勝ちたかったりするし。スポーツの勝ち負けとか観てても(その魅力が)わからないわけじゃないっすから。そこに自分の矛盾があるなとも思ってるんで。
shakke それも愛でるっていうね。
okadada というかあたりまえなんじゃないですか。人間、矛盾してないひとなんていないんで。
shakke そうですね。
okadada 自分のここが矛盾してるんだなってことさえ思えてれば、それ以上は無理じゃね? みたいな。
shakke たしかに。


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