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2021年7月24日の乾杯

7月24日のおじさんとおねえさんの会話
コロナの勢いが増す東京、そのなかでいよいよ始まったオリンピック。開会式のパフォーマンス、過去の表現活動を理由に直前に解任されたプロデューサーのこと。そんな中でも行われている演劇のこと。アガリスクエンターティメントやドリルチョコレート。さらには演劇の配信や街のライブ配信のことについても意見を交わします。

👨こんばんは、演劇のおじさんと
👩おねえさんです。よろしくお願いします。
👨よろしくお願いします。
👩オリンピックが始まりましたね。
👨始まりましたね。開会式はごらんになりましたか?
👩ライブで観ることはできなくて。でもなんとなく流れてくるものは観ています。テレビがないのでね。
👨ああ、なるほど。
👩なので短くなったものしか見ることができないのですけれど、でもオリンピックの開会式ってきっとどこかでみれるかなぁと思って。
👨うん、そうですね。
👩観たいと思っています。
👨多分Youtubeなどにもバンバンあがるよ。メインの部分は特に。
👩そうですよね。
👨あの成田屋さんの「暫」とかね、MISIAさんの「君が代」とかね
👩ああ。
👨あとね、今回のオリンピックにはピクトグラムが50個くらい使われているらしいのですが。
👩はいはい。
👨それを立体表現として「が~まるちょば」と「GABEZ」が演じたのだけれど。その50個をどんどん身体で表現していくという
👩耳に入ってきております!あの、あまりね、直接的に触れるということではない…ちょっと、あの、いくらおじさんとおねえさんという姿であれ軽率にそれに触れてはというか、とても大事というか、個人的にですよ?私がまだ考えが足りない中で、なにか意見を言うにはちょっと…いろんなものが足りてないなと思うので、直接的には触れられない。・・という話題をいまからするのですけれど。そのー、ピクトグラムの、演出の、あれなんですよね、多分というか確実に解任されている方が・・、演出したものかなと。
👨まあ、彼は全体の演出で、ピクトグラムのひとつずつの演出はその芸人さんや別の人がやったという説明ではあるみたいですけれどね.
👩もちろん、もちろん。いや、わからないですよ。誰が演出したのかわからないですけれど、でも聞くところによると、その解任された方の・・。私はファンなので、私もずっと見てきたので、その、感じるんですよね、演出にね、演出家さんを感じるんですよ。
👨今回ね、開幕部分の音楽も予定されたものが新しいものに差し替えらえたという話もあって。
👩2人解任になっていますものね。1人は辞退だったかな。音楽家と演出家がそれぞれという形でしたよね。
👨そうですね。で、音楽家さんの方、あの人は私もアウトだと思います。
👩個人の感想ですね。同意見ですが。
👨もちろん、極めて個人の感想ですけれど、あれはダメだと思います。
👩私もそう思います。
👨で、もう一人の方については、なんでダメになったのか私は事情を知らなかったので、実際にダメになった原因といわれる動画を観たのですけれど、
👩はい。
👨あれを逆に全部そういう形で止められてしまうと、人間が表現をするということが、ある意味とても窮屈になるような気がしました。
👩そうね。
👨ダメだとは思うんだけれど。
👩そうね、よいとは言えない。
👨言えない、いえないけれど。
👩だし、あの私は、音楽家さんの方はほぼというか全然存じ上げなくて。ただ、そちらの方は受け入れられなかった。なぜかっていうと、私にはそういうことをされた覚えがあるからなんだよね。
👨あっ、そうなんだ。
