#35『嫉妬の世界史』山内昌之
まあ、意味のない本である。嫉妬にまつわる世界史のエピソードを20くらい拾い上げて簡潔に紹介するというもの。短いのもあれば長いのもあり、著者の気分でその辺は適当に選択されている。読みながらの、そして読み終わっての感想は「へえ、色々よくご存じなんですね」くらいのもので、だから何だという感じ。物知りのおじさんの蘊蓄をずっと聞いているようなものである。
この種の本は新書系には多い気がするが、やっぱり価値がないと思う。内容が薄い、話が飛ぶ、それで結局何を伝えたいのかが分からない、要するに「思い」がないのである。普通の人より物を知っている人が、知っていることについて書いただけの本。あんまりこういう本を出す価値はないと思うんだけどね。この本に書いてある程度の内容は、実のある本をそれなりに読んで行けば自然と手に入る程度のもので、頂けないことには著者独自の見解や価値観がない。そこが何よりの問題だと思う。この本には情報があるが、その情報を取捨選別し、序列をつけ、ある方向性を示す人格の印がないのである。そういう点、やはり故渡部昇一氏などは全然、格が違う。知ることによって自分の世界を見る目も改められるのである。
読み始めたから勿体ないので、少しは何か後学に役立つかと思って一応最後までは読んだ。東条英機と石原莞爾について、そして保科正之について、この辺りに関してだけ、足りない知識の穴を埋めるのに役立った。著者はよくお名前を見る方だが、もう読むことはないだろう。
最短の感想文、おしまい。