見出し画像

五公五民どころじゃない

20年ほど前、住んでいた街の選挙区から、20代後半の若い女性が衆院選に立候補した。政権交代を視野に入れようともくろむ野党が、それまでのトシヨリ候補に代えて表に立てた。勢いがあった。形勢不利と見た対立候補は彼女の経歴に中傷を浴びせた。「キャバ嬢のどこが悪い。立派な職業です」と応じ、当選した。見事なものだった。

以来、応援を続けてきた。数年前、市長選に鞍替えした。人気は高く、大差をつけ、市役所の玄関をくぐった。

彼女の名で「たより」が来た。市民税・県民税が決まったから納税しろとの通知書だった。

この3月で勤めていた会社を辞し、市の教育関係のアルバイトをしている。市民税などの住民税は、前年の収入をもとに翌年納めることになっている。それは、知っていた。サラリーマンの税は源泉徴収だから、高いと思っても異論をはさむわけにもいかず、差し引かれてもそこそこ手元に残るから、さほど気にしてこなかった。

昨年の1月から12月までの収入をベースに計算した税額の今年6月から翌年3月までの支払い通知だ。4月と5月分は3月の給与ですでに先どりされている。6月以降を振り込めという。

国民負担率、つまり税金と社会保障を合わせた金額の収入に占める割合は、2023年度は46.8%だ。これを、「五公五民」、江戸時代の年貢のとりたてを引き合いに出して、今の負担率を揶揄した国会議員がいた。が、わたしの場合「五公五民」どころじゃない。今のアルバイト収入を上回る金額を納めろという。

会社を辞めると翌年は税金を納めるのが大変だ、とは聞いていた。多額の納税対策のために、給与を下げて数年間会社に残り、徐々に税金を払えるようにする「顧問」さんはたくさんいる。わたしは、そんな良い待遇ではない。

マイナカードが出来てデジタル化するのだから、前年実績なんかじゃなく、即時とはいわないまでも数ヶ月遅れで対応できるはず。それなら、何とか出来る。

預金を取り崩して支払うしかないか。

ウチの街の市長も50歳前後になったけれど、あいかわらず、はきはきとしているなあ。ずっとファンだったけれど、今回は彼女からの「たより」を放り投げた。