👩詳しいことは言わないですけれど、ああいう経験があった、された経験があると…。で、もうひとかたの方は、過去、これはちょっと尖りといってよいかわからないけれど、でも事実あるし知っている。で、そこがね、自分に近ければ近いほど、受け入れられない。それをオリンピックとかパラリンピックの演出家として受け入れることについては想いも、私は音楽家さんのことよりも少し知識がたりなかったりするから、実感としてはまだ。頭ではわかっても、実感としてはまだ薄いのだと思う。だけどそ同じことなのだなっていうことはわかる。で、思うこともあるけれどね。もともと好きで、ただ、ただね、聞いたところによるとね、みんな長く応援していればいるほどさ、過去の作品も知っているわけですよ。で、あぁそうかってなって、その、うん。フォローするわけではない、フォローはしない。思うことはある、だけど事実そういうことがあって、それは確かにいかんことだと、近しいかたというか当事者が受け入れてはいけないだろうという。解任というのもわかる。でも……ここから少し離れましょう。直接この話は、やっぱりちょっと 足らないですよね。ちょっと理解が及んでいない部分が多すぎる。
👨ひとことだけ言わせていただくのであれば、後者の方というのは、とある歴史上に絶対に人類として許されないような事件があって、20年位前のとあるコントの中で彼はその事件のまねごとをして遊ぼうって言ったのだけれど、そしてそれが今問題になっているのだけれど、でもそれだけでは切り出しになってしまうわけで、実際にはそんなことをしたら絶対放送できなくなるからやめろっていう続きがあるのですよ、二人の会話の中で。でも、その事件を遊びとないまぜにするということはモラルとしては絶対アウトだということなのね。
👩そうですね。
👨アウトなのだけれど、ただ単純にその表現がダメだというだけではわからないことがあるのですよ。
👩うん。
👨人間というものがじゃあなぜそんな歴史上の事件を起こしたかということの、その根底に触れないでただダメというのではなくて、というか、そういう遊び心があってそれが何故いけないのかということがわからないままに、ただダメで塗りつぶされてしまうと、もし世界の価値観が変わったときに、ただそのダメの殻だけが残ってしまうような恐怖があるのね。
👩うんうん、それはわかる。いつの時代だって、許されてはいけないと思っているよ。思っている。私も。でもそれが放送された事実もあったり、もちろんその知名度だったり、今関わっているのが国…世界に関わることだし、いろんな面で犯されてはいけないものだから、神聖なものであるべきだからね。うん、だからいろんなことが厳しいわけだし、厳しい中だからこそ、続けられてきているものなのかもしれないと思うから。だけどさ、変わるよね、変わるんだよ。おじさんが言うとおりさ。変わるじゃないですか、感覚ってね。今回のことに焦点をあてるのではなくて、別のことでも。これから話すのはオリンピックの話ではなく、たとえばテレビで昔は放送できていたけれど、今は放送禁止みたいなことってあるじゃないですか。それは感覚が変わったりとかいうことだと思うのですけれど、たとえば昔のテレビって普通に女性の胸が出ていたりしましたよね。
👨はい、入浴シーンなんかでもバンバンありました。
👩バンバンありましたよね。でも、今はそれは許されないと思うんですよ。実際、私も「うーん…」てなると思う。その、なんかね、もう変わっているからねぇ、感覚が。ただ…その…怖いよね。その、今回の件が許されるかっていうことでは一切ない。オリンピックのことはとりあえず、今全部離して。別の話として、演劇に関わるものとして、何かを作ることに関わるものとして。過去に作ったものが、その時には許されたものが。過去に出たある一つの舞台作品が…ある日突然、出せないものみたいになって、もしかしたら過去に犯罪を犯したことになる可能性もあるっていうことでしょ。
👨そう。というか逆もあるじゃない。昔、アメリカの演劇の世界では、人種によっては舞台に出ることができないっていうひどい時代もあって、それこそがモラルだった時代もあるわけじゃない。だけど、それを少しずつ、すこしずつみんなが頑張って、世間を染めていた価値観に抗って、本当の人間というものはなんなのかということを考えて、いまのような形になっているわけじゃない。
