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予告先発 佐々木朗希

いつもありがとうございます。おかだです。
今回はいつもとは少し違ってエッセイ風に。
離脱から復帰までの心境を、覚えている限り書き連ねてみました。よろしければどうぞ。

 忘れもしない。7月25日。佐々木朗希、登録抹消の通知。前日のソフトバンク・オスナからの夢みたいな角中サヨナラ弾の余韻が未だに残ってて、抹消の記事を読んで顔面は蒼白になりながらも、頭の中では角中の応援歌がエンドレスリピートされてた。♪ララララ……角中…………

 ついでに抹消も夢ならよかったのにね。


 7月24日、ソフトバンク戦。

 この日は7月19日オールスターゲームでの先発登板から中4日。チームの先発不足と変則的な月曜試合のせいもあったのか、キャリア初の中4日。前回は1イニングの18球とはいえ、先発登板として調整をするのであれば球数が少なければOKというものではないと思うけど…という不安があったのは記憶に残っている。とにかく、イレギュラーな登板間隔ではあった。

 その分たくさん佐々木朗希の試合が観られるなら、それもいいかと楽観的に考えてたのだけど。

 ZOZOマリン、ナイトゲーム。苦手な牧原にいきなりヒットを浴びた。後続の強打者を三振に斬ってとったものの、中村晃にタイムリーをくらう。結局はその1失点のみで6回を投げきったものの、異変は確かにあった。

7月24日、最後の一球で栗原を打ち取る

 最後に投げたストレートは栗原を左邪飛に打ち取ったものの、計測されたのは150キロ。この数字が明らかにおかしいと言い切れる先発投手は佐々木朗希くらいのものだろうけど、確かにおかしかった。

 150キロなんて、時々フォークでさえ出す球速。ZOZOマリンではもう160キロの表示に観客がわざわざ沸き立つこともなくて、当たり前になっている。今シーズンのストレート球速最頻値は161キロ。その男が、150キロ、である。

今シーズン最速の165キロを記録した瞬間
筆者も現地で観戦

 嫌な予感は確かにあったのだけど、振り絞るように投げたその姿を見て「絶対に負かさないでくれ」と、打線にハッパをかけてみたり、少し諦めて溜息をついたり、そんなことに集中して気を逸らしてた。

 大丈夫、きっと大丈夫。このまま抜きん出た成績をキープして、タイトルを獲る。大丈夫。

 幸い角中の痛快なホームランで負けは消えた。降板後のベンチにも、サヨナラの歓喜の輪にも背番号17はなかったけど……最悪の事態は想像したくなくて、サヨナラの夜に酔った。角中さんに感謝する本人のコメントもあったし、きっと大事をとってベンチに居なかっただけだ……って、そんな訳ないんだけど。

 そして冒頭に戻る。登板の翌日、左脇腹の肉離れで登録抹消。離脱。7月末での全治約2か月というのは、今季絶望を意味する。見出しにもハッキリと「今季絶望」。

 2023年、WBCを経験し世界一に貢献し、日本に戻って迎えた今シーズン。佐々木朗希の掲げた目標は「冠」、つまりタイトル獲得。
 中10日以上を基本として登板し、プロ野球への挨拶回りのようだった2021年。
 中6日を主体にチームの中心でローテを回し、マメでの離脱期間は長かったものの、完全試合・完投をマークし成長を見せた2022年。
 今年は規定投球回へ満を持して挑む、そういうシーズンだったのだ。

 抜きん出た奪三振数、規定投球回に到達するたび一番上に名前が現れていた防御率、首位の後ろをぴっちりとマークしていた勝利数。
 「今季絶望」の一言でぜんぶ吹き飛んだ。

 もし戻ってこられたとしても、奪三振数を追いつくのは難しい。規定投球回に及ばないので奪三振率の日本記録も幻になった。
 千賀滉大の2019年奪三振率(日本記録)が11.33に対し、離脱までの佐々木朗希の奪三振率は13.76だった。このまま投げれば、大幅に更新した日本記録を打ち立てるだろうとワクワクしてたんだけど。

 奪三振数のランキングには離脱後3週間も堂々と残り続けていたのがむしろ切なくて、一番上に名前があるのにもう居ないものとして他の投手のファンに扱われている……こんなに悲しいことない。

 チーム事情がもう少し違えば怪我をしなかったかもしれないとか、不毛なことも考えた。もしチーム内で後悔があるのなら、もうそれを来季以降へ生かすしかない。そう言うしかないけど、なかなか素直に割り切れるものでもない。

 佐々木朗希の離脱期間中、大谷翔平の二度目の靭帯損傷が報道された。あの大谷翔平でも、靭帯だけは鍛えられない。投球運動それ自体がヒトの活動上は異常なものであり、驚異的な軌道で、理解不能なスピードで、と年に何千回も繰り返す投手の靭帯は嘘をつけない。

 幸いまだ佐々木朗希に損傷の経験はないけれど、元気に当たり前のように記録的な数値を叩き出しているときには、ついつい忘れてしまうリスクについて、投げている姿が見られないと考えてしまう。ロマンにはリスクも付き纏うものなんだろう。

 9月に入って唐突にもたらされた復帰の報。戸惑いもある。不安もある。それなのに、もうすぐまた投げてる姿が観られると思うと嬉しくなってしまう。

 予告先発の欄に佐々木朗希の名前。それだけで期待感と心配と色んな感情がごっちゃごちゃになるけど、結局、想いはシンプル。デカくて速くて凄くて強いから、佐々木朗希が好きだ!少年みたいに無邪気に応援したい。バカみたいな規格外の夢を見せて欲しい。

 昨日の大記録も、ファンのざわめきも、不甲斐なかった野手達も、ヒーローインタビューでの言葉も諸々……切り替えていくしかない。

7月24日の登板にて、先輩のはずの安田さんへ
失策から「切り替えていけ」とジェスチャー

 がんばれ、佐々木朗希。
 ここから数試合、あなたにしか出来ない投球を。

(了)

写真提供は例のごとく木南さんです。
いつもありがとうございます。
Twitter : @genius_pg_17  / @1031pg_ (写真用)

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