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2022年2月9日の乾杯

2022年2月9日の乾杯。コロナ感染者が高止まりして、いくつかの催しにも中止が出始めるなかで、たまたまネットでお勧めがあっておじさんがWOWOWオンデマンドで観た映画『すくってごらん』、おねえさんがAmazon Prime Videoで観た『箪笥』、おじさんが見つけたSTAGE BEYOND BORDERSで期間限定配信中のテロップつき『わが星』の話。おねえさんのTRPGについての説明や初心者の入り方、更には何かを始めることについて。そして敷居の高さやそれを超えることについて。またおじさんが観ることができたニットキャップシアター『チェーホフも鳥の名前』や、観たくてたまらない美術展、映画、お芝居たちのことなどを話します。


👨演劇のおじさんと
👩おねえさんです。
👨こんばんは
👩こんばんは。
👨オミクロンも相変わらずお元気そうですね。
👩いやぁ、相当に猛威をふるっていらっしゃる……やめてほしい。
👨私も流石に・・。いくつか観に行こうとおもっていた公演や催しもキャンセルにもなったりしたので。
👩あー…そうなんですね。。
👨ついに出てきて。もちろんすべてではないけれど、ぽろぽろと。
👩あらあら。
👨楽しみにしていたのに、数日前とか前日に、無念だけれどキャンセルしますなんていうメールがくるともうがっくりきますよね。誰も責められないのだけれど。
👩楽しみにしていたのに…
👨そうそう、ほんとその通りで。だからそういう日は家に閉じこもることも多くなってきている今日この頃ですが。
👩またね、あの、戻ってきたというか、、なんといいますか…
👨物理的にいくところが見つからないみたいなことがあって。ほら、スケジュールが急になくなってしまうと代替ってすぐにはみつからないじゃないですか。
👩そうですね。
👨だから、そうして時間が空いてしまった時には悄然として家にいるというか。
👩うんうん。
👨ここのところ映画とか、サブスクの映画などもよく見るようになりましたけれどね。
👩はい。
👨実は私、WOWOWを契約していて。そうするとね、WOWOWオンデマンドっていって、WOWOWで放映した映画ってネットでも観ることができるんですよ、概ね。
👩ふむふむ
👨見損なった映画も、あれ、見逃し配信・・。
👩はいはい。
👨そういう形でみることができて。WOWOWって結構よき映画をやるじゃないですか、新しくて。
👩やりますね。
👨で数日前だったけれど、1年か2年前くらいに封切りになった『すくってごらん』という映画をやっていたみたいで。ある方がTwitterですごく良かったあって呟いているのが目にはいったのだけれど。
👩はい。
👨で、パソコンで調べてみたら、尾上松也さんなんかもご出演でね。どんな感じかなぁとおもって、試し観をしようとおもったら、最初のシーンで金魚をつんだ軽トラに呼び止められるのだけれど、そこからもうミュージカルなんですよ。
👩ほわーーー
👨会話がちゃんと歌に乗っていて、不思議な違和感のなさがあって。しかも歌の歌詞がテロップで出ていてメロディーにも台詞が流されていなくて。
👩ふんふん。
👨で、最初はなんだこれはとか思ってみていたのだけれど、リズムとかもすご上手くつくりこまれていて、
気がつけばその歌の掛け合いの部分がしっかりと物語になって伝わってくるのよ。
👩うん。
👨まあ、『すくってごらん』というのは金魚すくいの話なんだけれどね。
👩金魚すくい!!
👨金魚といえばで、多分奈良の大和郡山でロケとかもやっているのかなぁて思うのだけれどね.あそこが日本一の産地なので。
👩みたことあります!
👨で、ももクロの百田夏菜子さんもヒロインでご出演になっていて、彼女も想いがしっかりと内から滲み出してくるとても良いお芝居で好演だったり、ライブのシーンに魅せるクオリティがあったりと映画としてのいろんな要素の完成度がとても高いのですよ。ちょっと蜷川実花さんを彷彿とさせるような絵面の美しさもあったりとか、
👩はい。
👨元々金魚って美しいものじゃないですか。
👩とても好きです!