👩うんうん、そうですね。
👨だから、それを言い出したら、たとえばセクシャルマイノリティの人たちのことだってそうじゃない。昔には、この間見たお芝居のような女性どおしの恋愛感情などということは、もうやった時点で舞台に酒瓶がとんでくるような時代もあったのだと思うのね。アメリカなんかでは特に。
👩今はジェンダーに対してわからないことは学んだりとか、もう全然変わってますものね。世界がね。
👨そうやって世間の価値観というのはすごく変動するから、その中で最後に問われるべきは、それぞれの人の一番根底にある、なんだろ、哲学みたいなものだと思うわけですよ、作っている人とか観る人のそこのところがちゃんと明確にされないままに、ただ世間の価値観とのマッチングだけでダメっていって、この人は悪い人だって決めつけちゃえ、反省もできないみたいなことをすることには、私はある意味での怖さを感じるのね。
👩たしかに。
👨そうしてみると、今回のことも、解任になった最初の人は私のベースにある哲学的なものと照らしてもアウトだと思う。だけど、もう一人の方は、問題のパフォーマンスのなかでも、おふざけのようなかたちにはなったけれど、それはいけないことだって言っていたのでね。
👩うんうん。
👨だから振り返るにしても、そういう遊びがだめだということをその時の価値観のなかで表現をしていることも、今のモラルとか価値観の中ではダメなのだというそのことを、時代背景や芸人としての意図を明確になるようないろんな説明と共に考えるようなやり方があってもよかったのではないかとは思うわけ。
👩うんうん。
👨それは、ただあなたはもう何もできません、ほかに素晴らしい才能があろうがあなたは表現ということからは退場ですという話ではないような気がするのね。こういう時代の価値観があって、その中で考えたことが自分の中で、今の価値観のなかではこのように変わりましたということが明示されていれば、許されるというのとはちょっと違うけれど、少なくとも作り手の彼にはそれについて表現者としての思いを言う機会もあるだろうし、それについてもっとみんなが考える場が生まれることもよいことである気がしますけれどね。
👩そうですね、考える場というのは必要な気がする。ほんとに、ほんとうに言うとおりだと思う。なにも考えないまま「そう!」って言うのではそれこそ止まってしまうし、知らなければ学ぶべきだとも思う。知らない人がね、その本人じゃなくて。ただ、すごくさ、その方もわかってもいたのだなぁとも思うの、対応すごく早かったからね。文章読んで、あぁっ…てなった。私は元々ファンだからね、それをファンの欲目だってなっちゃうのはやだから、あまり演出家さんの彼に対しては言葉を出せないなと思っているのだけれど。ファンの擁護みたいになっちゃうのも、そうはしたくもないし、そういう風にも思われてほしくはないんですよね。
👨今回はオリンピックとういうことが絡んだ特別の場ではあるので、やむおえない部分もあったのかもしれないのだけれど。
👩うん、そうですね。そう思う。
👨だけど、彼の過去にあったことについての糾弾にはもっと別の怖さもあって。なぜそういう発想というかセリフを生んだかということについていえば、そこに人間の心の奥底にある闇のようなものの存在への芸人としての直感のようなものも感じるのね。描き方についての工夫や配慮は必要なのだろうけれど、その闇の表現をなすことはダメかと問われた時に、その闇の存在を描いてはいけないということは絶対ないと思っていて、そのありようやなぜ人間の中にはそういうものが巣食うのかということを表現することについて、芸術はその手段や手法を制限されるべきではないともおもう。それを教条的にタブーにしたり「ダメ」の一言で塗り潰してしまえという発想は、ある種の思考の愚鈍さや鈍感力が為せる業にも思えるし、それがもたらす表現の劣化が正しいこととされ当たり前になるというのも怖いなあと思う。
👩あぁー…
👨まあ、そうはいっても、オリンピックは始まってしまったのだけれどね。
👩うん。
