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ここにいる時間が、愛おしい/小屋カフェ「Serenite」のはじまり

前橋市敷島で多くの人に愛されてきた基本食&カフェ「Mam's cake」が閉店。東吾妻町の岩櫃山を越えてちょっとの場所に、店主・安田恵久さんの新たなステップとなる小屋カフェ「Serenite」がオープンする。(5/2よりプレオープン。詳細は下記インスタにて)

Serenite

縁あって「Serenite」のフライヤーを担当した。ビーガン、マクロビティック、というイメージと共に「Mam's cake」の評判は聞いていたが、フライヤー制作の話をいただいた時はまだ、店に伺ったこともなかった。ので、お引き受けする前に店を訪ねた。落ち着いた店内には、安田さんが信頼する食料品や衣料が並べられ、多分常連さんなのであろう、いたお客さんが食事が来るまでの時間も落ち着いて穏やかに楽しんでいる様子が印象的だった。僕が食べたものはごくシンプルなものであったが、一口食べた時に「やらせてください」と返事をすることを決めた。

食の提供は、食材選びから下準備、料理から盛り付け提供に至るまで、こだわり抜こうを思えば果てがないものだと思う。「Mam's cake」において丁寧な食の提供を切り盛りしていた安田さんは「Serenite」をはじめる理由として「現在のようなたくさんの料理を提供するスタイルではなく、昔から、珈琲を出す小さな店をやってみたかったの」と言った。その思いを胸に、自分が理想とする場所・店舗を探し歩いた安田さんが見つけたのは、地元の人でも(僕がつとめる会社は東吾妻町にある)「えっ!そこに店が?」と思うような東吾妻町郊外。

フライヤーの写真は、安田さんの知人でもあり、高山村ポスターでも組んだ丸山えりさんにお願いした。「Serenite」のある場所は、JR吾妻線・岩島駅から徒歩5分。富沢木材敷地内にある小さな小屋だ。店からは吾妻川越しに対岸の穏やかな山々も望めて、もう少し行けば吾妻渓谷や川原湯温泉もある。そして店舗となるその小屋を今に至るまで“育てて”きたのは富沢木材のご夫婦。単なる小屋ではなくて、柱や屋根に使っている木材や、緑色の印象的な扉や、置いてあるアンティークな家具や食器に、ご夫婦の愛情を感じた。そして誰よりもこの場所に「EUREKA!(我発見セリ)」と思ったのが、安田さんだったのだろう。彼女はその場所にいて、誰よりも生き生きとしていた。

安田さんからは「この店は私の集大成」という言葉も伺った。であればその店のフライヤーは「Mam's cakeを愛してきたお客さんにとって、または初めましての人にとって、招待状(Invitation)になるようなものが良いだろう」と思った。と言っても僕はデザインが本業ではないので、作りはごくシンプルである。「ロゴは友人にお願いするから」と言われ、送られてきたロゴを見たらManiackers Designのロゴ。イラストレーターとしても活躍する佐藤麻美さん(僕は個人的に彼女のイラストのファン)によるものだった。安田さんの顔の広さを再認識すると共に、麻美さんの丁寧な仕事に関心した(細かくは書かないが、洗練されたロゴタイプに加え、温かさを残すための配色の考慮とか)。

Serenite=静か/癒し

コロナ過においてわかってきたことは、これからよりわかってくることは、「五感がともなう暮らしの大切さ」なのではないかと思う。僕も普段映像制作を主としているので、視覚や聴覚に対してはできる限りのアプローチをしたいと思っている。けれど、においや手触り、その場所に行くまでの経緯、人と人との距離感、なにより「時間」というものは、リモートでは、インスタントでは、多少はそれで我慢できても、その暮らしをずっと続けていくことは難しい。

「ここにいる時間が、愛おしい。」

安田さんと現地で話をして、彼女が思っているであろうことをフライヤーに綴った。訪れるとしたら、プレオープンのバタバタが落ち着いたころの週末(しばらく土日のみの営業)が良いかもしれない。この場所が、多くの人にとってのSereniteになることを願っています。

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