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初めて書く物語④

最終幕

オリヴァーがお城を去ってから1ヶ月ほど経ちました。
エリーゼはお城の庭にいました。
澄み切った青空がひろがり
庭の薔薇の新芽に朝露が光ってます。
(もう、春になるのね。)

散歩をしている時も本を読んでいる時も、、いつも心の中にオリヴァーがいましたが、
もう泣く事はありませんでした。

次の日の朝
いつものようにピアノを弾いていると、隣の部屋からエリーゼのピアノに合わせてバイオリンの音が聞こえてきました。

エリーゼは
(この音はもしかして!?)と走り出します。

ドアを開けると、
そこには、ずっと会いたかったオリヴァーが優しい眼差しでこちらをみています。

夢のような光景に
エリーゼはか細い声で
「戻ってきてくれたの?」とたずねると
オリヴァーは
「はい。縁談を断って参りました。私は、エリーゼ様の側にいる事が、いつしか私の全てになっていましたから。」と
エリーゼは涙を堪えて
「私は、あなたが、、」と言いかけると
「エリーゼ様をお慕いしております。」とオリヴァー。
「•••••っ!」
「女性が先に言うものではありませんよ。エリーゼ様。
」と言いながらオリヴァーの優しい指がエリーゼの涙を拭います。

ずっと聞きたかった言葉に、
言葉にならない。。。

見つめ合うと
オリヴァーの瞳に自分が映っている事に愛しさが込み上げ更に涙が溢れてきます。

「オリヴァー、私と生きてくださる? 私を愛してくださる?もう、どこにも行かないと言って、、」とエリーゼの声が震えます。

「もちろんでございます。もう。あなた様から離れたりはいたしません」とオリヴァー。
視線が重なり、想いも重なり、強く抱きしめ合いました。

(お父様とお母様にきちんとお話しをしなくては)とエリーゼは涙を拭き
謁見(えっけん)の間に向かいました。

「お父様、エリーゼです」と言うとウォルターがドアを開けてくれました。

2人でゆっくりと王様とお妃様の前へ歩いて行くと王様がいいました。

「2人を待っていたよ。
オリヴァー、君のことを調べさせてもらった。本当の事をエリーゼに話しても良いかい?」

「はい。王様。」

(本当の事ってなに??)
エリーゼは不安そうな顔をしています。

王様の話は、
オリヴァーのお母様、ジョーンズ伯爵夫人は隣りの国
王の妹であり、オリヴァーは
王様の甥だということでした。

エリーゼは
「お父様!私はオリヴァーとずっと一緒にいたいの。
お城にお迎えしても良いの!?」と興奮気味にいいます。

「もちろんだ、代々親しくしている隣りの国王の甥だったとはな。縁談の事は、ロレーヌ公爵も引き下がってくれたよ。
オリヴァー。エリーゼの事、よろしく頼んだよ。君たちの結婚式の準備を進めようと思うが、。」
と王様が言いました。

「お父様!ありがとうございます!」と、エリーゼの顔が陽だまりに咲く花の様にパッと明るくなり、喜びに満ちています。
オリヴァーも
「よろしくお願いします。王様。」と一礼をし、エリーゼと見つめ合いました。

お妃様は瞳を潤ませて
「エリーゼ。良かったわね。」と祝福をしました。

その日の午後
2人はアポロンに乗って森を抜けた先の丘の上にいました。

春を告げるクロウタドリの声が響きわたり、風がふわりとエリーゼの髪とオリヴァーのコートを静かに揺らしています。

繋がれた手からオリヴァーの体温が伝わってきて、胸がドキドキしすぎて、どうして良いか分からずオリヴァーの顔を見上げると
風で乱れた髪を、そっと耳にかけてくれました。

エリーゼは
「いつから私の気持ちに気づいていたの?」と聞くと
「一緒に演奏を始めた頃でしょうか、あなた様は自覚していないかもしれませんが、素直でお気持ちが顔に出やすいですよ。特に、私のカーディガンを着た時の表情は忘れられません。」とオリヴァーがクスッと笑いました。

「まぁ!意地悪な人!」とエリーゼも笑いました。

その後オリヴァーは
「あなた様のこの笑顔を一生掛けてお守り致します。」とエリーゼを抱きしめました。
エリーゼは
「あなたほど、私に向き合ってくれた人はいなかったわ。私は、あなたの優しさに心を奪われたの。」と言うと、オリヴァーは
更にぎゅっと、腕に強い力を込めました。

お城へ戻るため
再び、アポロンに乗りオリヴァーの胸の中で服をぎゅっと掴むと、それを合図に走りだしました。腕の中から見上げると一瞬だけ視線が重なり、幸せが込み上げます。蹄の音に混ざってオリヴァーの胸の鼓動が聞こえてきました。
(•••••とても落ち着くわ)
子供の頃、アーサーに抱かれてアポロンに乗っていた事を思い出し
(お兄様。私は、今とても幸せよ。)と心の中で呟きながら眠ってしまいました。

オリヴァーは
幸せそうなエリーゼの寝顔を見て、肩を抱き寄せ、そっと自分の胸に抱え直し、速度を緩め、お城に戻って行きました。

オリヴァーはエリーゼをベッドに寝かし、美しい寝顔を見つめていました。

(ん、、誰かが私の髪をなでている?)エリーゼは
うっすら目を開けると
オリヴァーの顔がみえました。
「お目覚めですか?」と柔らかい声が聞こえて
ぼぅっと彼をみあげると
「どうされました?気分でも悪いですか?」とさらに聞かれました。

(まだ夢をみているみたい、、
ふわふわと海の中で揺れるみたいに、現実との境を失ってしまいそう)と思い
「オリヴァーがここにいる事が信じられなくて、、」とささやくと、

「それは、こちらの台詞ですよ。私もこうしてあなた様の側に居られることが夢のようです。」と
オリヴァーはそう言いながら、どこまでも優しく髪を撫でてくれました。

(なんて幸せなの、二度と会えないと思っていた人が側にいる。これからもずっと一緒にいられるのね。これ以上の幸せは、何処を探しても見つからないわ。)と思うと涙が溢れてきました。



窓の外には宝石箱をひっくり返したような星空がひろがっていました。

































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