👨私はそのことは良かったと思う。実をいうと、ツイッターなんかも見ていても、演劇を観られる方の中にはけっこう東京オリンピック反対の方がけっこう多くてね。
👩あはは、はい。
👨ハッシュタグで「オリンピック反対」とか「中止だ中止」とかつけて呟いている方がけっこういらっしゃるので。
👩あらあら。
👨でもなんか、そういう人たちからはぶん殴られるかもしれないけれど、昨晩の開会式とかを観ていて、200か国以上の国や地域の人々がみんなそれぞれの衣装やユニフォームで着飾って、要はその晴れやかな場に立れるそのためにたくさんの努力や研鑽を積んできた人たちばっかりじゃない。また、これだけたくさんの国や民族があって地球はまわっているんだということを考えたりもしたので。こういう時期だから反対をする人たちの気持ちももちろんわかるのだけれど、まあ、基本無観客にして実施するというのは、割と良い落としどころだったのではないかなぁという感じはしていますけれどね。
👩そうですね。
👨まあ、街のほうも・・。東京芸術劇場などでも建物に入るときに荷物検査とかがはじまりましたけれどね。
👩ああそうなんだー。私はねぇ、いつもの日常すぎて、ああそうかっ!オリンピック開会式今日か!!ってなりましたね。ただ、夜はずっとヘリコプターが飛んでましたね。それには凄く非日常を感じましたね。
👨ああ、割合と都心の方にいらしたんですね。
👩そうですね、バルバルバルバル・・って。何機も飛んでましたよ。
👨そんな中でも劇場は開いているしお芝居もやっているし。
👩うん、そうですね。
👨先日、サンモールスタジオで、アガリスクエンターティメントの『かげきはたちのいるところ』っていう公安にタイトルが伝わるといかがなものかというお芝居をみてきましたけれど。実は超良質なコメディですけれどね。
👩いいなぁーー
👨コロナで一度中止になっているのですよ、公演が。コロナで。でも、転んでもただでは起きないというか、中止になってからもそこでヘタレずに、いろいろ考えて活動を続けて。シーンをそれぞれ一話物の連作みたいにして配信を続けていたりもしたんですよね。
👩ああ!そうなんですね。
👨そうやってお客様に撒き餌をしてちゃんつなぎ止め引き寄せていたのもあるし、物語の一つずつの断片というか物語の引き出しを配信の中でつくり育てていた。そういう意味では作り手が時間をかけて練りに練った作品だったのですよ。
👩うんうん。
👨一回ずつの配信に作り込みがあって、それがどういう色になってどういう手ごたえや反応があるかというのを、作演の富坂さんはじっくりと見て試していたんだと思うのね。
👩なるほどぉ
👨だから、トータルで2時間30分休憩5分込みみたいな舞台でしたけれど、
👩あはは、それは大満足。
👨そのシーンのひとつひとつ、俳優のセリフの一個ずつがさりげなく良く磨かれていて、シーンごとの面白さとそこまでに観たものが重なっていくおもしろさにぐいぐいと惹かれていく。シーンの中でも、シーン間でも、全体としても、ここで仕掛けるとかここでぼけるみたいなことが丁寧に作り込まれていて、
👩うん。
👨一方であざとさを感じさせないセリフが人物たちの歩み方というか物語をうまく支えてくれてもいるので、その味わいが深いというか奥行きがあるというか、観客がコメディとしてもドラマとしても疲れずに舞台の品質の安定感に委ねて観ていることができるんですよ。
👩ふんふん。
👨でも、だからといって、そこに編まれる空気が丸まったり怠惰になっているわけでは決してないし、尖っているところは尖っているし、俳優の方たちの感情の出し方とかにも薄っぺらくならないとてもよい足腰があって、演劇というのはじっくり時間をかけると熟成するというか、そうして醸される面白さもあるんだなぁと思った。
👩あははは。
👨もちろん、この劇団は手練れの俳優さんばかりだから、そこまで時間をかけなければ面白くないのかというと、そうでなくてもちゃんと面白いだろうとは思うのだけれど。
👩へぇ、そうなんだ。私も気になっているんですよね。・・・でも明日まで?