👨観賞用として使われるくらいだから。
👩うんうん。
👨その美しさを百田さんが見事に纏ってもいて。あと、百田さんがピアノを弾くシーンがあるんだけれどね、モノノフの方に嬉々として教えていただいたのだけれど、彼女はピアノ初心者でもあるにも関わらず、めっちゃハードスケジュールの中で必死の特訓で物語に対してまったく違和感がなくらいに弾けるようになったという話にも感心したりして。
👩はへーーーー
👨そのことで、音楽の聴かせどころが物語の骨となりしっかり生きて、映画の底力というかクオリティを支えてもいて。噂にはきいていたけれど、ももクロの方たちというのはプロ意識がめっちゃ高くて観客をとりこむところまでしっかりと作り込んで見せるのだともおもったし。また、歌舞伎役者の松也さんにしても、ミュージカル俳優とて場に立つことの華や存在感があって。まあ、考えてみると歌舞伎役者の家柄であっても現代劇を演じたり洋物のミュージカルでしっかり歌える方はいらっしゃるわけで。高麗屋さんなんかそうですよね。
👩ああーーー、そうですね。
👨白鷗さんの『ラ・マンチャの男』は伝説の舞台だし、松たか子さんは歌手でもあるし。だから、芸というか、ももいろクロ-バーzの方々にしても歌舞伎俳優の方々にしても、なにかを極めてさらに高みを目指す方たちが映画をつくると凄いのねって感心しながら、平日の夕方に夢中で画面を見つめていましたけれどね。
👩ちなみに私は『箪笥』という映画を観ましたよ、ちょっと怖いやつ。
👨えっ?『箪笥』?
👩うん。『箪笥』。韓国映画ですね。スピルバークだったかな、リメイク権をハリウッドが買ってつくられているはずです。
👨それは何で観たの?劇場とかで?
👩アマプラで!Amazon Prime Videoで観ました。
👨なるほど。アマプラで。そうか。韓国映画も嵌る人は嵌りますからね。
👩その『箪笥』っていうのはもともとね、なんだろ?童話でもないんだけれど、怖い話。その、どこかに伝わっている昔話みたいなものが元になっているらしくて。
👨ええ。
👩普通のホラーと違って物語性というか謎解き要素もあっておもしろかったんですよ。
👨ああ、なるほど。
👩うん。
👨では、私も。一応アマゾンプライムの会員でもあることだし、観てみよう。
👩もしよろしければ、是非。なんかその…ホラーはね、怖いですけれど一線を引いて観ることができるというか。何かの作品をみたときに心にくらう度合が低いというか…いや、恐怖というダメージはくるのですけれど。丁度いいんですよね。
👨ああ、距離感があるのね、非現実と現実のあいだに
👩そうです、そうです。
👨なるほどね。そういうのもいいね。
👩うん、なかなか。
👨今メモしたんで、あとで観てみます。
👩はい、是非。
👨あと、そうだ。これもツイッターでどなたかが呟いていて知ったのですけれど、5年かもっと前かもだけれど、ままごとという団体が『わが星』を上演していたの知ってる?
👩ええ。
👨それが、今というか3ヶ月前から1年間の限定で無料で配信されているんですよ。
👩へーーー!!!
👨私、初演から何回も繰り返しみたんだけれど、三鷹芸術文化センター、星のホールでね。
👩はいはい。
👨でも、その時にはね、当たり前だけれど、字幕なんてものはないんですよ。でも、今回国際交流基金が、日本の良き舞台を紹介するための活動としての「STAGE BEYOND BORDERS」(https://stagebb.jpf.go.jp/stage/)というプロジェクトの中で2021年10月から1年間配信している『わが星』だと、日本語に加えて英語、フランス語、ロシア語、中国語、スペイン語の字幕がついているんですって。
👩ええぇ、すごーい。
👨で、私はもちろん日本語の字幕といっしょにそれを観るわけだけれど、なんだろ、さっきの『すくってごらん』でもそうだけれど、字幕っていうものがあると、演劇というかその作品の仕組みがとてもよくわかるのね、感じるというのとはすこし別なものが脳内に構築されて、ただ観ることと比べても、くっきりと鮮やかに思える。そうして、今更ながらだけれどちょっとした発見があったり、忘れていたシーンなどもあって思い出したり、知ってはいても改めて心惹かれる部分もあったりしたその先で、改めてこれはとても良く出来た舞台なのね。
👩うん。
👨で、俳優達がしっかりと稽古を積んで緻密に空間を作り上げているのも、生の舞台と遜色なくわかるし。そこにはしっかりと人が生きる座標を介しての宇宙の営みへの俯瞰があるし。加えて字幕という別の表現が編み込まれたことで、新たに新鮮な作品への感動もあって、おもしろかった。
👩なるほど、なるほどね。
👨うん。「STAGE BEYOND BORDERS」には他にも、私にとって観ることができたりできなかったりした多くの舞台動画が提供されているので、時間があればまた観て行こうと思います。ところでおねえさんは、そういう空いた時間になにかされることってあるのですか?
