見出し画像

ビール造りを五感で学ぶ(Day1, Day2)


はじめに

20歳の誕生日を超えて、初めてビールのさわやかな香りと大人の苦みを知った。当時の私はこの香りが、苦みがどのようにして生まれてくるのか全くの無知であった。
「なんか美味しい」
これがインターンシップ前までの私のビールへの感想である。

就職活動を始めて、私は「仕事」というものの全体像を理解できていないことを知った。製造業といっても単にモノを作るだけが仕事ではなく原料調達、加工、流通、広報…たくさんの仕事が関わっているという。
「ではその仕事は具体的にどのようにつながっているのか?」
インターンシップ前の私はうまく想像ができなかった。

このインターンシップに参加したきっかけは、募集資料の「キリンビールのすべてを体験できる」「原料産地~製造~広報~営業までのすべてを5感で感じる」という言葉だった。ビールにも仕事にも無知な私にはぴったりのインターンだ。本記事では、このインターン体験を通して、以前までの私のビールや仕事に対する考え方がどのように変化していったかをお伝えできればと思う。

今回は全5回のインターンシップのうちDay1とDay2の内容についてまとめる。たった二日間の経験にも関わらず内容が盛りだくさんで、とても長い記事になってしまった。


Day1 熱い講義・工場見学

インターンシップ一日目は、仙台工場やビール製造についての概論の講義と、仙台工場の特別工場見学を行っていただいた。


講義:ビールを取り巻く環境と仙台工場の取り組み

講義では最初にビールを取り巻く環境について学んだ。
以前は終業後の飲み会文化・乾杯にはビールという文化があったが減少、現在は若い女性をはじめビールを飲む機会が減っているというお話を聞いた。さらに日本のビールは世界のビール全体と比較すると、取り扱っているビールの種類が少なく、多様性に悔しい部分があるということを学んだ。

何となく「ビールを飲む人が減っているらしい」という漠然とした知識から、実際にお話を聞いて数字を見ると、こんなにも環境の変化が起こっているのかということに衝撃を受けた。

では、このような背景のもとでビールという飲み物はどうあるべきか、ビール会社はどうあるべきか。仙台工場にできることは何か。

仙台工場の強みはその歴史による地域とのつながりの蓄積と、ホップ生産地に最も近い工場という立地である。この長所があるからこそ、仙台工場は東北に愛されたCSV先進工場になることができるのだ。キリンビールを通じてビール市場を活性化し、さらに地域に根差してビール原材料生産地の活性化をも仙台工場は担っていく。

このお話を聞いた時の率直な感想は「かっこいい」だ。確かにこれは仙台工場ならではの取り組みだ。「仙台工場なら絶対に実現できる」という熱意が講師の工場長や副工場長からも伝わってきた。
またこの講義を通じて、ビール消費者であり東北に住む一員として、私もこの取り組みに貢献・応援したい気持ちになった。


講義:麦芽の試食&ホップの香り体験

講義の中ではさらにビール製造についての基本的な知識を教えていただいた。水とホップと麦芽から、酵母の力でビールができて、パッケージングを経て製品としてのビールができる。この講義の中で、私たちはビールの原料である麦芽の試食とホップの香りを体験をさせてもらった。

麦芽は通常のものとカラメル化したものの二種類。ホップは乾燥ホップ、凍結乾燥粉末、ペレットタイプの三種類を体験させていただいた。

直感的な感想をたくさんメモした。

麦芽の甘味、カラメル化された麦芽の香ばしさを堪能した。また麦芽に感じられる麦の香りは確かにビールに含まれているものだった。

ホップの香りも初めてこの体験で知った。また加工方法によって香りに大きく違いがあることにも驚いた。凍結乾燥ホップのみずみずしさ、香り高さと乾燥ホップの爽やかで少しやわらかな香り、ペレットタイプの苦みやビールに感じる深さのある香りを体感した。

ホップのみの香りを知る機会、ましてやその加工方法による違いを知る機会はとても貴重で面白い体験だと思う。東北大学の方はぜひ今後のインターンシップ開催に期待し、その時は参加していただきたく思う。


特別工場見学

今回の工場見学では、通常立ち入るところのできないほどの超至近距離でビール製造の現場を見せていただいた。

麦汁を仕込むタンクの大きさと熱気や麦の心地よい香り。
若ビールが貯蔵されているタンクの涼やかさと歴史を感じる佇まい。
これらを肌で直接感じた見学だった。

さらにパッケージング過程も見学し、目の前でビールが充填されてよく知る製品の姿になって運ばれていく様子を見た。
たくさんの缶が美しく流れていく様は壮観だった。

このように仕込みからパッケージングまで、すべての過程を流れに沿って見学したことで、座学以上に「ビールはこうして生まれるのだ」という強烈な知識を得たように感じる。
また、一つ一つの工程において「お客様ファースト」を徹底するための工夫がなされていることを知った。本当に細かく考えられているのだなと驚くとともに、ビール造りに携わる方々の熱い想いの一片を感じ取れたように思う。

