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ミスター

今年の新語・流行語大賞は「アレ(A.R.E)」が選ばれた。38年ぶりに日本一になった阪神タイガース、日本一になっての祝賀パレードが神戸と大阪でおこなわれたその日、4位に低迷した読売ジャイアンツのファンの集いに、「ミスター」が登場した。

東京ドームで行われたファン感謝イベントに車いすに乗って現れ、選手を激励し、
「勝つ、勝つ、勝つ」
左手の拳をにぎって腕を突き上げ、監督時代のキャッチフレーズで締めた。

阿部慎之助新監督が「あのことばをいただきたい」と「ミスター」を持ち上げ、「ミスター」はそれに応えた。ただそれだけのことかもしれない。が、わたしには「もう、いいんじゃない?」としか思えなかった。

わたしも長年勤めた会社のOBである。続けている山登りや仲間内の飲み会で、現役の人といっしょになる機会がある。今の会社の業績をみていると、はがゆい思いがあるのも確かだし、株価も低迷している。「なんとかしてよ」と一株主が冗談めいて酒の席で言うことはあっても、それ以上具体的に論じることはない。

OBってそんなものじゃないのかしら。頑張ってもらうのは現役の人たち。彼らには彼らの考えと行動がある。任せるしかないのだ。応援は陰で、心の中で、と思う。

「ミスター」はどう考えているのだろうか。不自由な体をおして、少しでもジャイアンツの役にたてばと思っているにちがいない。でも、一方の、現役の阿部さんは、これを演出と割り切っているのだろうか。