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「見える数」

羊華堂をセブン&アイにした男、伊藤雅俊さんが亡くなった。北千住にあった家業の洋品店羊華堂をイトー・ヨーカ堂にし、セブンイレブン、デニーズへと拡大した。わずか2坪の店が10兆円を超える巨大流通グループになった。

ある時その感想を聞くと、「売上高が100億円くらいの時代が一番よかったね。お客様と従業員の顔もちゃんとわかったから」と商人の顔になり、相好を崩したという(日経新聞)。

比べるべくもないが、わたしもそう思う。

以前の会社は1兆円を超える売上で社員は2万人を超えた。その子会社に配属された時、上司から「100億程度の会社。歯車じゃないから、ここは仕事がみんな見えるぞ」と言われ半信半疑だった。が、そのとおりだった。仕事も、客も、それに社員も見通せた。

今の会社も同じだ。社員が150人ほど、顔と名前が一致する。

ダンバー数というのがある。イギリスの人類学者が提唱した数字で、個人がお互いに各人とどんな関係にあるかを知っている人数は150人程度だという。そのとおりだった。

セブン&アイグループ。コンビニは便利だけれど、新聞以外はほとんど何も買わない。ヨーカドーの食品売り場も好きではない。だって、売れ筋商品しか置かない、いや、鈴木敏文さんによると死に筋商品は置かない。おまけに、プライベートブランドが全面に出ている。

そう、わたしには興味が起きないのだ。AEONも同様だ。大きくなりすぎたのだろう。コスト追求は消費者の大きな訴求点ではあるが、選択肢が狭くなる。驚きや楽しさが半減するのだ。

顔が見える。商品も顧客も、それに社員も。そんな「見える数の店」には戻れないのだろうか。かなわなければ、あたらしく「出店」して欲しいものだ。