また工場見学の後は昨年インターン経験者のインタビューにも参加した。今後のインターン参加の心構えとして非常に勉強になるお話であったが、これはまたインターン全体を終えてから振り返りたいと思う。


Day2 遠野の青いホップ畑・ビールを取り巻く人々

インターンシップ二日目は遠野市にてホップ畑の見学を行った。
さらに遠野で活躍されている田村さんのお話とキリンビールでマーケティングとして活躍されている重田さんのお話を伺うことができた。


ホップ畑の見学

ホップ畑である。圃場に入ると、まず背の高い一面の緑に圧倒された

こんな風景は他では見られない。収穫直前時期のホップ農場。

畑は東北のさわやかな空気で満ちており、収穫を控えたかわいらしい毬花が印象的であった。

かわいらしい毬花。これがたくさん実っていた。

生ホップを細かく見ていくと、外見は乾燥ホップに比較して形の美しさ、みずみずしさがあるように感じた。花を割ると鼻からスッと抜けるような心地よくさわやかな柑橘系の香りを感じることができた。
なるほどこれがあの凍結乾燥ホップや乾燥ホップになるのかとDay1の体験を振り返りつつ、その香りの違いを体験した。

ホップ畑の体験で面白かったのは成熟した花と未熟な花の香りの違いを比較できたことである。

未熟な花は香りが弱く、緑っぽさが強い。花の中の黄色の粉末(ルプリン)も未熟で白っぽい様子が観察された。
ホップはこのように香りをつけていくのだという過程が感じられて面白かったのと同時に、この花の香りのピークを見極めて収穫を決める農家のテクニックに尊敬の念を抱いた。
すごい。まさしく経験と知識のなせる業だ。

また、この見学は収穫の少し前の時期に行ったが、実際に収穫の様子も見てみたいと感じた。この一面の緑からかわいらしい毬花がどのように取り出されるのか。気になる。


ビールの里で活躍する田村さん

遠野のホップやビールを支える方の代表として田村さんのお話を伺った。
田村さんについては他記事でも紹介されているため、この記事では田村さんのお話を聞いた時の自身の感想に焦点を当てた。

田村さんのお話を聞いて、田村さんが活躍されている背景には3つの大きな要素があると感じた。

  • チーム作り…ビールの里を実現するために必要なホップ生産者、醸造家、販売者、行政から観光業まで様々な人を巻き込んで仕事をしていくチーム作り

  • 戦略性…地元の課題を分析し、そのために必要なものの本質をとらえ、それを実行していくための手段を的確に選ぶことのできる戦略性

  • 熱い思い…「遠野市をビールの里にしたい!」という熱い思い

おそらく、この熱い思いをもとにした明確な目標があることによってチームは一丸となれるのだろう。また、戦略においてもこの熱い思いが芯の通ったぶれのないものにしているのだろうと感じた。

私にも将来、働くうえでこのような熱い目標に出会うのだろうか。
自身の将来への期待と不安を感じた。
熱意を持って働く人の魅力を感じる講義であった。


一番搾りのマーケティングの重田さん

重田さんからはマーケティングの基礎知識と、実際に一番搾りに対してどのようなマーケティング活動を行っているかのお話を伺った。
実際に現場で働いていらっしゃるマーケティングの方にお話を聞けたのは初めてで、その難しさ面白さを知ることができた。

特に私が最も心に残っているのは、重田さんの講義後に行われた田村さんと重田さんの対談である。

遠野市のホップ生産の持続性を支える田村さんと、遠野市のホップを使った一番搾りの魅力を伝える重田さん。お二人の対話ではお互いに対する期待と尊敬が強く感じられた。

ホップとは生産者だけでなく、それをビールにする人、販売する人なくしては持続できない農作物であること。ビールとは人と人とのかかわりなくしては成立しないものだと強く感じた。

ビール造りとは単に製品を作ることではなく、原料生産者からの気持ちを醸造家につなぎ、それを世の中に発信してお客様につなげていくことだとお二人の対話を通じて体感した。
(対話の様子を取材したこちらの公式note記事もぜひ読んでいただきたい。)

ビール造りとキリンビールのCSVの考え方の理解が一気に深まった体験だった。


まとめ

このとても濃密な二日間を総括すれば「ビール造りを学べた!」という一点に尽きる。

しかしこの中には、知識としてのビールの造り方だけではなく、ビール原料を直接体感した経験や、ビール造りの現場を直接見た経験、そしてビール造りに携わる人々の姿を知った体験によって学んだ全てが含まれている。

今後はさらに仕込み式や営業の現場などを体感することでより深く「ビール造りを学ぶ」経験ができることを期待する。

それから、今回のインターンシップの目的には「KIRINを知って、KIRINのファンになってもらう」という要素もあるらしい。
二日間のインターンシップですでにかなりKIRINのファンになった。
今後さらに虜になるのを楽しみにしています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?