👩私はTRPGを楽しんでいますね。
👨なるほど。それはネットでということですか?
👩そうですね。オンラインで。
👨はいはい。
👩なんかあの、なんだろうな、いろんな遊び方があると思うんです、TRPGって。
👨はい。
👩タイプがいろいろ湧かれているんですよ。お芝居みたいに、エチュードみたいに、演技をしてその物語を楽しんでいくようなタイプの人もいれば、謎解きみたいにやっていく人もいる。物語を読むみたいに楽しむ方も…人の数だけ楽しみ方があるものだと思います。前にお話ししたマーダーミステリーだけではなくてTRPGなんですよね、やっているのは。その、要は……クトゥルフ!クトゥルフ神話TRPGってご存じですか?
👨はい、その名前は何度か伺ったことがあります。
👩うんうん、そのクトゥルフ神話TRPGって、そのーー……。 クトゥルフ神話の話を始めるととっても長くなってしまうので、今は割愛させていただくのですが。
👨はい。
👩自分達でこう、物語を進めていく。かつ、物語を回す側は演出家のような形になってロールプレイを進めて行くとか物語を進めて行く中で、一緒に遊んで頂く方になんとかこう演技をしてもらう、ロールプレイをしていただいて楽しんで頂くみたいなものなのですけれどね、ざっくり言うと。
👨それは、何人ぐらいでやるものなのですか?
👩まちまちですね、ひとりっていうこともあれば、もっとたくさんでやるっていうこともありますし。いろいろですね。
👨あの、たとえば私なんかはまったくやったことがないじゃないですか。
👩はいはい、そうですね。
👨初心者は、そういうのってどこから入っていくのですか?だいぶ前にも、というかコロナが流行始めたときに、なんかそういうものが、リアルなマーダーミステリーが日本でも中国とかでも流行始めているという話は聞いていて、ここでもその話題を取り上げたことがあったのですけれど、
👩うんうん、話しましたね。
👨で、それはなんか、そういう場所にいって教えてもらいながらみたいな事だったように記憶しているのですけれど、ネットの場合というのは初心者の人はどうしたらよいのですか?
👩うーーん…募集がかかっているので、なんていうか、自分からこう遊びたいぞっていうところを探して、
👨ええ。
👩どんどんその、いっしょに遊ばせて下さいみたいな。初心者歓迎みたいなところに。
👨ああ。
👩中々ハードルが高いかもしれませんね。プレイ人口はどんどん増やしたいけれど、そういう意味で難しいといいますか…
👨なるほど。まあ、それはなんでもそうですよね。
👩そうそう、だから、その、初心者さんを導いていくよみたいなところに行ったりとかしてやったりとか…うーーん。
👨こう、ちょびっと敷居が高いっぽいじゃないですか。
👩そうなんですよねぇ
👨実際にやられている方のそういう感想とかがツイッターにもぼろぼろって流れてくることがあって、
👩うんうん。
👨それを見ていると、やっぱりすごく楽しそうなのですよね。
👩そうそう、楽しいですよ。ものすごく!
👨すごい楽しそうだし、友達何人出来たかなみたいなみたいな感じで、そういう人って友達もたくさんいそうだし。
👩うん。
👨だけど、その一方で、間口が狭いって感じるのもやっぱり事実で。だから、色々考えるとああいうのはやっぱり若い子じゃないとできないのかなぁとかね。
👩いや!そんなことはないと思います!!
👨という話を、知り合いのおじさんとしていたのですけれど。
👩へぇ!そしたら…店舗からはじめるのはどうです?
👨あぁ!なるほど。そういうお店が。
👩そうそう、人を集めて、初心者ですって予約入れて店舗に行けばすぐ出来ます。
👨ああ、なるほど。それはもう1からちゃんと教えて下さると言うことですよね。
👩そうです、そうです。
👨そうかぁ。あとさ、その一番の醍醐味ってなんなのですか?
