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山里とふれあうことは、未来とふれあうこと。/なかのじょう山里テーマパーク

群馬県中之条町にはまだ、イナゴが飛び交う田んぼがある。「イナゴンピック」当日、田んぼには町外からの参加者も含む子どもたちと大人でいっぱいになる。笛の合図とともにイナゴ取りを開始。わしわしと畔を歩けばぴょんぴょんとイナゴは飛ぶので見つけはできるのだが、つまんで取るには技術がいる。逃げられて、ブーンと飛んでいくイナゴ。制限時間内に手にもったビニール袋いっぱいにイナゴを集める猛者もいる。また別競技では、開始位置に選りすぐりのイナゴをピットインさせ、その飛距離を競う競技も行われる。昔は良く聞いた「俺たちが子どもの頃はそうして遊んだもんだ」という昔話を発する大人たちもいなくなった現代において、とても特異なイベントであるように思う。

そんなイナゴ競技や、先日行われた花桃咲き乱れる山道を歩く「桃源郷ピクニック」、ホタル観賞会、ハロウィンカボチャの栽培から始めて中をくりぬいてランタンを作るワークショップなどなど・・を例年続けているのが、中之条町在住の農家さんや有志からなる「山里テーマパーク部会」のみなさんだ。その活動記録と広報を兼ねた冊子作りを担当した。表紙・裏表紙は、部会員であり東吾妻町で「土偶カフェ」を営む田中静さんが生き生きとした虫や花や動物を描いてくれた。中で使用した写真は、長年活動に関わっている吉田いちご園の吉田朝志さんが撮影した写真をメインに使わせていただいている。

中之条町のイベントというと今まず浮かぶのは国際芸術祭「中之条ビエンナーレ」かと思うが、山里の皆さんの活動はもっと古い(発足は2004年)。僕は中之条町に帰りたてのころにその活動を知り、当時嘘なく言えば「ずいぶん昔ながらのことをしている人たちだな」と思った記憶がある。行政もバックアップをしているが、映画祭と同じくボランティアの皆さんで現在に至るまで継続してきた山里テーマパーク。今、あらためてその活動を見てみると、昔ながらなんてことは全然なくてむしろ「時代の最先端」を行っている感もある。いや、最先端は違うか・・「時代がそっちも忘れずに進んだら良いな、そうするべきだよなという未来」という感じか。

東京あたりからホタル観賞に来た子どもが、名久田地区の川原に飛ぶたくさんのホタルを見て感激した、という話を聞いたことがある。バーチャルではなく体験を優先するイベントでは、家からの距離、川のにおい、草のにおい、夜のにおい、川の音、草の手触り、夜の深さなども含めて、子どもの心の芯に大切な何かを残す。それは、センス・オブ・ワンダーかもしれないし、後世に里山を残そうという志の小さな芽かもしれない。とてもとても良い活動なので、もっと多くの人に知られてほしい。冊子は中之条町役場や、中之条町ふるさとセンターつむじなどで手に取れると思います。

山里テーマパーク
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