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憩室

「ローマの休日」「ティファニーで朝食を」、あのオードリー・ヘップバーンが大腸がんだったと聞いてショックを受けたのが1993年のこと。何年かたったあと、健康診断で便潜血陽性と指摘された。オードリーと自分を重ね合わせて、すぐに大腸内視鏡検査をした。以来、定期的に診てもらっている。

憩室というがある。大腸の管筋肉の弱くなったところに内側の薄い層が突き出て小さな袋状になったもの。そこに便がたまり「休憩」して動かない、だから憩室?これは定かではない。わたしの大腸には憩室があるとの診断だった。

あっても問題はないというが、この憩室が悪さをするときがある。

大腸内視鏡検査は管内をきれいにしてからでないとできない。検査当日は朝から下剤を飲んで「すべて」出し尽くすまで何度もトイレに通う。コップ1杯の下剤を10分かけて飲む。それを5回。そのあと同量の水を5回飲む。その間、お腹がチクチクしてきたらトイレに駆け込む。水のようなきれいな便になるまで終わらない。

足りなければ、あと3回下剤と水を飲む。それでだいたい合格となるのだが、わたしの場合はそうはいかないのだ。憩室で休んでいた小マメ状の便が、きれいになった水便のなかにひとつふたつ、まぎれこむ。これだと看護師さんの合格がでない。

水便とはよく言ったもので、肛門の絞った蛇口から勢いよく水のように注ぎ出る。こうなればゴールは近い、もう下剤を飲まなくてもよいと油断したとたんに、小粒が出る。

スイカの種を口からプッと吹いて飛ばす感じ。絞った蛇口には神経が張り巡らされているのだろう。便器の中を見たら、1-2㎜φの小さいのでも「あの感じ」なのかと思うほどだ。3-5㎜ならマメ鉄砲を撃っているようなもの。

プッと吹く快感と、また出たのかという落胆。

やっと合格したのは、ヒリヒリ感が限界に近い16回めだった。下剤を飲み始めて3時間が過ぎていた。でもこれで終わりじゃない、本番があるのだ。

検査の結果、ポリープを2個切除。また来年も、憩室との時間をすごせるのを楽しみにしている。