夢心地

0.
夢とは籠ではなく迷路であり、収容ではなく逃避なのだ


1.

 ダリの夢を見た。……ん? ダリとは誰だ? ははは。まるでダジャレだ。
 さて、日課の見回りにでも出ようか。
 目を覚ました私は朝の日課をこなすべく、自室を出た。私の自室がスタート地点であり、アーミヤの待つ制御中枢がゴールだ。
 廊下を歩いているとフェンと出会った。行動予備隊A1の隊長でクランタの少女だ。
「やあ、フェン。君やクルースがいないと古城探索は始まらないからね。よろしく頼むよ」
 クランタ特有の素早い足を使って先鋒を買って出て、隊の指揮をこなす。まだまだ荒削りだが、ドーベルマンの指導で毎日腕を上げている。成長すればロドスのオペレーターを牽引するオペレーターになれるだろう。
 と、噂をすればドーベルマンだ。
「ドーベルマン。これから訓練か? たまには程々にしてあげてくれよ。任務の時にフラフラじゃ意味がないからな」
 元ボリバルの軍人のドーベルマン。私をチェルノボーグから救出してくれた隊にもいた。鞭と彼女の指導ほどブレのないものはないだろう。
「おや、プラチナか。ん? 遊園地? あぁ、行きたいのは山々だが、仕事が中々減らなくてな。また今度行こう」
 元無冑盟のプラチナ。弓の使い手で鋭く遠くまで届く矢を放ってくれる。中々重用する狙撃オペレーターだ。遊園地に一緒に行ってやれないのは反省している。
 そうこうしているうちにエンジニア部の工房まで来た。この時間は購買部にいるはずのクロージャがいた。血に執着するブラッドブルードにしては珍しく、血より油が好きなようだ。根っからのエンジニア気質らしい。
「珍しいなクロージャ。おや、ケーちゃんもいるのか」
 ザ・野生児のケオベ。バルカンに懐いており、よく食堂と工房で見かける。彼女のアーツにはよく助けられた。
「……ケルシー。いや、ケーちゃんとは君の事ではないよ」
 医療事業部のリーダーケルシー。私が記憶喪失になる前からの知り合いらしい。だが、初対面ではかなり辛辣だったのを覚えている。
 とはいえ、最近はなぜか優しい。私からすれば都合がいいのだが、なぜだか居心地が悪い。
「おはよう。アーミヤ。わざわざ迎えに来てくれたのか」
 ロドスのCEOだ。若干14歳のアーミヤがこの組織のリーダーというのも荷が重すぎる。その荷を軽くしてやるのが、私とケルシーの役目だ。
 もう少しで日課のゴールだ。
 しかし、誰かにここしばらく会っていない気がする。だれだかはわからないのだが……なんだか心に穴が空いたかのようだ。
 まあ、いいか。
 さて、今日も仕事を始めよう。


2.
「ドクター、眠ってるの? 次はいつ帰ってくるのかしら・・・・・・・・・・・・・
 彼女の皮を被った『それ』は、腐り折れた剣を抱える人間に向かって慈しむような目を向けていた。


・あとがき
 最初のダリはサルバドール・ダリです。騙し絵などで有名な人ですね。
ドクターの見る夢は騙し絵のようなものであり、0の通り逃避の迷路なのです。
 それ以上の意味はありませんが、読者によっては他の意味に捉えられるかもしれません。
 夢は自分に都合がいいものですから、見ている人はさぞかし心地いいでしょう。
 まあ、不幸なことに、夢は眠りが浅い時に見るものなので、彼、あるいは彼女はもうすぐ目が覚めてしまいます。
 目が覚めれば、穴が開くほど心を占める「彼女」がいるのに『それ』は「彼女」ではないのですから。

私は前衛スカジの方が圧倒的に好きなのですが、話を書く時は濁心ちゃんの方が書きやすいし、好きなのかもしれません。
 

最後にちょっとした考察をば。
濁心スカジの衣装が歌姫衣装なのは、最初の濁心ルート分岐が、ファーストトーカーの真実の告白だから、だと思います。
グレイディーアがメンタルケアしたことによって、なんとか持ちこたえましたが。
もし、グレイディーアの精神分析ロールが失敗したら?
もし、スカジの精神対抗ロールが失敗したら?
内側からじわじわとイシャマーラに侵蝕されるのではないでしょうか。
そして、その時点で濁心となったとき、着ている服が歌姫衣装ということになりますね。

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