👩人によりますが……物語の登場人物になってストーリーを動かすこと。とか、自分であり自分ではない別の人間を生きられる事。とかかなぁ。
👨あぁ、ということは・・・、それは演じるわけですよね。
👩そうです。
👨そうすると、なんだろ、やっぱり俳優の修業をしていないと無理なのかなぁとか思ったりもするのだけれど、そういうことはないの?
👩そういうことでもない。行動とかを芝居ができる人は芝居のようにやればいいし、できなければ、ここでこういう行動をしますって、
👨ああ、ト書き語りをすればいいの?
👩そうそう!ト書きみたいにすれば行動は説明できるから、そういう形で進めていけば。
👨なるほど。
👩それこそほんとに、そういう話をしていた皆さん、おじさま方で行ってみたらいいですよ。めちゃめちゃ楽しいと思いますよ。私も参加したいな(笑)
👨前にも話したかな、ここで。今の日本では、定年以降友達がいない問題というのがあって、実は
👩うんうん。
👨定年して職場を離れた瞬間におしさんたちは自分に友達がいないことを知るみたいな。だからみんな友達というのはおじさんになっても早いうちからつくろうねみたいなアドバイスが、いろんな新聞とかそろそろ定年が見えてきたおじさん達用の雑誌なんかには書いてあるんですよ。ググっても出てくるし。
👩へぇ。
👨だけど、実際に考えたときに、なかなかなにをやるにしても、そのきっかけというか、その仲間を見つけて始めるというのは敷居が高くてね。
👩うんうん。
👨私たちは、若いうちにゴルフは始めておかないとある一定の年齢になってからだと無理だよっていう実例でそういうことについて先輩の人たちから諭されているのだけれど。私はゴルフをしないけれどきっとなんでもそうで、お芝居を観に行くということにしても、敷居が高いとおっしゃっている方がけっこういらっしゃるし、なんか劇場に足を踏み入れるのが怖いみたいな話も本当に訊いたし。
👩ふんふん
👨慣れちゃうと、行ってチケットをもぎってもらって、席にただ座るだけだよって思うし、時間が来れば舞台ではお芝居が勝手に始まるよみたいな感じなんだけれどね。
👩ううーーん…怖いとは思う。けど!!新しい事や面白さや楽しさを得るためにはさ!!やっぱり踏み出さないと新しい世界へはいけないわけだから、どっちを選ぶかじゃないですか?
👨うん。
👩無意識に選んでいるということだとおもうのですよ、それって。怖いからやらないということは、えーと、悪いことではなくて!安心とか平穏を選んでいるということだとおもう。その刺激よりも。どっちがいい悪いかじゃないですよ、その人にとって何が大事かというお話。楽しいことだったりとか…そのー、人生の楽しさとかそういうことではなくて!なにかひとつね、刺激、新しいものをもっと知りたい!と思うのか否か。新しい場所に入るのは疲れるからね。大変だしさ。ひとつ新しいハードルを乗り越えなければいけない。どちらを選ぶかはそれぞれの大切な価値観だと思う。ハードルを越えない、を選択した方が穏やかに安心して過ごせる可能性だってあるわけですし。
👨ああ、それを知らないことでね。
👩そう。そのハードル…一線が高いからやらないというのは実際にあるのかもしれないし、それはなにかのきっかけがあればやりたいっていう人もいるのかもしれないけれど、やっぱその何かが欲しいのであれば、うんしょと腰をあげなければならんと思うのですよ。
👨うん。
👩平穏のほうが欲しいっていう人に無理矢理立って、立って、歩いて、歩いて、この壁を飛び越えてみたいなのは酷だし、なんかね、余計なお世話じゃん。
👨うふふふ。
👩穏やかがいいよって言っているのだったら、素敵だねって。
👨せっかく平穏な日々を送っているのにっていう話になるよね。
👩そうそう、どちらも尊いですよ、本当に。しかも、それを自分で選べるというのはすばらしいことだしね。
👨うん、なるほどね。
👩でも、遊びたいなら。刺激が欲しい、新しい世界に入りたいなら、頑張らなければ駄目よ。というか一歩の勇気は出さなければ駄目だよなぁとは思います。
👨そうそう、だから平穏を望んでいる人たちは別にかまわないのよ。だけど、平穏を望んでいないのだけれどそこから脱却出来ない人たちというのも一定数はいるというか、平穏を必ずしも望まずにもっと刺激のある生活をしたいっていう風に考える人もそれなりにいて。でも見方というか考え方を変えれば、そういう人たちの受け皿になるものというのは、うまくやればそれは素晴らしい市場になるともおもうのね。
