8月24日㈯~8月31日㈯ モテたことがないから作法がわからない
8月24日㈯
・人妻の家に行ってその家に住んでいる子供に知恵を授ける仕事。
突然丸刈りにしておいて、丸刈りについて触れられる通称「丸刈リアクション」を嫌がる、というわがままな私。
オフィスとかなら初日の丸刈リアクションだけ乗り切ればいいのだが、人妻の家に行く仕事は、一軒ごとに丸刈りアクションを受けねばならない。
今日を入れてあと3丸刈リアクション残っている。憂鬱。
と思いながら今日の生徒さんのインターホンを押したところ、たまたま私が来る直前までお母さまとお子さんが喧嘩なさっていたので、私の頭を一瞬見ての「あっ、」という丸刈リアクションのみで、あとはそれどころじゃないという状況だったので、助かった。
しかも、私という異物が家庭に侵入した刺激により親子喧嘩も収まったようで、お母さまからめちゃくちゃ感謝していただけた。
超ラッキー。
8月25日㈰
・小説の学校。
こちらは七月から二週間に一度、授業を一緒に受けているだけだし、授業が終わったらすぐ各々解散するし、全然雑談とかしたことがないという私の頭皮より薄い関係性なので、普通にノー丸刈リアクションだった。
次回、先生も交えてみんなでご飯に行くことになる。
私は会食恐怖症という、他人がいると吐き気とか眩暈がしてものを食べられなくなる病気があって、ただ今年入ってからほぼ症状出てないからたぶん行けるし、行きたいんだけど、どうもこの教室だと緊張してしまって肩とか首に力が入り過ぎて眩暈がしたりしがちだから、ちょっと不安。
でも本当に今年から調子が良いからたぶん大丈夫だし、わざわざ先生に「実は私は会食恐怖症で」と伝えるほどのおおごとにするのもあれだなと思うので、次に提出する小説の課題の中にさりげなく会食恐怖症について書いて、もしかしてこの人自身も会食恐怖症なのかもしれないなと気を遣ってもらってルイボスティーだけ頼んでても大丈夫そうな喫茶店とかにしてもらえたらいいなと企んでいる。
8月26日㈪
・ホテルの部屋に人間がいた痕跡を消す仕事。
1年半以上働いてきて、ついにこの仕事のコツを掴んだ気がする。
ものすごく早く終わって、タイムカード押すまで暇を持て余すという格好良いことをした。
・人妻の家に行ってその家に住んでいる子供に知恵を授ける仕事。
この家が、私の丸刈りをまだ見ていない最後の一軒。
ドキドキしながらインターホンを押すと、中でガヤガヤ声は聞こえるもののなかなかドアが開かない。
きっと、カメラに映った私の丸刈り姿に動揺してしまっているのだろう。
玄関先で3分ほど待ち、やっとドアが開く。
すると、目の前には知らない少年。
というのも、今日私の授業があることを忘れて家に友達を連れてきて遊んでいたところ、突然私が来て大慌てで片付けて友達にも謝って帰らせて、というガヤガヤであった。
私の丸刈りに関しては一切ノー丸刈リアクションであった。
8月27日㈫
・小学校の頃からの友達と一緒にモロッコ料理を食べに行く。
モロッコ料理は初めて食べたのだが、ものすごく美味しかった。
クスクスという、小麦粉?を固めた粉、ってそれ小麦粉じゃん、なんだろ、わかんないけど、そういうモロッコでは日本の食卓でいう米みたいな感じで出てくるものがあって、クスクス単体で食べると全然味がしないんだけど、料理と一緒に食べるととてつもなく美味。
なるほど、一人だと地味だけど誰かと一緒にいると相手の良さを引き出したり魅力を倍増させるような、そんな人に私もなりたいな。と思った。
友達はYoutuberになろうとしていて、どんなチャンネルにするかという企画書を見せてもらって、いいじゃん、って言った。
台風が来てるから今日は会えないかもしれないと思っていたのだが、蓋を開けてみたらめちゃくちゃ過ごしやすい気候で、途中通り雨もあったけどちょうどそれが常に室内に入ってる時のタイミングだったりして、ラッキー。