👨そう、明日まで。
👩厳しい。
👨配信もあるかも。
👩配信があるとありがたいですけれどね。
👨配信というのは100%を受け取ることができなくても、とりあえず観ることはできるからね。それは、今コロナでひどいことにはなっているけれど、そのひどいことが育てた良き文化ではありますよね。
👩そうですね。そういうのがなければ今ほどには進まなかったことだろうし。特に小劇場業界ではきっと進まなかったと思う。苦手な方も多いからねぇ。
👨本当にどこもみんな・・。たとえば劇団チョコレートケーキなんかもそうだったけど、配信ということを取り込んで公演全体を考えてお金の計画とかも立てていると思うのね。
👩うんうん。それは凄く感じるな。すごくありがたい。今まではさ、舞台の配信って…出来ているところはちゃんとやっていたと思うけど。なんか配信で流すのはおまけみたいな?やっぱり生で観てもらうものだから、の意思を感じるところも多々…お見かけして。
物販以外は映像として全然…その、記録映像みたいなやつとかよくあって。
👨ただカメラを置いてみたいなね。
👩そうそうそう。すっごい遠目の定点かい!っていうね。いやいや、いいんだが。そういうのもありなのかもしれないが。でも、そういうのが配信があるからとしっかり込みで考えられると、配信で観ていてもおもしろいし、ていうことは映像になってもそれを流用できたりそれをみてもらえたりということもあるわけだし。
👨最近は、単純に撮ればいいというのとはちょっと違う工夫があるのだろうね。たとえば、スポーツを観るのでも、単純に一か所から撮るのではなくて、何か所かからのカメラで撮っているみたいな。野球なんて最たるものだよね。
👩うんうん。
👨その、球場でみる面白さに勝てるものはないといいつつも、最近って、スマホで試合の中継などを観ることができるようになったから、球場にいながら、スマホで試合の中継を観ながら生の試合をみている人っているんだよね。
👩あははは。
👨内野席にいると、ピッチャー側からの球筋とかが見えないから。なんだろうね、生のものと配信があったときに、どちらかという形ではなく合わせ技でみたいな。演劇に関して言えば、私も配信があることを知っていながら生を観てそのあと配信をみるみたいなことを何本かやったのだけれど、ただ配信を観たり生をみたりするのとはまた違う、新しい情報が来るわけですよ。
👩うんうん。
👨それっていうのは、時としてとんでもなくおもしろいことがあるのね。
👩いいよね。劇場で観て、自分一人でまたああでもないこうでもないって思ったり、落ち着いて冷静に考えられたり整理できたり。新たな発見があったりっていうのは実際に観たからこそ思えることだもの。劇場と配信、ふたつで観ることで楽しみでより深まっていると思う。
👨知っているからこその新たな深みというのは間違いなくあるのですよ。
👩そうですね。私、同じ小説を何回も読むんですけど、それに近い所もあるように思います。たとえば原作小説を読んで映画を観るとか、小説を読んでアニメを観るとか、小説を読んで舞台みるとか。正直がっかりすることもあるんだけれど…人の想像力に際限はないからね。
👨ガラガラと崩れる音がするみたいな・・。
👩想像と違うのは仕方ない部分もあるし、好みもあるからね。自由だから。
👨最初に小説を読んでから映画を観たときに、あまりにもイメージと違う俳優さんがやっていると、その時点でものすごく薄っぺらく思えることってありますものね。
👩ありますねぇ
👨私の中にいる彼や彼女を返して、みたいなことにはなりますよね。
👩うん。うんうん。
👨でもやっぱり、リアルとそういうバーチャルというのはね、なかなか難しいところで。でも、今回のコロナで、そこのところの良い付き合い方みたいなものをみんな覚えてきたような気はするんですよね。あのね、この間なんだけれど、TBSがWebのチャンネルをやっていたんですよ。YoutubeでLiveだったのだけれどアーカイブでも観ることができて、それが2時間くらいにわたって二人のレポーターがNYのダウンタウンとミッドタウンを散歩するという番組だったのね。で、私は一応マンハッタンの土地勘がそれなりにあって、今何丁目あたりを歩いているとか、何番街を渡ったとか、このまままっすぐ行けばなにがあるとかいうのがなんとなくわかるんですよね。
👩ほうほう。
