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ストレス尺度に焦点をあてたマーケティング分析

1.はじめに



現在、新型コロナウイルスのオミクロン株が世界中で猛威を振るっています。日本も1度感染拡大が収まったように見えたのも束の間、沖縄県を中心に感染者数が急増しています。私たちは様々な行動の制限を余儀なくされ、新型コロナウイルスによって発生したストレスによって、消費者は「自制」と「放縦」を繰り返しています。このように世界が大きく変化している中で私たちは新たな消費者の行動、価値観に合わせたニューノーマルのマーケティングが必要だと感じたため「ストレス尺度」に焦点をあてた研究をしようと考えました。

2.仮説

こちらは日本銀行が提供している家計の金融取引の推移を表すデータです。

スクリーンショット (37)

2019年には-3兆87億円だったものが、2020年には1兆7783億円となっており、新型コロナウイルスが流行し始めた2020年から金融資産が大きく増加し始めていることが分かります。

このグラフから新型コロナウイルスによるストレスの上昇が資産運用を促しているという仮説を立てました。

3.分析方法

分析方法はマーケティング分析コンテスト2021の際に配布された「提供データ」を「R 」、「natto」などのソフトを使用し、分析しました。

※提供データ・・・野村総合研究所が関東1都6県を対象に、男女20~59歳にアンケート調査を行ったもの。2500人が調査対象者となっている。

4.仮説の検証

スクリーンショット (2)

提供データより、資産運用、ストレス、外食が趣味であるかどうか、所得の大きさの変数を使用し、「操作変数法」という分析を行った。

外食の変数を用いる理由として、外食は新型コロナウイルスの発生によって、ほぼ「禁止」された。そのため、新型コロナウイルスの発生を原因として、外食が趣味となった人はいない。とすると、外食が趣味の人は、新型コロナウイルスの発生によってストレスが高まったと因果関係を特定化することができる。

また、所得が高い人は「ストレスがない傾向にある」し、「資産運用をしがちである」ことが分かっている。そこで、所得の要因を取り除きより正確な結果を出すために操作変数法を用いる必要がある。

スクリーンショット (3)

分析の結果、「ストレスがある人ほど資産運用をしている」ということが分かり、仮説通り、コロナによるストレスの増加は資産運用への消費を促しました。

5.効果的なマーケティングを

私たちは、上記の因果関係を用いて、コロナによってストレスが上昇したのに「資産運用への興味」で止まってしまっている人が「資産運用を行うようになるまで」を後押しするマーケティングがしたいと考えました。

「コロナによってストレスが上昇している」尚且つ「資産運用に興味を持っている人たち」をターゲットとして分析したところ、以下の特徴が分かりました。

・合理的な思考を持っている
・考えることが好き
・短期的視野を持っている=衝動的である
・失敗を恐れない

短期的な視野であるが合理的思考を持っていることから、リスク中立的に物事を考えられるので、高い平均収益率をアピールし、ハイリスクハイリターン海外株式市場の投資信託を勧めるのが効果的だと考えられます。

その他にも以下のような特徴を持っていることも分かりました。

・ブランド志向を持っている
・接触回数に影響を受けやすい

有名な企業や広告でよく見る企業の株式を例に示して、資産運用ができることをアピールすることで手が付けやすく、マーケティングとして効果的であると考えられます。

また、Web利用頻度、利用時間のデータを分析したところ、以下のような結果が出ました。

スクリーンショット (38)

Web利用頻度、利用時間帯のどちらにもこのGoogle、Yahoo!JAPANが上位3位に入っていることが分かりました。

このことからGoogle、Yahoo!JAPANにWebマーケティング広告を打ち出すのが効果的だと考えられます。

6.まとめと考察

・今回の研究で新型コロナウイルスのストレスの上昇によって資産運用の方向へ消費が流れていることを二項ロジスティックス回帰分析や操作変数法によって解明できました。また、ストレスを抱えていて尚且つ資産運用に興味がある層に対しての具体的なマーケティングの手法を明確に示すことができました。

・現在、日本の金融資産構成比率は預貯金が半分以上を占めており、投資信託、株式等の比率は海外と比較しても低いことが分かっています。今回の研究で、「ストレス上昇」という負の要因を、「投資信託や株式などで資産を増やす」というプラスの方向に持っていくことができるようになりました。また、資産運用の促進は老後2000万問題などの日本が抱える社会問題を解決することにつながります。長期的に見たときに将来に対して不安を持つ人たちのストレス軽減などの社会的に意義のある役割を果たすことができると考えられます。


6.おわりに

・「なぜ資産運用が促進されたのか」に関して、ストレス上昇層がリスク愛好的になったことが考えられる。しかし、その点に関して詳しく考察することができなかった。

・今回の研究では「資産運用に興味があるけど資産運用をしない人」に絞って分析を行った。「資産運用に興味も持たない人」の特徴まで調べることができていれば、もっと幅広い層にマーケティングができたと考えられる。




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