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だだちゃ豆と「横しぐれ」

京橋からの帰り、銀座1丁目の山形アンテナショップにふらっと立ち寄ると、ありました「だだちゃ豆」。鶴岡白山、季節です。鶴岡と言えば丸谷才一さん。最近読んだ初期の「横しぐれ」、だだちゃ豆と比しては申し訳ありませんが、同様、味わい深く濃いものでした。

丸谷才一さんのエッセイは、どれも幅広い学識とオリジナルな見立てに感心し、旧かなづかい文を味わい、とてもかなわないなあと思いながらも楽しく読んできました。今回は「横しぐれ」、種田山頭火にふれた短編。小説というより推理もののようにひきこまれる秀作です。

父の昔話、四国旅行で通りすがりの乞食坊主から山頭火を推理し、その作品から「横しぐれ」をキーワードとして出会いを検証をする。国文学的手法も見事ですが、余韻をのこす結末がすばらしい。つづけて2度読み返しました。

だだちゃ豆をアンテナショップで買うのは初めてです。3軒の農家さんの豆があり、どれにするか迷います。店の奥に「朝茹で」の量り売りがあったので、100g買って味見してみた。茶豆の濃い味に余韻が残り、しかも後をひく。まるで「横しぐれ」です。

その農家さんのを買って帰り、夕方茹でて食してみた。
「ちがうなあ」

味見した「朝茹で」のとはちがう、濃さがもうひとつ。そこらの枝豆とさほどかわらない。家人が言うには、
「豆は畑で茹でろって言うじゃない、時間のせいよ」
なるほど、そうかもしれません。この豆は帰るまで半日リュックに入っていた。

丸谷さんは8月27日生まれ、誕生日ころはだだちゃ豆の最盛期。故郷から届くだだちゃ豆は大好物だったそうです。

来年は、鍋とコンロを背負って鶴岡に行きたいものです。採れたて、茹でたてだだちゃ豆を味わいながら、丸谷本を読む。もちろん、お酒は「くどき上手」です。