クリーンビューティの次はワイルドビューティ?

たまには、世界の美容業界のトレンドについて書いてみようと思います。

もともと美容業界では圧倒的マイノリティだった、天然由来成分をうたうナチュラルビューティ。SDGsの浸透とともに2020年は物理的にも倫理的にも“クリーン”な製品を、というのが美容業界での大きなトレンドとなりました。
大量生産大量消費社会からシフトしようとする大きな流れの中で、それでも依然として消費することをやめられない私たちは、何を選択して消費するかが問われる時代になったと言えます。

FINANCIAL TIMES WEEK END別冊、HOW TO SPEND ITの2020年10月24日号のBEAUTY特集では、ネクスト・クリーンビューティとして、「野生の植物の力」が着目されています。

ちょっと話は逸れますが、このHOW TO SPENDはラグジュアリーなライフスタイルを様々な角度から、そのタイトル通り何にお金を使うべきかを提案する冊子です。ものすごく高価なファッションアイテムやホテルでのバケーション、億ションの紹介など、めくるめく華やかでエレガントな現実離れした世界が美しい紙面に広がっていて、現実逃避(?)にこれを読むのが密かな週末の息抜きだったりします。

物質的な豊かさが以前ほど重視されなくなり、かつモノを所有することからシェアすることが当たり前となる世の中で、ラグジュアリーグッズのスポンサーが付くこの冊子のあり方はどう変化していくのだろうかと注目していました。(下手したらコロナ禍で冊子なくなるんじゃないかとも思っていた。)

この号のタイトルは、いつものHOW TO SPEND ITに、”WISELY”(賢く)という文字が加わっていました。”HOW TO SPEND IT WISELY”, IDEA for the Conscious consumer” (意識の高い消費者への賢い消費の提案)ときて、なるほど。世界中のアンティークショップの紹介や、リペアの価値、ヴィンテージファッションの着こなしとアイデアなど、サスティナブルとラグジュアリーが共存できる可能性と、「ラグジュアリー」の概念が大きくシフトしようとしている様子をはっきり見せてくれた気がします。

さて、ネクスト・クリーンビューティーの話に戻りますが、この「野生」の何がすごいのか。

記事によると、

“Research by Urban Ecosystems shows that wild plants are more resilient because they ‘ve had to adapt to their conditions, unlike farmed ingredients, which makes them more nutrient-dense and therefore more potent and effective.”
「アーバンエコシステムズ(都市生活と社会経済や生態系構造について科学的調査を実施する米国出版の国際的ジャーナル)によると、野生植物は生息する環境に適応しなければいけないため、栽培される植物よりも回復力があり、栄養価や効果効能が高い。

EUDITION OILの主原料になる辺塚だいだいは畑で栽培されていますので野生とは異なりますが、その環境は限りなく野性的です。
畑は照葉樹の原生林に囲まれ、山水によって豊富な栄養が畑に流れ込み土壌が豊かです。
固有種であり、環境に長い期間かけて適応してきたので農薬や化学肥料など人の手が入らなくてもすくすく育ち、病気にかかっても自分で打ち勝つためにフラボノイドなどファイトアレキシン(植物が生物ストレスおよび非生物ストレスに応答して新規に合成する、抗菌性の二次代謝産物)が豊富です。
除草剤も使いませんから、足元は草がぼうぼうで自然に近い環境です。(人間が木に近づける程度には草刈りしますが。)

植物療法士・森田敦子さん曰く、雑草を雑草と思っているのは人間の都合で、植物たちには雑草かそうでないかの区別はなく、そこにある植物同士で共生しているので、とても大切なことだそうです。

そういえば、福島県で有機米を栽培している渡部よしのさんのところに取材に行った時に、「雑草があるくらいの方が手間かかるけれどお米が美味しい」とおっしゃっていたなということを思い出しました。

原料となる野生の植物はシーズンにしか採取できないため、オーガニック栽培と異なり、ロジスティクスは非常に複雑になります。収穫できる時期は一年に数週間しかないかもしれません。

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アマゾンの熱帯雨林のジャングルの中で、ローカルの人たちによって採集される植物原料を使うrahuaは、必要な分だけを手摘みしているそうです。

経済栽培作物と言われるスーパーに並ぶ野菜ばかり目にしていると忘れてしまいがちですが、近代農業が始まる前は野草を採取して食べたり薬にしたりしてきたのですよね。
そして、地球上の植物30万種くらいのうち10%くらいしか利用されていないそうです。

昔使われていたものを思い出すように再発見するのも、まだ見ぬ野草を発見するのもなんだか壮大な旅のようでロマンがあるなと思います。

ネクストキーワードとして経済栽培種以外の野生種が注目されるのは興味深いことですが、注目が集まることによって人間が使う量に自然が追いつけなくなる可能性も十分にあり得ると思うので、どうかそういったことが起こらないといいなと思います。野生種を活用するのであれば、そういった乱獲が起こらない仕組みづくりから創造できるといいですよね。

自然のリズムで生まれる自然の恵みの力を、本当に必要な分だけいただく。それを続けるためには、その生育環境を壊さないように、スケールを広げることを良しとして欲張って摂り過ぎるようなことがないように、人間はとても謙虚でいないといけないですね。

謙虚な気持ちで自然の恵みを享受することはとても豊かな気がします。


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