👩うん、それはそうだろうとおもうし、そういう受け皿はもうあるんだ。あの、店舗でやるってさ、要はお金が発生するということだから、その対価を払っている段階でそれはもう商品だし。オンライン上で友人どおしというか、まあ友人のようになってとなると、そこにはお互いの楽しさというかお互いが楽しいように、クトゥルフだとKPだし、ほかのゲームだといろんな言い方をしたり、GM、ゲームマスターっていったりするけれど、ゲームマスターが準備をしてくれたりとかで、まあいろいろと労力がかかるわけですよ。
👨なるほど。
👩対価が発生していない状態だとお互いになにかしら…みんなで楽しくってなってくるとその一方的に教えるという状態は負担になったりしかねないし、大変だと思う。もう本当にやりたいならやりたいというメンバーを集めて、店舗にいっていちから教えて貰うのが楽しいと思う。そして平和だと思う。受け皿はある。もう、一歩踏み出せばそこにはあるけれど、でもそのハードルは高いのかもしれない。ハードル高いと感じる気持ちはわかるような気もしますけれどね。
👨なるほど。いやあのね、この間三鷹公会堂で神田伯山先生の独演会があったんですよ。
👩うん。

神田伯山 photo1 UP


👨まあ、それは講談なのね。で、講談というのも意外と馴染みがなくて、晩ご飯を食べた後ちょいとひとくさり聴きにいこうよって講釈場にみんなで行ったというのは50年どころか下手をすれば100年前の日本の話であって、
👩うんうん。
👨今講談って言っても、けっこう「なにそれ?」っていうところから始まったりもするし、まあ伯山先生の場合はテレビなどにもご出演で、すこし前には滝沢カレンさんとの看板トーク番組をお持ちだったりもしたのでネームバリューもあるのだけれど、そうであってもやっぱり講談を初めて観に行くってことにはちょっと二の足を踏まれるような部分がある方も多いみたいで
👩うんうん。
👨だから、さっきの話でいうやっぱり敷居が高いっていうところがね。まあ寄席なんかで、ちょっとよいところを二席とか三席聴いて帰ろうなんていうのも昔の人の粋だったのだけれど、今の人がそういうことをすることってなかなか出来ないじゃない。
👩うん、そうね。
👨まあ私は王子小劇場でやっている王子寄席で神田京子先生の講談を何度かきいたことがあって。常設の寄席でも講談はやるしね、おもしろいなって思っていたので抵抗もなくて普通にいけたのだけれど、でも誘った知り合いは講談といって誘うとうーんとうなってしまって。で、しょうがないのでそのあとで美味しいものを喰わせるからという餌までつけて。
👩あははは。
👨おらおらいくよみたいな感じでさ。まあ2席分のチケットを持っていて1席空けるのももったいないからさ。
👩うん、そうですね。
👨なんとか馬に水を飲ませようという企みに経費までかけて来て頂いたら、伯山先生の宮本武蔵にもうドはまりにはまられて、いやぁこんなに面白いものをいままでなんで知らなかったみたいなことをおっしゃるから。
👩うふふ。
👨しかもね、その会には神田紅先生のお弟子さんで神田紅希さんという女流の前座さんもご出演で、その方が最初に一席真田幸村出陣の下りをやった時点でもうかなり惚れ込んでしまったみたいで。
👩へぇ。
👨女流の方が凜と語っていた。伯山先生は芸に懐があって自在に観客を惹き込んで語るわけですよ、それに対して若い方は、というか東京かわら版の東西寄席演芸家名鑑2によると、東京芸術大学卒の齢25歳、入門してから1年半という芸歴なので、そこはやっぱり師匠に教えて貰ったその型で、語りにしても所作にしてもリズムにしても、基本に対して丁寧に、張り扇を打ち連ね、その風景を積み上げていくわけですよ。でもそれを女性が凜と声を張ってやるとすごくかっこいいのね。で、そこに惚れた先で伯山先生の芸の力に取り込まれて、いやぁいままで講談を知らなかったなんて人生損をしたみたいなことをおっしゃっていたので。
👩えへへへ。
👨で、その姿を見て思ったの。まあ世の中にはどういう形であっても敷居をまたぐことができればすごく幸せになれる人ってたくさんいるのだろうなぁって。

神田伯山 photo2UP


👩そういう人っていると思います、すごくね。すごく多いと思う。
👨だから、そのTRPGなども同じようなことなのかなという感じがしているのだけれどね。
👩ええ、そうですね。楽しめる人というか。ルールがあるのだけれど、それを楽しむのにルールは必要ないから、どんな楽しみ方でも良いわけだから、
👨なるほどね。
👩そうそう、やってみたいなって思えたらと。
👨なにをするにしても、こう、行ったことのないところへ行くっていうのはそういうことなのだよね。私も、一番最初に友人に連れられて昔のシアターグリーンにお芝居を観にいったときにはどきどきしていたもの。
