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出会いは偶然、別れは必然

8月が終わって、当たり前に9月になって、夏が終わった。
気候だけで判断するなら、まだまだ夏のようだが、もう夏は終わった。そう感じる。



友達以上恋人未満って言葉は誰が言い始めたのか知らないけれど、それは「友達→恋人」の「→」の状態であることを指しているのだろう。と思う。

もっと違う言葉が存在しないのはどうしてだろうか。
「友達以上〇〇未満」、〇〇に当てはまる言葉を探してしまう。親友とか家族とは違う大切に思える、そんな言葉だ。

「未満」の言葉もいらないかもしれない、
恋人でもない、家族でもない、親友でもない、そんな関係性の言葉があればいいのにと切に思う。
その人をカテゴライズしたいとか、そういうことでもないが、言葉がほしい。それで片付けたいと思ってるのかもしれない。

答えは見つからないので、まぁいい。


同じ高校で仲の良い友達だったその人は、自分と考え方が似ていた。同じクラスになったのも、隣の席になったのも偶然だろう。


卒業後、よくグループで飲みに行く仲になり、何度もくだらない話から真面目な話までたくさんのことを話して、バカ騒いで、朝方には吐き気と寂しさの中で解散した。いつも、次の約束はなかったけれど、おつかれ、またね、といって手を振った。


心にもない失言から傷つけたこともあったが、また飲みに行ってくれた。傷つけたことを忘れたことはない。


その人が誰かと付き合って幸せそうな時は、自分も嬉しかったし、別れてバッドの時は自分もバッドな気分になった。
その人の幸せを心から願えた。そして今も願っている。

その人との別れが、突然やってきた。
死んだわけではない。
むしろそれは、新しい命の誕生に伴う別れだった。


前回の飲み会の終わり、その人の帰る始発電車の中で発車を待って話していた時、その人は涙をポロポロ流しながら、もう会えなくなるのが悲しい、と言った。
相当酔っていたので、多分その人は覚えてない。
そして、自分は発車の直前で降りて手を振った。その人は顔を伏せたままだった。


直後に、DMで「世界の誰よりも幸せになってね」と送られてきた。
自分は「いや、あなたの方が幸せになってください」と送った。


その日の飲み会でその人は帽子をカラオケに忘れた。
自分は、その人を始発電車で見送った後にカラオケに取りに戻った。DMで「返すためにまた飲み行こう」と送った。
もともと会うことに口実なんていらないけれど、会う理由があることに、心が躍ってしまった。

長引けば長引くほど、たぶん終わりは辛くなるのに。


それからしばらく、「別れ」について考えを巡らせた。
理由は腐るほどある、と思う。恋人同士の破局の別れ、
人が死ぬことによる別れ、物理的距離による別れ、すぐ近くで暮らしているけれど会えなくなる別れ。
悲しい別れもあれば、前向きな別れもある。お互いが会いたくても会えない、そんな別れも。

自分と同じ状況の人がいたとしても、自分の気持ちは他人にはわからない。わかってたまるか!とも思う。


「別れ」の日も、いつもと同じようにグループで飲み会をした。いつもと同じように楽しかった。
最後になる、最後にしようと自分が思っていることは、知られていないから(その人を除いて)。みんながいつも通り楽しませてくれた。途中は自分も忘れて楽しんだ。

最後はいつも通りその人を家まで送った。タクシーを家より少し手前で降りて、話しながら歩く。いつもと同じ深夜の明治通り。

何を話したかはお酒のせいで覚えてないが、他愛もない話だったと思う。笑ってた気もするし、泣きそうだった気もする。

家の下で、預かっていた帽子と景品のマフラーを返して、最後に感謝の贈り物として帽子を渡した。セレクトショップをぶらぶらしていたら、その人に似合いそうだと思った帽子。喜んでいてくれて、良かった。


最後の会話は、案外さっぱりしていて、
じゃあ、お疲れ なんて言って手を振った。

しばらく歩いて振り返った時、もうその人の姿は見えなかった。

面と向かって、伝えきれなかったことは、文章にしてDMで送った。まだまだ、話したいことはたくさんあったけど、伝えたい気持ちは全部そのDMにのせた。


いつもなら、すぐにはさめない酔いがすぐにさめた。

うまく言葉にはできない。言葉にすることを諦めた。言葉にしようとすることが野暮だと思った。


忘れるには、並大抵の時間薬じゃなきゃ効きそうにない。
決して、忘れたいわけではないけれど、紛らわしたい自分がいる。


その人といつか会えなくなることは、ずっとわかっていた。出会った時からではないけれど、割と早い時期に。
それは自分のせいでもあるが、必然であった。

自分が、自分という人間である限り。


その人の幸せを切に、願う。
それは、自分では幸せにできない諦めでもある。



その人は自分の幸せを願ってくれた。
その人は強く見えて、そうじゃないところもあった。

ありがとう。と伝えたい。

自分にとって、名前をつけられない関係のその人が
どうか、健康で多幸な人生を送れますように。

心から。



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