昔、メイドカフェに行った話


私は芸人ラジオリスナーである。
中でもハライチのターン!を楽しみにしていて、お二人のそれぞれのフリートークをタイムフリーで聞くのが毎週金曜日のルーティーンになっている。

先日、岩井氏が初めてメイドカフェを訪れた話をしていた。初めてのご主人様体験にドギマギする岩井氏を想像しフフフ…と笑っていたが、ふと、自分もメイドカフェに行ったことがあることを思い出した。
岩井氏に比べれば本当に大したことない話なのだが、この貴重な体験がしばらく脳内から消え去っていたことがショックであったため、ここに書き記しておこうと思う。


10数年前のことになるが、その日私たち2人は秋葉原にいた。
というのも私たちは同じ職場で働く同期であり、初めてのボーナスを握りしめて家電を買いに来ていたのだ。
家電といえば秋葉原でしょという浅はかな考えと、今流行りのメイドカフェに行ってみたいという二つの希望を叶えるためはるばる総武線に乗ってやってきたのだ。
同期とはもちろん職場で会うのが初めてであったが、ちょっとオタク気質があったり、可愛い女の子が好きという点が似ていて一緒にいて居心地が良かった。

まずは電気屋へ。軽く値段交渉などもしつつ、無事各々目当ての家電を購入した。秋葉原で購入したというだけでなんだか得した気分になった。

そしていよいよメイドカフェへ。
当時はメイドカフェが注目され盛り上がりはじめてきたところだった。初体験である私たちはまずはよくテレビでも取り上げられる大手のお店に行きたいと思い、@home cafe本店へ向かった。

そこは狭いビルの上階にあり、エレベーターに乗る必要があった。
ワクワクしながらエレベーターに乗り、目当ての階でドアが開くとそこは行列になっていて、店のドアの前から始まり階段の下まで客が連なっていた。
何組並んでいたは覚えていないが、軽く30分は待つであろう行列であった。
まさかそこまで行列ができているとは思ってもいなかったため軽く怯んでしまったが、ここまできて諦めるわけにもいかない。私たちはその列に加わることにした。

ドキドキしつつも他愛もない会話をしていると、しばらくして後ろに並んでいた男性二人組に突然話しかけられた。
「君たち、メイド喫茶は初めてナリか?!」

?!?!?!
頭の中が一気にコロ助でいっぱいになる。

突然のことで返答に迷ってしまったが、どうやら彼らに悪気は無さそうだ。ここで無視するのは人として違うかもしれない。そう思い
「…初めてです…」
と答えた。すると男性は

「僕たちも初めてナリ〜〜〜!!!」
とさらにテンションを上げてきた。

彼らは本当に心から楽しそうで、まさにこのドキドキを他の誰かと共有したいという感じだ。
今だったら「そうナリか!緊張するナリね!!どこからきたナリか?!」などと答えるのに難しくないだろう。
しかしまだハタチそこそこの私たちにはどのように対処すべきか全くわからなかった。
突然コロ助語で話しかけられたことへの焦り、戸惑い、そして自分たちがいかに軽い気持ちでメイドカフェへ行こうとしていたかを痛感させられてしまったのだ。

@home cafeと書かれたドアが見えてきていたので私たちは迷ったが、結局、いたたまれなくなり列を抜けることにした。
彼らは順番が一つ繰り上がった。

当時は順番を繰り上げるための作戦だったのか…?と思ったりもしたが、今思い返しても彼らは純粋に楽しみを分かち合いたいだけだったように思う。

そして私たちは謎の敗北感に打ちひしがれながら、普通にプリクラを撮り、電気屋前で営業をしていたトータルテンボスのトークを見て帰宅した。

今はコロナ禍ということもありメイドカフェに行くことはすぐには叶わないが、また元同僚と一緒にリベンジを果たしたいと思う。
そして次こそコロ助二人組との会話に花を咲かせるのだ。メイドさんたちが私たちの娘と同世代になる前に。

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