【VALORANT考察】混合戦略の重要性

混合戦略とは

混合戦略という言葉は、主にテキサスホールデムポーカーで使われています。混合戦略とは、
「同じ状況において行動を一定させない戦略」
のことをいいます。

VALORANTでよく言われていること

VALORANTでは、よく「毎ラウンド同じ場所にいるな」「毎ラウンド同じ作戦をするな」と言われます。

なぜですか?

と言われたときに、どう答えるでしょうか。
・「相手に読まれるから」
・「相手の警戒心が強くなるから」

などといった回答があるでしょう。

この回答について、非常にざっくりとした仮定ではありますが、数学的に考えたいと思います。といっても、難しい数学は使いません。せいぜい中学卒業レベルあれば大丈夫だと思います。

戦略を一定させないということ

これはたとえば、
「Aという状況ではこうするのが最善」
「Bという状況ではこうするのが最善」
というように、考えられる各状況において最適な戦略が一つに定まるのではなく、
「Aという状況では3回に1回の割合で作戦A1をとり、3回に2回の割合で作戦A2をとるのが最善」
「Bという状況では5回に2回の割合で作戦B1をとり、5回に2回の割合で作戦B2をとり、5回に1回の割合で作戦B3を取るのが最善」

というような、同じ状況でも作戦を分散することをいいます。

なぜこのような考え方が正当化されるかを考えます。

例:アセント Aメインでの攻防

アセントのAメインでの攻防を例に挙げます。
非常にざっくりとした分析のため、攻め側はAメイン5人でのセットを作戦にしていると仮定します。

仮定

ディフェンダー側は退けないキャラ(ジェット、チェンバー以外)でAメインを1人で詰めるとします。
このとき、攻め側はメインの手前からスキルを何個か入れれば相手は死ぬとします。

このとき、攻め側は人数有利を作ることができます。
この時の攻め側の勝率を70%とします。

ディフェンダー側がAメインを詰めていなかったとき、攻め側がメインに入れたスキルは空振りになります。
攻め側としては、サイトに入るためのスキルが減ります。
この時の攻め側の勝率を40%とします。

逆に、何もスキルを入れずに1ピック以上を取られたときの勝率は30%、スキルを入れず、Aメインに誰もいなかった場合、Aサイトに入るスキルの量が増えるため、勝ちやすくなり、この時の勝率を60%とします。

このときの攻め側の戦略を考えます。

攻め側が毎ラウンド、Aメインにスキルを入れる場合

このとき、守り側がAメインに一人配置していれば、仮定より勝率は70%となります。
守り側がAメインに誰も配置していなければ、仮定より勝率は40%となります。

攻め側が毎ラウンド、Aメインにスキルを入れない場合

守り側がAメインに一人配置していれば勝率は30%、Aメインに配置していなければ勝率は60%となります。

図にすると以下のようになります。

攻め側の戦略を考えます。Aメインにスキルを入れる割合をx, 入れない割合を1-xとします。

同様に、守り側がAメインに1人配置している割合をy, 誰も配置していない割合を1-yとします(今回はこの二つしか考えません)。

このとき、攻め側のラウンド取得期待値を考えます。

Aメイン配置/スキルありのBOXにおける確率は、
xy*0.7

残りの場所も考えて合計すると、ラウンド取得期待値(=取得確率)は、

0.7xy + 0.3(1-x)y + 0.4x(1-y) + 0.6(1-x)(1-y) ・・・⓪

となります。この値をf(x, y)とします。

yを定数として、xに関してfを整理すると、

f = 0.2(3y-1)x - 0.3y + 0.6

がわかります。
y >= 1/3 のとき、fは単調増加なので、x=1で最大値
f(1, y) = 0.3y + 0.4 ・・・➀

をとります。y < 1/3のとき、fは単調減少なので、x=0で最小値
f(0, y) = -0.3y + 0.6 ・・・②

をとります。

守り側としては、攻め側の勝率を最小値にしたいです。そのため、max(f)が最小になるようなyを考えます。つまり、

g(y) = 0.3y +0.4 (1/3 <= y <= 1)
           -0.3y + 0.6 (0 <= y <= 1/3)

の最小値を考えます。グラフを書けば明らかで、y=1/3で最小値0.5をとります。
       

数式を読み解く

x, y はそれぞれ、攻め側、守り側がある戦略をとる割合を表していました。

➀の場合を考えます。

y > 1/3、つまり、守り側が1/3より大きい割合でAメインに1人配置する場合、攻め側はx = 1、すなわち「常にAメインにスキルを入れる」ことで勝率が最大化します。
同様に、y < 1/3、つまり、守り側が1/3より小さい割合でAメインに1人配置する場合、攻め側はx = 0、すなわち「常にAメインにスキルを入れない」ことで勝率が最大化します。

しかし、y = 1/3、つまり、守り側がちょうど1/3の確率でAメインに1人配置し、2/3の確率でAメインを開ける場合、攻め側の勝率は最小値0.5をとります。

攻め側の戦略を考える

では、このときの攻め側の最適な戦略はどうなるでしょうか。今までの話が分かればこれは理解でき、

x = 1/2

となります。

まとめ

守り側が常に同じ作戦をとっている場合(y = 0やy = 1の場合)、攻め側は常にカウンターとなる作戦をとることで、攻め側のラウンド取得期待値は最大となります。このとき、攻め側は常に同じ作戦をとることが正当化されますし、その時のラウンド取得期待値は0.5を超えます。

しかし、守り側が適切な割合で戦略をランダムに分散している場合、攻め側はどんな戦略を取ってもラウンド取得期待値が変わらない、いわゆる「スキのない」戦略となります。
逆に攻め側も適切な割合でランダムな戦略を取れば、守り側にとってスキのない戦略となります。


混合戦略の強みを数式を用いて分析してみました。多少仮定が強引ですが、理解の一助にはなると思います。


おまけ

じゃんけんにおける「最もスキのない戦略」は
「グー、チョキ、パーをそれぞれ1/3ずつ出す戦略」
であり、たとえば相手のグーの割合が1/3を超えているとき、こちら側はパーを出し続けることで勝率が最大になります。

グリコゲームにおいても、この「最もスキのない戦略」が存在し、
グー2/5、チョキ2/5、パー1/5

だそうです。これであなたは今後、グリコゲーム最強の称号を欲しいままにするでしょう。

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