👩うん。
👨でも、そうやって、踏み越えたときに世の中はひらけていくのかなって。
👩うんうん。
👨そうはいっても、今は環境的にも難しい部分はあって。お芝居に関していえば、特にここひと月ぐらいは、またちょっとねえ。あの、12月などと比べると、特に1月の中盤以降いろんな公演が減っているようなきがするのね。
👩うーん、そうか。患者が確かに増えているし、あと感染力が半端ないからなぁ。
👨あと、12月末で締め切りの基金からの援助の関係なんかもあって、パタパタっといろんな公演が詰まって、その反動というのもあるのかもしれないけれど。
👩なるほど。
👨まあ、そんななかでも、1月末にあったニットキャップシアターには足を運ぶことができて。めっちゃおもしろかったですけれどね。
👩ほう。
👨『チェーホフも鳥の名前』というタイトルで。座・高円寺でやっていたのだけれど。
👩うん。

photo ニットキャップ UP


👨関西の劇団なのですよ、ニットキャップシアターというのは。本拠地は京都なのかな、歴史もあって。そのツアー公演だったのですけれどね。ごまのはえさんという作演のかたがいらっしゃるのですけれど、彼の仕掛けた構成が4章にわけた時代の積み重ねにしっかりと物語をつないでいくのね。加えて生のパーカッションや音作りのためのアーティストが入って様々な楽器で場の空気を染めたり、場面の色をつくるボーカリストが入ったりもしていで、舞台の表現がとても豊かなお芝居だった。
👩うんうん。
👨その中で、樺太の歴史を。そこにはチェーホフも来たことがあるし、宮沢賢治が尋ねたこともある。そういうエピソードやその歴史への埋もれ方なども描きつつ、たとえば、ロシアのもので、その後日本のものになって、でも第二次世界大戦末期にソ連が攻めてきて日本の電話交換手たちが自決したりとかいう歴史もあって。
👩ああ、はい。
👨で、その成り行きのなかで、もともとそこに住んでいた人と、ロシアから来た人と、日本から来た人と、日韓併合後に日本人としてきた朝鮮半島の人とが、どういう風に交わっていったかということを紡ぐ舞台でもあって。文化というのはどのように繋がっていったかとか、民族の血のそれぞれがそれぞれの時代でどのように受け入れられ、あるいは虐げられ、混じり合っていったかという話でもあるのね。なんか、人類のサンプルが試験管の中に入れられてどのような反応をするかみたいな企みでもあって。
👩はい。
👨その時代ごとへの興味に加えて重なっていく歴史の俯瞰みたいなものもすごくおもしろかったです。
👩うん。
👨まあ、3時間でしたけれど、それにプラス休憩時間。
👩長ぁい…大変なごうございますなぁ。
👨まあ、4つの時代をしっかり描いて3時間といえないこともないけれど、休憩時間別で。
👩ええ。
👨座・高円寺は天井も高いし、換気をしてくれてもいて、長時間の上演でも安全だったとはおもうんですけれど。
👩うん、あそこはいけるんじゃないかなぁっておもっちゃいますね。
👨なんか、逆にこうコロナで押さえつけられている感じがまた戻ってきているときに、ああいう良いお芝居を観られるのはとても素敵なことでね。
👩うんうん。
👨今更ながらに、やっぱり芝居好きにとってよき舞台というのは大事なのだなぁとおもったりもした。そういう、何かを観るとかで常に刺激を受けているというのは、実はこういう日々であっても大切なのだと実感しながら舞台を反芻して過ごした一週間くらいでございましたけれど。
👩籠もっているなぁって感じはしますしね。今。こうやって話していても。肌で感じますね、オミクロンのすごさを。。
👨そうそう。いや、本当のことをいうと、たとえば今週でも、来週でも、観に走りたい美術展とかいっぱいあるのよ。
👩うーん。
👨あのさ、新国立にはメトロポリタン美術館展がくるでしょ。
👩観たいねぇ。
👨私は昔、ニューヨークにいたことがあって、その時に観て印象に残っていた作品もいくつか来るみたいだし、
👩はい。
👨でね、あそこはフェルメールを持っていてそのうちの1点がきたりとか、ゴッホがきたりとか私がすきなドガも来たりするんだけれど。そのほかにフェルメール展的なものもくるのよ。「フェルメールと17世紀オランダ絵画展」とか。
👩ああ、いいねぇ。
👨それは東京都美術館だったかな。ドレスデン美術館収蔵の作品をたくさんに観ることができるということで。ね、そう考えていくと行きたいところがいっぱいあるんだよ。
👩うふふふ。でも、気をつけないとですよ!本当に気をつけないと!!