8月28日㈬
・月末までに提出しなければならない文章があって、それをひたすら書く。
8000字くらい書いたところで、内容がうまくまとまらないから何か参考になるものはないかと自分がいま書いているテーマでネット検索してみたところ、Youtubeで岡田斗司夫が私がまさに今書いているのとほぼ同じことを言っていた。
正確にいうと軸となる主張は全く違うのだが、でも要約しちゃうとほぼ同じだった。
別にほぼ同じことを書いても別にいいんだけども、いや、でもなー、って、なる。
なんか、自分の文章を読んだ人に面白いと思ってもらったり笑ってもらったり何か感じてもらえたりとか、そういうのではなく、私は、頭が良いと思われようという下心が先行して書いていたな、と気づいてしまった。
で、8000字を一旦全部消して、自分の経験したこととか感じたこととか、ちゃんと脳味噌を晒す文章を書くことにした。
自分が何かを書いたり作ったりするときのスタンスを認識することができて良かったが、果たして締め切りに間に合うのだろうか。
8月29日㈭
・ホテルの部屋に人間がいた痕跡を消す仕事。
一番接しやすい空気の同僚熟女とこないだたまたま帰るタイミングが一緒になったので駅まで喋りながら帰ったのがとても楽しかったのだが、今日もその熟女と帰るタイミングが同じになった。
さすがにまた一緒に帰るのはあれかなと思ってホテルからは先に出たけど、でも別に一緒に帰ればいいじゃんと横断歩道の手前で思って、スマホいじるフリしてちょっと立ち止まって時間を調整して、そろそろ通りかかるかなと振り返ってみたら、向こうもスマホ見て立ち止まって私に追いつかないようにしていた。
で、横断歩道を渡り、それでも往生際悪くまた私がスマホを見るふりして立ち止まってたら、熟女がさすがにと思って話しかけてくれて、一緒に駅まで歩いた。
とても楽しかった。
8月30日㈮
・ホテルの部屋に人間がいた痕跡を消す仕事。
20歳の女子大生同僚が朝礼前に話しかけてくれて、いろいろお喋りする。
帰り、ホテルを出て少し歩いて振り返ったらちょうど女子大生が出てくるところだった。一緒に帰れるかもしれないと思い、昨日と同じ作戦で横断歩道のあたりでスマホを見るふりをして時間を調整して、振り返ったら女子大生の姿が無かった。
失敗した。
8月31日㈯
・ホテルの部屋に人間がいた痕跡を消す仕事。
例の優しい熟女と同じフロアの担当になる。
「明日出勤ですか?」と聞かれ、「明日はシフト入ってないです」と答えたら、「ショック・・」と言われる。
帰り、また同じくらいのタイミングになり、でも毎回一緒に帰ってると向こうに迷惑かなと思いつつ、またスマホを見るふりをして立ち止まってたら、熟女が話しかけてくれて、結局一緒に喋りながら帰る。
楽しいなーと思いつつ、心配にもなる。
というのも、この職場は50~60代の熟女が9割を占める環境で、32歳という本来おじさんである私が「若い男」という扱いを受けている。シフトによっては全員熟女で男性が私一人というバチェラーみたいな状態になっている日もある。
そもそもがモテる要素の無い私であるし、コミュ障すぎて1年半以上働いてるのにほぼ誰とも喋っていないから全然モテていないのだが、とはいえこの職場では「男」で「30代」というだけで、希少価値を持ってしまっている。
そんな私が特定の熟女とだけ2人で一緒に帰ったりしていると、なんか変な噂とかたって相手に迷惑をかけるのではないか、相手が職場に居づらい状況になりやしないか、
と、モテたことがないのでこういう気遣いをする側の立場になるのが人生初めてでよくわからないのだが、心を開ける熟女と喋りながら帰るのは楽しいので、今後も迷惑にならない程度の方法や距離感で仲良くさせていただきたい。