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100人いたら100通りの子育て取材 №.19工藤 香苗さん

今回、取材させて頂いたのは工藤香苗さんです。香苗さんは市民パーソナリティとして、FMラジオで、日々の丁寧な暮らしについて発信する傍ら、帯広市内のお寺の本堂で昔話のお話し会を主催するなど、好きな事や得意なことを用いて活動されている女性です。
 以前、マクロビオティックの料理教室でご一緒したご縁から、現在まで様々な自然な育児についての情報を頂いて、私自身の子育てにも影響を与えてくれた香苗さんの子育てについて伺いたいと思いました。


この取材は帯広市を中心に活動するおかあさんのがっこうのプロジェクトとして、100人のお母さんに子育てについて取材させて頂く企画です。おかあさんのがっこうの活動の詳細は以下をご覧ください。



香苗さんのお子さんは現在高校一年生になります。生まれてから、小学校高学年の途中まで、一日たりとも休まずに香苗さんかご主人、または両方で絵本や日本昔話、グリム童話や児童書などを読んであげていたというお話しをお聞きしました。そこにはどんな工夫があったのか知りたくなりました。

香苗さんが絵本に出会ったのは、出産を考えるより前だったといいます。児童書を読んで、その流れで子ども図書館の著者や、石井桃子さんなども知り、絵本の世界へと広がっていったそうです。

出産を決心したことで、自分が母親になる為、自覚を持つために自分自身に読み始めたといいます。同時にお腹の子へ語り掛けることにもなりました。夫婦二人の家庭にもう一人増える事がなかなか想像つかなくて 赤ちゃんが居る生活をイメージしながら読んでいたそうです。 


「お腹の子に向かってお話を読んでいるというよりは、自分の為だった気がします。自分育てという感じです。」


一人の女性が子どもが生まれてすぐにお母さんになるのではなく、お腹の子どもが大きくなるにつれて、徐々にお母さんになっていく過程を香苗さんは大切に過ごされたのだと思いました。

息子さんへのクリスマスのプレゼントはいつも本でした。毎日欠かさずにお話を読んでもらっていたことを、お話し会の参加者の方が聞いた時に、「とても恵まれていることよ」と息子さんに伝えたことで、毎日、絵本を読んでもらっていることが、どこの家庭でも当たり前にしていることではないと息子さんが分かったのだそうです。

香苗さんのお母さんがご病気で意識のない状態になった時に、集中治療室で息子さんがためらいもなく、お祖母ちゃんに昔話を読んであげている姿を見た時、ずっと絵本を読んできたことがこの子の財産になっていると思えた瞬間でした。

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※2歳頃の息子さんが、大切にしていたお人形さんに絵本を読んであげているところ。自分にしてもらっていることを大切なお友達にもしてあげているところが微笑ましい。


香苗さんの子育てでもう一つ特徴的なことはおもちゃのお話しでした。
まだ、子どもを授かる以前にシュタイナー教育について本で知り、図書館で本を借りて沢山のシュタイナー教育の本を読んだそうです。日ごろから本物に触れていると、何が本物かが分かる、本物を味わい、知ってほしいという想いで、プラスチックのおもちゃを選ばず、木で出来たおもちゃや自然素材の物などを与えていたそうです。

「はしご車が欲しい」と子どもが言うと、香苗さんが、資源ごみのゴミ箱から空き箱を集めて工夫して作り、タンクローリーなど、色々なおもちゃを作ったそうです。 


ある時、お友達が遊びに来た時に、息子さんが資源ごみのゴミ箱から出してきた物でおもちゃを作り始めました。お母さんが色々作ってくれた過程を見てきて、すっかりおもちゃは作るものと認識している姿があったそうです。

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※息子さん自作のカメラ。


「母さんの手は魔法の手よ」といつも言いながら、子どもから何かを作ってと言われた時には不可能はないくらいに何でも作り出していたと言います。おもちゃ以外にも、絵や食べ物など、可能な限り子どもの要望に応えたそうです。

目の前で作り出されるものにワクワクしながら待っていた息子さんの心の中に創造することの喜びが確実に伝わっていました。小さな頃から、息子さんもおもちゃを創り出すこと、絵を描くことが大好きだったようで、絵を描いた沢山のスケッチブックや手作りおもちゃの写真を見せてくださいました。

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小さい頃は紙とクレヨンを渡しても自分では絵を描こうとしないので、リクエストに応えて両親がずっと絵を描いて見せていたといいます。いつまでたっても自分では描こうとしないので、知能の発達が遅れているのでは?と心配もしたそうですが、ある時、突然描き出したそうで、今まで自分で描かなかったのはただただ吸収していた時期だったのだと分かったといいます。


「知識が与えられて、身体の中に溶け込んで吸収されていく時間というものがある、親の姿を見ながら自分の中で積み上げている期間があって、ようやく知識と実践が結びつくんですよね」と、息子さんの体験を通して分かったと話してくださいました。小さい頃から絵を描くことが日常の中で自然と出来るよう、旅先へもスケッチブックと色鉛筆を持参して移動中にも描いていたそうです。