👨そうなんだよねぇ。でも、ミロ展もあるしさぁ、文化村で。
👩うんうん。
👨ほんともう、嫌がらせじゃないかと思うくらい、なんか今年の春はいろんな催しがあって。
👩うふふ。
👨で、この間話をしていた、庭園美術館の「奇想のモード」展もすばらしかったし、もう一度観たくなってきているし。なんかコロナで一時期そういういろんなものを開催することが難しくなったとき、キュレーターの方たちがみんな、それをバネに思い切り準備をしたのではないかという感じすらする。
👩そうですね。頑張ってくださったのだろうなぁって感じる。コロナが一時期おさまったときには今だからこそって思っただだろうし。
👨力を蓄える時間もあったし、より高い志も生まれたって感じもするんだよね。
👩うん、しますね。
👨ええい、腕がなるわ、みたいな。
👩あはははは。
👨でも、今だって覚悟を決めて行っちゃうのだろうけれど、いつ安心していけるようになるのかなぁとは思う。流行病の常としてなんか急に収まるっていう噂もちらっと聞いたのだけれど。
👩うん。
👨あの、私は個人的に2月中にワクチンの3回目が打てるので、それが終わって一週間経ったら思い切り観にいってやろうとおもいますけれどね。
👩楽しんで下さいな。
👨だって、これだけのものだから、流行病大流行とはいえ行く人がいないのはものすごくもったいない気がするんだよね。
👩そうですよ、ほんとに。
👨もうお化けが出るくらいもったいないというかね。
👩えへへへ。
👨なんか、コロナが少し収まったらどこか行きたいところってあるんですか、おねえさんは?
👩うーん、なんか遠出がしたいですね。ひとりでいろんなものが観たい。
👨知らない街をあるいてみたいと。
👩そうですね。
👨なるほど。いいっすね。そうそう、なんか春になったら桜を順番に追っていくというのを、私は死ぬまでに一辺やってみたいんですよね。
👩それは確かに夢がある。
👨最初に九州に行って一度帰ってきて、関西でもお花見をして一度帰ってきて、東京でも花を愛でて、仙台に行ってまた見て、最後は北海道でも見るみたいな。私は北海道って仕事で札幌にいったことは何度かあるのだけれど、観光で行ったことがないので。
👩ほう。
👨だから、よく聞くじゃないですか。函館のなんとか丼はおいしいとか。
👩はいはい。
👨そういう良い思いをしたことがないんですよ。
👩そうなんですか?