👨それがコロナでどんな雰囲気になったかというのを目の当たりにすると、不思議な感慨が訪れた。なんだろ、ロンドンとかパリとかマドリッドとかもそのシリーズにあるのだけれど、NYだけ全然違う感情がやってくるの。マドリッドはへぇこんなところがあるんだみたいな感じなのだけれど、NYはそこのところに自分が過ごした記憶が交わっていくから。
👩なるほど、うんうん。色とか匂いとか温度とか、そういうものを自分の実感として持っているから。
👨そうそう。ああ、ここをまっすぐ行ったら、その先になにがあって、やがてタイムズスクエアに着くということが意識することなくわかっているわけですよ。
👩ああーー、私には東京がそうでしたね
👨東京などは最たるものなのかもしれない。
👩田舎から出てきたから。テレビでみていたところなのだけれど、出てきたらすごく実感をもって。だから、想像していたあの時と違って見える。
👨そうそう。
👩昔のアニメとかね。
👨レポータの方が歩いている後ろの方から撮って、前へすすんでいくのですけれどね。5番街を上がっていって、ほらほらもうすぐトランプタワーが見えてくるぞみたいな感じでね。
👩あははは。
👨すごく楽しいの。でも、なんだろ、けっこうそれっていうのは演劇を観た後に配信をみるというのも、どこか同じところがあるのかなぁともおもって。
👩ふんふんふん。
👨やっぱり、本を読むにしてもそうだし、単純にインプットするということと、そのなかで、なんだろカクテルと同じでね、中でそこにいろいろなものが混ざって新しいものがでてくるとかね。 
👩うんうん。
👨それが味わいになるとかね。
👩うん。
👨そういううものっていうのはやっぱり人間の頭の中でうまく、なんだろ、いい感じにレシピが決まってくるのかなという感じがするし。
👩そうですね、うんうんうん。だから知識が深まるってことは楽しいが増える!なのでしょうね。知っている事…知識もだし経験もだよね。経験は得難い、本当に得難い。
👨そうですね。
👩スタートはなんかえぇという、なんともねぇというのから始まったけれど、自分の想いでだったりとか実感みたいな話になりましたねぇ。
👨その、よく蘊蓄(うんちく)っていうじゃないですか。
👩はい。
👨で、蘊蓄(うんちく)っていうと、ちょっと知ったかぶりをしている人が偉そうに言うことだっていうイメージも最近はあるけれど。でも例えば絵を観に行ったときなどでも、その人の、その画家の人生があって、その中のどういう位置づけの中で作品が描かれたかというのを知っていたりとか。あと、実際に…それは50年後とか100年後でもかまわないけれど、たとえばアンディウォーホールのキャンベルのスープ缶を観たときに、描かれたオリジナルはこれで、それがどういう形で変化しているかみたいなことを考えられるということがあった時に、それはただ単純にその印象からまた違うそういう世界が広がっていくわけじゃない。あまり良い例じゃなかったかもしれないけれど。
👩うんうん。
👨人間の頭っていうのは、ただ単純に、その、図書館の本棚みたいに本や知識を整理していっているわけではなくて、
👩はい。
👨いろんなものを机の上に山積みにして、そのなかから引っ張り出しながら、引っ張り出しながら楽しむみたいな感じでまわっているような気がするのね。
👩うんうんうん。
👨で、それが、そうではなくて単純に読む楽しさだと飽きてもくるし、面倒臭くもなることもあるし疲れることもあるんだけれ。そうやってやっている楽しみって飽きないんですよ。
👩ああぁ、そうですね。わかるよ。
👨なんぼでも本の中にうずもれて、その中でぼそぼそぼそって過ごしていたいみたいなところってあるじゃないですか。
👩浸ったりね。
👨そうそう、浸ったりってまさにその通りですよね。
👩はい。だから、いろんなものをまだまだ観ていきたいですね。私は舞台を観る機会は正直少し減っちゃったけれど。その分、別のものだったり、本だったり、なんか自分が楽しくなるための…知識なのかなぁ、経験なのかなぁ、わからないけれどそういうのをどんどん増やしていきたいとは思いますよね。
👨だってさ、当然におじさんとおねえさんの年齢には差があるわけじゃない。
👩そうですね。
👨そうすると年齢がたくさんあるひとというのはそういうものをたくさん食べたひとだから、たくさん食べたことによる喜びもあるんだけれど、でもこれからたくさん食べて身になっていく年齢の下のかたの人の喜びというものもあるわけじゃない。
👩うん、そうだね.
