#221『悪魔を出し抜け!』ナポレオン・ヒル

 自己啓発の本である。これはかなりためになるというか、単なる情報・知識を超えて、何か深いところが揺さぶり起こされる、そんな作用を持っている。成功者は必ず失敗をバネにして新たな、よりレベルの高い生き方を発見している。「成功者=大金持ち」に断定されているところは文化的価値観の差を感じるが、広く言えば「人生に対して無気力・受動的にならず、自分の意志と積極的働きかけによって望む成果を得る能力を持っている」という意味での成功者である。
 で、その方法なのだが、本書では著者が内的対話によって悪魔から「いかにして人間を無気力、受動的、隷属的状況に押し留めるか」という技法を聞き出す。したがって、その手法の裏をかけば人間は必ず「成功者」になれる、というもので、この悪魔という登場人物の存在感によって、本書は非常に力強い説得力を持つことに成功している。
 要点を簡単に述べると
・人間には積極的/能動的、善/悪、利他的/利己的のいずれをも選択する自由がある。
・その選択能力は一回ごとの考えではなく「習慣」によってほぼ固定されている。
・したがって良い習慣を固定化することに成功すれば、思いのままの成果を人生から取り出すことができる。
・良い習慣の固定化を妨げるのは、恐怖、悲嘆、恨み、怒り、諦めなどの「否定的感情」。常に肯定的意志を維持するように努めることが不可欠。

 だいたいこういうことだ。言われていることはだいたい聞いたことがあるような話なのだが、何か重さが違うのである。やはり悪魔の存在が放つ魔力だろう。今の私には実にドンピシャであった。
 シャロンという訳の分からんおばさんが二ページに一回、ひどい時には一ページに二回という高頻度で口を挟んでくるので(しかもほぼ例外なく要らない内容)、とにかくそこを飛ばして読むことが、混乱せずに本書を読み通すコツだろう。一体、本当に何だったのだろうあのおばさんは…
 
 「成功哲学」と構えずとも、人生の諸問題や現状から脱したい人、自分を向上進化させたい人にはとても有益な本だと思う。

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