アルコール関連の諸問題

多くの観察研究で1日純アルコール20g程度までの飲酒量で死亡率が低いことが示されています。この量はビール500ml、日本酒、ワイン約1合(180ml)に相当する量です。

一方、厚生労働省研究班の推計では、多量飲酒者は980万人、アルコール依存症、その予備軍は294万人いるとされています。多量飲酒者、アルコール依存症者がアルコールの健康に対しての良い影響を受けることはありません。

多量飲酒者では肝臓の病気だけではなく、咽頭癌、食道がんのリスクを高めます。また、習慣飲酒は健常高齢者においての脳血管障害のリスク因子です。65歳以上の健常者を対象にした住民健診でMRI画像上の無症候性脳梗塞の頻度は約25%あり、年齢、高血圧、喫煙、男性と並び習慣飲酒がリスク因子となります。

また、生涯アルコール飲酒とMRI上の脳容積には逆相関がみられます。つまり、飲酒量が多いほど脳が委縮するという負の関係性があります。

最近では記憶をなくすほど飲酒する経験が多いほど、認知症になりやすいという報告があります。記憶をなくすほどですから、脳にダメージを与えているのは当然ですよね。

また、高齢者ではライフスタイルの変容が飲酒の意義を変質させ、飲酒そのものが目的となってしまうことがあります。一人暮らし、毎日お酒を飲む、お酒だけが楽しみという人は危険です。

かつては仕事上の付き合いなど社会や共同体といった結びつきを保ちつつ一定量に収まっていた飲酒が、環境の変化によって、飲酒の社会生活上の潤滑油あるいは身体的・精神的ストレスの調整弁としての役割が減って、飲酒の依存度の面が増大してしまいます。

アルコールには依存性と耐性があります。耐性とは、毎日アルコールを摂取していると、酔いにくくなり、同じぐらい酔う事を目的とすると、アルコールの量が増えていくことです。

依存性と耐性がある物質で、多量に摂取すると健康を害する危険性があるというのは医師からみると、とても怖いことです。毎日、お酒を飲んでいる、飲まないと眠れない、お酒を飲まない日を作ることができないという人は依存症になっていないか一度、考えてみる事をお勧めします。
岡部医院院長 岡部誠之介

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