サステナビリティの根幹、本質となる思考とは。地域固有の植物から、プリミティブな日本のライフスタイルを考える。

鹿児島県肝付町岸良周辺には、「辺塚(へつか)だいだい」と呼ばれる地域固有の柑橘があります。

生産量が少なく、そのほとんどが地元で消費されてしまうため、鹿児島県内でもあまり知られていません。

でもその香りは本当に本当に素晴らしい。爽やかで骨太。文章では香りをお届けできないのが残念でなりません。

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岸良の食文化・辺塚だいだい

地元の人は、焼酎に入れたり、お刺身にかけたり、揚げ物にかけたり、とにかく何にでもかけます。酸味が強いけれど、味を邪魔することは決してないです。これが、鹿児島の甘〜い醤油と最高に合う。甘いさつま揚げとも合う。
岸良には、ウミガメが産卵に来るくらい綺麗な海岸があって、その磯でとれる海藻をちょこっと摘んでバンのお味噌汁に入れりします。採れたてを、晩に食べる贅沢。外海でとれる天然の海産物、例えば岩牡蠣やサザエや伊勢エビや石鯛、山でとれるイノシシや山菜、これらの食材に辺塚だいだいを絞ると、それが岸良の味になるのです。まさに食文化の一部と言えます。

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辺塚だいだいのすごさ

辺塚だいだいの何がすごいか。抗酸化作用と抗菌作用があるカテキン類が非常に多く含まれていることがわかっています。ファイトアレキシンという、樹が病気になった時に自分の力で打ち勝つ力が強く、無農薬、無化学肥料ですくすく育つ。
すごさの秘訣は、1つは非常に豊かな土壌。無農薬、無化学肥料ですくすく育つ。人間がするのは、収穫しやすいように草払いをするくらいです。1つは岸良周辺は、縄文時代から続く照葉樹の森に囲まれていて、(その規模は屋久島とほぼ同じサイズ!)土壌が豊かで山水も豊かです。その豊かさを存分に吸い上げているのです。
2つ目は、ほぼ野生に近い自生だということ。人間の都合で、ここをキャベツ畑にしよう!みたいに他の土地から持ってきてすぐ収穫するのではなく、長い長い年月をかけてゆっくりと、岸良の気候風土に順応してきたのです。

その代わり、自然のリズムで実をつけますし、輸入のオレンジのようにワックスなんてつけていませんから、9月から11月頃と、果実の旬は短いです。生産量だって限られています。でも原生林を壊すことなく、広大な照葉樹の森の中にほんの少しだけ小さな農園のスペースを自然から借りているくらいの方がいいんです。

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自生する植物のチカラ

植物が人の手を借りて育つのではなく、植物自身と土地の力ですくすく育つ。その土地に合わない植物を、人間の都合で育てようとすると、農薬や肥料やビニールハウスで守らなければいけない。古くから自生している辺塚だいだいのようなその土地固有の植物は、その土地の特徴、気候風土に合わせて、自らが生き残るためにゆっくりと時間をかけて土地のリズムに合わせてきたため、人の手なんて必要ないのです。

人が手を入れて様々なものを与えた環境で植物を育て、収穫するというのは、人間を中心に据えた思考で、他方で、自身の力で自ら育つ植物から、その恩恵として人が果実や葉を収穫させてもらう、というのは自然に対してもう少し謙虚な姿勢なように見えます。

プリミティブな思考とサステナビリティ

それは、大量生産・大量消費の工業化・近代化が進む前の、もっと原始的な日本の考え方に近いのかなと思います。日本は古来から、海の恵みに感謝するために海の神様を拝み、山の恵みに感謝するために山の神様に拝み、川の恵みに感謝するために川の神様に拝んできました。時に自然災害が起きて人間は大変な思いをして、また神様に祈る。あくまで大いなる自然には敵わないこと、人はその恩恵をほんの少し分けてもらう存在だということを知っていました。

このある種、プリミティブな、自然に敬意を抱くスタイルは、昨今トレンドとなったサステナビリティの本質とマッチするな、と思います。

サステナビリティについて、プラスチックの代替品の開発だとか、ファストファッションはサステナブルじゃない、とか、方法論のような先端ばかりに注目がいきがちですが、そうではなくて根本的な思考をそれぞれが認識した上で議論が起きるといいなと思います。

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