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本物を与えるということは物質だけではなく、体験も本物を与えてきたと教えてくださいました。コンサートやお芝居を沢山見せてきたと言います。時には札幌まで行って見せたそうです。初めてのピアノリサイタルの時は会場が暗くなると、息子さんが大泣きしてしまい、慌ててロビーに連れ出し、泣き止んでまた席に戻ると大泣きした苦い思い出を笑って話してくださいました。


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※大道芸を観たあと、帰って直ぐに真似てショータイム。


香苗さんが子育ての中で大切にしていたことは食だったといいます。幼稚園から小学校4年生まで手作りのお弁当を持参していました。それ以降、給食が食べたい、お代わりしたいとの希望で学校の給食に変更しました。幼稚園の時は給食の献立表を見て、見た目を同じく揃えることが大変だったそうです。

ある時、バス遠足でワイン城のレストランでランチをする行事がありました。事前にメニューをもらいすべてマクロビオティック仕様で限りなく見た目を揃えて用意したそうです。ケーキ一切れを持たせるためにワンホールのケーキを作る事も手間を惜しまずに手作りしました。が、しかし、食べる時間が足りず、残してごめんなさいと聞いてとてもがっかりしたのよと、そんな思い出を教えてくださいました。

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※上はお弁当の記録写真。下はバス遠足でレストランのメニューに沿って手作りしたお料理を幼稚園バスが到着する前に香苗さんが持参し、厨房でメニューの並べ方を見てセッティングしました。左側持参した料理、右側レストランメニュー。


息子さんが産まれてから何年も書いてきた日記があることを教えてくださいました。なんと、大学ノート11冊分。憎たらしくなるまで書いてきた(笑い)と。
ある時、息子さんが怒られて拗ねていた時にノートを見つけ、ニヤニヤしながら読んでいたそうで、残しておいて良かったと話してくれました。

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「将来、子どもが子育てをする時に、自分にしてもらったことを思い出して我が子にしてあげることがきっと出来るのではないかと思う。」と。


子どもを愛せるか不安だったから、絵本を読んで、母になる準備をしたと話してくださった香苗さん。
「自分がやって欲しいと思ったことを子どもが真似をしてくれて、たまたまそれを見ることが出来て自分はラッキーでした。私がやったことがどんな子にも合うとは限らないけど、その子に合う育児の方法を見つけれるといいですね。何よりも、日ごろの生き方や自分作りが大切だなと思います。
自分が何を大切だと感じるか、何を選択するのかは自分自身を大切にすることです。日頃の暮らしを丁寧にすることだと思います。その先に子育てが続いている気がしますね。」

最後に今年の春に息子さんの個展が3月30日から開催されると教えてくださり、案内のポストカードを頂きました。

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※工藤 秀鷹【仮面舞踏会】3/30〜4/4                 場所:ガレリアオリザ(ミントカフェ内)帯広市大通り南6丁目


「手先が器用で何でも作り出す事。絵、料理、踊りも、未就学からの継続が今に全て繋がっていると思う。更に、個展まで繋がるとは幸運です!長く続けることで初めて観えてくる風景があると思います。」

踊り(バレエ)は11年続けているそうで、何かを創り出す事は物以外にも、パファーマンスにも通じています。


香苗さんが育児で大切にしてきた事の数々。

絵本やお話しを読むこと、食、おもちゃなど沢山の手作り、息子さんの日記。

お話しを聴かせてもらいながら、また写真も一緒に見せて頂き、愛情いっぱいに育ててきた事をひしひしと感じました。

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香苗さんは息子さんに人と違ってもいい、また、自分と違う人がいても、受け入れる人になって欲しい、そんな想いを持って育ててきたといいます。

そして、息子さんを見守って、個性を大切にしていくことで、持って生まれた個性が磨かれて、時間を経て原石が自ら輝きだすように、今見えている姿の奥には沢山の可能性が秘めていることを香苗さんのお話しから感じました。

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※歌舞伎の本を見たあと、香苗さんが隈取りを描いてあげたら、直ぐに踊りだしたそう。剣は息子さんが作ったそう。


お腹の赤ちゃんにお話しを語り、そして、産まれてから小学高学年になるまでお話を読み、時には中学生の時もお話しを読んでいたといいます。今、息子さんはお話し会を通してお話しの世界に触れ続けています。

香苗さんのお話し会には子どもから大人まで参加し、お寺の静けさと共に香苗さんのお話しの語りの声が響き、静かに心に沁みてくるとても素敵な時間となっています。


香苗さんの子育てから、現在の活動に繋がる原点をお聴きでき、とても嬉しく思いました。

貴重なお話を聴かせてくださり、本当にありがとうございました。

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工藤香苗さんプロフィール

十勝管内出身 高校一年生の長男のお子さんのお母さん。
FMWingの市民パーソナリティ                  『kanaeのhumming bird』水曜隔週15時~15時30分(4月番組改編に伴い時間変更可能性有り)                          イブニングトラックス 毎週月曜日17時~19時

日本講演新聞読む会帯広主催

お寺で昔話お話し会を毎月主催                       *昔話お話し会は毎月第四木曜日19時から21時に永祥寺本堂(帯広市西3条南2丁目)にて開催されています。 

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