👨とはいえ、まだめっちゃくちゃまだ中学生とか高校生でもないので、おねえさんは。
👩大人ですよ。
👨中学生・高校生のころって、唯々貪り喰っていたみたいな感じのところがあって、
👩でした、でした。
👨それが少しずつ、その貪り食ったものがそろそろこやしというか、こやしというと語弊があるけれど、身になりつつもっと食べたいという気持ちが衰えないという、とても幸せなお年頃じゃないですか。だからまあ、コロナがまだまだ大変かもしれないけれど、でも逆にコロナの時期だからこそ味わえるものもあるかもしれないので、
👩うんうん、そうですね。実際にいろいろ変わったけれど…。でも観ることができるようになったものが実際あるわけだからさ。
👨そうそう。新しいなにか…新たな調理方法で実際にモノを食べさせてくれるようにもなってるし。だからそういうのがもっと楽しめるといいですねっていうふうにはおもうけれどね。
👩うん、そうですね。
👨けっこういい時間になっては来ましたけれど。
👩ああ、あらほんと、そうですね。
👨最後に最近見た演劇の感想をもう一つだけ。ドリルチョコレートっていうMCRという劇団をやっている櫻井智也さんが別名義でやっている公演がこの間あって、それまでのコロナになって屈折したものが振り切れるような舞台をみたんですよ。
👩ほぅ。
👨で、ほんとうに表見上はなんかどうしようもない男が、人生をそういう風にしか生きられないタイプの男の人が、いろんな人をどんどん巻き込んで旅を続けるというような話なんだけれど、なんかね、昔より作り手の迷いがなくなっていた。
👩迷いが?
👨なんかもうこうなっちゃったのだからという開き直りというかね、世間にたいする振り切れ方があって。もうこれだけ我慢していると人間ってそうなってくるのかなっていう気もして。気持ちよく突き抜けてた。
👩観たいなぁ。すごいことになっているんだろうな。
👨ある種の歯止めというか躊躇を感じなくなっているよね。あっけんからんと凄い。
👩あはは。
👨で、桜井さんの作品があっけんからんと凄い時って、そのごつごつざらざらした濃厚な愛情のあふれ出し方がまっすぐで強烈でね、そのあからさまさが直撃で渡されるのがよくて、時代が鬱屈する中で作品を一段と変えていくのねというふうに思いました。
👩私、大変気になります。
👨さてと、ということで今日もいろいろ楽しくお話をさせていただきました。
👩はい。
👨ちょっとシビアなお話もありましたけれど。
👩そうですね。まあちょっとあまりね?あまり…私たちではまだ触れられないかなという。
👨話すのだったらまた別な形でちゃんと考えなければいけないことだとはおもうのですが。
👩まだ知識も考えも足りないとな思うので、言葉はあまりたくさんは出せませんが。みなさんも多分いろんなことを思っていらっしゃるとおもうので、いっしょに考え続けましょう。
👨そうですね。少しずつコロナワクチンの接種率も上がってきていますし、光も少しずつみえてくるかも知れないし。
👩そうですね。
👨ということで、また次回にしましょうか。
👩はい。
👨では、演劇のおじさんと
👩おねえさんでした。ありがとうございました。
👨みなさん、コロナにも暑さにも気をつけてくださいね。

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(ご参考)
① 演劇公演に関して
・アガリスクエンターテイメント 『かげきはたちのいるところ』
2021年7月16日~7月25日@サンモールスタジオ
脚本・演出 : 富坂友
出演 : 淺越岳人、伊藤圭太、榎並夕起、鹿島ゆきこ、
熊谷有芳、塩原俊之、津和野諒、前田友里子、
矢吹ジャンプ(ファルスシアター)、(以上アガリスクエンターテイメント)、
斉藤コータ(コメディユニット磯川家)
7月24日(おじさん観劇回)日替わりゲスト さいとう篤史
―大阪公演あり 2021年8月13日~15日 
@in→dependent theatre 2nd―

・ドリルチョコレート『アンジェリーナ3:49』
2021年7月14日~18日@ザ・スズナリ
脚本・演出・出演 : 櫻井智也
出演 : 櫻井智也、川久保晴、後藤飛鳥(五反田団)、三澤さき、
わたなべあきこ(劇26.25団)、三瓶大介、日栄洋祐(キリンバズウカ)、澤唯(サマカト)

② TBS NEWS 『WORLD NOW』
Live from New York
(Youtube上のアーカイブへのリンク)

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