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#165『中国武将列伝』守屋洋

 項羽から左宗棠まで様々な時代の武将を10人取り上げている。項羽と劉邦の時代から、項羽、張良、韓進、あとは三国志から関羽。他、班超、岳飛、左宗棠など。知らない人が多かった。やはりいくらかでも知っている部分がある人物に関しては面白い。しかし全然知らない人の所は入り込めなかった。仕方がないが。それでもこんな豪傑や知将、また人間の出来た人がいたのだなあと勉強になった。
 張良に特に感じるものがあった。私の人生にも張良が必要である。そんなことをA子さんに話したら、いや河邊さんが張良も兼任するしかないでしょう、と。そんな芸当は出来そうにもないが、A子さんが断固として言う時は結構ハズレがない。心して挑むべきか。
 張良は軍師である。軍師というのは(参謀でも良い)一体何かと言うと「情を排して理で判断する役割」である。だから「無理だろう」「可哀そう」などの主君の感情を退けて「いや、殿、今はこうすべき時です」という存在である。どうやらこういう冷たい知性というものは基本的に外付けなのである。リーダーは温情の人でなければ人はついてこない。しかし温情では必ず道を誤る。だから軍師が必要なのである。軍師は自分がその役割であることを理解して、あえて厳しい、または非人間的なことや、主君の基本的性向に背くことも言わねばならない。この点、張良はとんでもない才能の持ち主でほとんどコンピューターであった。
 今(というかずっとそうだが)、自分にとって本当のふさわしい生き方、仕事の仕方をしたいと思っている。まだ出会わぬ私の張良から見たら「殿、全然関係ないことをやっていますぞ」という所だと思う。張良を受け入れる謙虚さと度量を確保するから、どうにか私の張良に出会いたいものである。

 著者の文章は気品がありテンポも良く、とても良い。支那の王朝は足の引っ張り合いの地獄である。どんな名将も必ずこの憂き目を見る。魔界であるとつくづく思った。そんな中にもこれはという人物は枯れることなく生まれてくるのだから、人間精神というものは本当に不屈であると感じた。


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