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器の小さい、権威あるオトナ

社会人を始めて10数年になる。

大学院修了後、建築設計事務所という特殊な職場で働いてきた。

しかも単一の事務所ではなく、いくつかの事務所を経験した。

で今は起業前に、社会と学校との間にあるような学校に通ってる。


社会人を始めて10数年、いろんなことが分かってきた。

一つ最近実感するのが、器の小さいオトナって結構多いということ。

それも権威あるオトナに限って、そういう人が多いということだ。


1. 裸の王様

誰しもが知ってる「裸の王様」という物語。

1873年にアンデルセンが書いた物語だが、まさに現代社会の器の小さいオトナの実話といっても過言では無い。

自分がそれを感じたのは、学校を卒業して一つ目に入った設計事務所でのこと。設計事務所は、建築家をボスとして数名のスタッフが働く場所。

設計事務所はよく、新しい仕事を取るためにプロポーザルというものに応募する。公共施設の新築などで設計者の公募があり、そこに設計案を提示して選定された事務所のみがその仕事にありつける。

だから、プロポーザルが取れるか取れないかは、事務所にとってはもちろんのこと、経験と実績を積みたいスタッフにとっても死活問題なのだ。

いろいろな案を考えて試し、それをボスである建築家に見せ、ボスである建築家が案を決める。

その際、無能なボスに限って、ブレーンストーミングとして(無駄な)案がたくさん出てくることをスタッフに求めてくる。

彼の何が無能かといえば、結局彼の頭に腹案があってそれに固執しており、こちらがブレーンストーミングで何を出そうが結論は変わらないのだ。けれど毎回毎回儀式のようにそれをやらせ、スタッフのダメさを指摘し、一つの案を上から押し付けるのである。

この方法、スタッフが無能かつ従順であればあるほど効果的なのだ。

あたかもそれは「バカものには見えない」服を着ている体の裸の王様と、それを何も考えずに褒め称える家来たちである。

問題は、スタッフがそれなりに有能かつ正直である場合。

ブレーンストーミングで、彼の腹案より優れた案(より人々にとって使いやすく、交流が生み出されやすいもの)が出され、それだけでなく彼が腹案に固執した場合のデメリットが客観的に明らかになったとしよう。

「本当に良いものを作ってプロポーザルを取る」観点からすれば、有能なボスなら腹案を捨て、そこにアジャストすることが得策と考えるだろう。

でもそうできるボスって案外少ない。

大抵は、前のパターンと同じようにスタッフのダメさを指摘し、自分の腹案を押し付け、さらに今度は自分の腹案のデメリットを消す方法をスタッフに考えさせるのである。結局そのことで苦労が増し、スタッフ全員が徹夜となり、何とか提出はしたものの、そのデメリットが響いたのかプロポーザルは選外。

でここでボスは一言、「プロポーザルは水物だから。」

まさにはだかの王様。

じゃあ、もし「王様は裸だ」という子供が現れたらどうなるのか。

はだかの王様の物語にはそのあとのことは出てこない。

でも答えは簡単。王様はその子供を斬り殺す。

実は大学で「自分の考えをきちっとわかりやすく伝える」訓練を積まされてきた若い頃の自分は、実際にそれを実行してしまったのだ。

結果、自分は変な理由をいっぱい並べられて、その事務所をクビになったのだった(笑)。仕事に関しては全く問題なく、むしろ色々な人から感謝されるくらいだったのにね(笑)。

その後は流石に自分も学習した。心の底では全くそう思ってなくても、ボスの案を「いいね」と言い、プロポーザルに通ろうと通るまいとボスが良い気分で提出できるように淡々と最小労力でこなすようになった。でその方が円滑に行くことが確認できたので、もうスタッフでいるのはいいやと思ったのだった。(もちろん、事務所のシステムとしては最悪である。)


2. 虚栄心と年齢

「歳をとると人間丸くなる」

という言葉がある。でも世の中そうでないことが往往にしてある。

多分、いろいろなことを自分の力で成し遂げ、やり遂げてきたような人なら、歳をとって丸くなるのだろう。

「歳をとる=いろいろなことを自分で成し遂げ、いろいろな経験をしている」

こんな固定観念が、虚栄心人間、器の小さい人間を作り出しているのかもしれない。

そう、中には歳をとるだけとって、いろいろなことを自分の力で成し遂げてこれなかったシニアもいる。(しかし年功序列システムだったり、彼自身の責任回避のうまさだったりが、彼に権威だけを授けてしまう場合も多い。)

彼らは、実は内心劣等感だらけなのではないか。

実際のところ、権威に見合った能力を持っていないシニアも多いのだが、彼らにとって絶望的なのは、彼らがどれだけ不足を感じても、それを満たすための成長に残された時間や気力が圧倒的に足りないことだ。

だから、彼らは権威にしがみつき、やり方をまったく変えようとしない。

器の小さい大人はこうして誕生する。

逆に、常に成長をしつづけようとする大人はステキだし、能力があるのだと思う。


まとめ 
1. 無能な上司には無能な部下がよく似合う 
2.時間と妥協と能力のなさが虚栄心人間を作り出す