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さよならマジェスティ

夫はバイクで仕事に行っている。そのバイクはマジェスティというらしい。
「らしい」というのは今日タイトルと同じLINEを夫から受け取り名前がわかったから。それくらい私はバイク(車も)に疎い。

約11年、夫の足となり活躍したマジェスティを本日手放したと言う。
手に入れた時点ですでにかなり走行した中古車で、中古バイク屋のおっちゃんに「数年乗れれば良い方」とまで言われていた。
おっちゃんの言う通り、マジェスティは数年に一度壊れかけた。いや、実際は壊れかけてないかもしれないけど、とにかくバイクに疎い私なので、もう見るからに壊れかけていたから「壊れかけていた」とさせていただく。
夫はバイクの調子が悪くなるとすぐにおっちゃんの元に連れて行き、微調整をしてもらい、時にはパーツを取り寄せて修理して乗っていた。おそらくこれまでの修理代を考えたら余裕でバイク一台買えるんじゃないかと思う。

仕事を終えてスマホを見ると、夫から数通のLINEが来ていた。
見ると、タイトルの一文と、11年ありがとう、とマジェスティの写真が付いていた。
元々「危ないから」と、バイク通勤には反対していた私は、特に感慨深いものはないと思っていたのだけど、古ぼけたバイクの写真を見ていると、なぜだか目頭が熱くなってしまった。
そういえば、手に入れた当初は、仕事帰りに夫の職場に寄ってから2人でバイクで帰ったりしていた。夫が私にと用意してくれたピンクベージュのヘルメットをかぶり、初めてバイクの後ろに乗る私が怖がるので、いつもよりゆっくりと走ってくれたりして。
「どこを掴んだらいいかわからないよ〜!」と言って夫の腰を掴むと「くすぐったいから腰はやめてくれ」と言われ、肩を掴むと「くすぐったいから迷いながら掴まないでくれ」と細かく注文された。

一度、隣県にある夫の実家までバイクで帰ったことがある。高速道路のスピード感と、近くを走るトラックが怖かったが、思っていた以上の爽快感。
とはいえ、やはりお尻は痛いしずっと緊張しているし、なぜか変な力が入り筋肉痛になったので帰りは夫に一人でバイクに乗ってもらい私は電車で帰宅。
何度か後ろに乗り、買い物や釣りに連れて行ってもらったものの、いつの間にか後ろに乗ることは減っていった。
そして私が妊娠すると、当然ながら後ろに乗ることはなくなり、そのまま出産育児の過程でももちろん乗らないまま今に至る。

私よりもあっさりとしている夫は、早速新しいバイクを手に入れたが、何というバイクなのか聞いていないのでまた廃車にするまで知らないままだろう。
でも、マジェスティの様な胸がキュッと寂しくなる気持ちはきっと出ない。
ささやかな思い出の積み重ねをありがとう。
さよならマジェスティ

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