👨でね、雲丹といくらは嫌いではないので。
👩うんうん。
👨花見をしたあとにはこぼれいくらとか山盛り雲丹とか一度食べてみたいのですよね。
👩いいですねぇ
👨ここまでこぼすかぁ、こんなに積むかみたいなやつね。
👩やってやるかぁって。
👨そうそう、なんかやっぱりお芝居をずっと観続けて、年間何百本となると、そういう旅に拘る機会っておのずから減るので。
👩うんうん。
👨だから、お芝居の上演が少ないときにはそういうところにも目を向けて。でね、その体験がまたお芝居を面白く感じさせるための蓄えになる気もして。そうやっていろいろなところに目をむけることで、また新たにお芝居のニュアンスを受け取ることができるかもしれないなぁというか。
👩また違った感覚で。確かにコロナがはやり始めたときとはまた違う感覚で観ることができる気がすごくしますね。旅っていうのは、これはこれで得がたい体験だから。
👨そう、得がたい体験ですよね。
👩しっかりと味わうべきだと思う。
👨映画もね、この間も話したけれど、なんか面白そうなものが何本かあるし。もう蜷川さんの『Holic』が楽しみで。
👩ずっとおっしゃっていますね。
👨あの、映画館で予告編を観たり、ネットでも観たりしてね、知れば知るほどおもしろそうなんですよ。彼女の世界観というのは、そりゃ彼女のようなセンスを持っているなんておこがましいことはいわないけれど、どこかで共振しているのだろうね、きっと。それは先日上野の森美術館で観た展覧会でも思ったし。
👩うんうん。
👨まあ、そんな風にして楽しめればいいなぁと。厳しい毎日ですけれど、コロナのなかでも楽しめるスキルを高めて、コロナが終わるのを待ちたいですね。
👩今はコロナ渦のなかで私たちが何を感じるのかというのを十分に、こう、せっかくだからね、唯々苦しむのではなくて、味わい尽くしてやろうという気持ちでいるべきではないかと勝手に思っております。
👨お芝居だって、ほら、全部が素舞台だったり、綺麗な風景ばっかりではなくて、いろんな借景の中に面白い物ってたくさんあるじゃないですか。むしろその方がインパクトが強くておもしろかったりもするじゃないですか。
👩します、します。
👨なんかお芝居のほうでも、アゴラの方だと、若いがオリザさんの戯曲を上演したり。3月には山中企画の『転校生』があるし、4月にはまた青年団として『S高原から』をやるみたいだし。
👩へぇ、それは興味深い。いいな。
👨青年団の俳優に新しい世代が育つごとにまた新しいキャストで組んでやっていくというのが楽しみでね。
👩そうですね。いやぁ、そのころにはほんと流行病も落ち着いていて欲しい限りですよ。
👨まあ、アゴラ劇場はしっかりと防疫面でもやってくれているし、それらも3月なり4月には観に行こうとおもいますけれどね。
👩うん。
👨まあ、楽しみは尽きないということで。今日はこのくらいにしますか。
👩そうですね。
👨では、次回お話しするときには少しでもコロナが終息していますように。
👩はい。
👨演劇のおじさんと
👩おねえさんでした。
👨それではおやすみなさい。

(ご参考)
・『すくってごらん』
監督 : 真壁幸紀
脚本 : 土城温美
出演 : 尾上松也 百田夏菜子 柿澤勇人 石田ニコル 
矢崎広 大窪人衛 清水みさと 辻本みず希 
北山雅康 鴨鈴女 やのぱん(矢野ひろし) 竹井亮介
川野直輝 笑福亭鶴光
原作 : 大谷紀子『すくってごらん』
音楽 : 鈴木大輔
主題歌/挿入歌 : 百田夏菜子
2021年 日本映画 上演時間92分

・『箪笥』
監督 脚本 : キム・ジウン
出演 : イム・スジョン ムン・グニョン ヨム・ジョンア 
     キム・ガプス
2003年 韓国映画 上映時間 115分

・『わが星』
2015年5月16日~6月14日
@三鷹芸術文化センター星のホール
作・演出 : 柴幸男
音楽 : 三浦康嗣(ロロロ)
振付 : 白神ももこ(モモンガ・コンプレックス)
出演 : 大柿友哉(害獣芝居) 黒岩三佳(キリンバズウカ)
斎藤淳子(中野成樹+フランケンズ) 寺田剛史(飛ぶ劇場)
永井秀樹(青年団) 中島佳子
端田新菜(ままごと/青年団) 山内健司(青年団)

・神田伯山独演会
2022年2月8日@三鷹公会堂光のホール
前座 神田紅希
神田伯山    浜野矩随
   神田伯山    大名花屋
    仲入り
   寛永宮本武蔵伝
   神田伯山    山田真龍軒
   神田伯山    下関の船宿
    神田伯山    灘島の決闘

・ニットキャップシアター 『チェーホフも鳥の名前』
2022年1月26日~30日 @座・高円寺1
作・演出 : ごまのはえ
出演 : 門脇俊輔、高原綾子、澤村喜一郎、仲谷萌、
池川タカキヨ、西村貴治、山谷一也、
千田訓子、山岡美穂
パーカッション : 田辺響
歌 : 黒木夏海


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