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実務実習中断により在宅実習へ

COVID-19の感染が拡がるなか、国の緊急事態宣言が出されたことにより、4月中旬から5月の実務実習終了まで一時中断、在宅実習という形となっていました。

戸惑いはありましたが、こういう時でないとできない貴重な体験と前向きにとらえて臨みました。

今はSNSもあり、Lineを使って連絡もとれますし、最近オンラインでよく使われているZoomもツールのひとつとして活用しました。

実際に数日行ってみて

とにかく手探りな状態ですが、

朝一番 Lineで資料のやりとりをして、Zoomで課題を伝える
    ↓
・Lineはパソコンで見れる状態にしておいて、疑問点があれば随時Lineで連絡をもらう。
・記載が必要な資料があれば、Onedriveに保存したファイルの共有機能を用いて共有先のリンクを添付してLineで送りその中に記載してもらう。
・実習システムの中の日誌も活用してもらって、勉強した内容、勉強しての自分の考えなどを日誌に記載しておいてもらう
    ↓
夕方に資料の内容を確認した後、Zoomで会話しながら、その中で出てきた疑問に答えていく
    ↓
その後、翌日の課題を考えていく(指導薬剤師が)

という感じで行いました。

実習の雰囲気というのも大切にしたいと思うので、薬局内の様子や職員の様子もipad移動のZoomでみせたりもして、あとは、今新型コロナウイルスで薬局内の状況も刻一刻と変わっていくので、その変更点などもZoomでみせながら説明しました。

行ってもらった課題をいくつか

〇 粉砕の可否について
〇 保険薬局でみかける感染症について
〇 インシデントレポートの記載
〇 トレーシングレポートの記載
〇 文献検索をやってみる
〇 医薬品安全性情報報告書を書いてみる
〇 ポリファーマシーについて考えてもらう
〇 疑義照会事例について考える
〇 アビガン(ファビピラビル)について考える

〇 粉砕可否について

Q1 どのような患者に錠剤およびカプセル剤の粉砕調剤が必要になるか?Q2 以下の薬は粉砕調剤が可能か?インタビューフォームを確認しながらその理由まで考えてください。また、対処法や代替薬や代替案があればそれも考えてください。
・ベルソムラ錠
・アスパラカリウム錠
・ラベプラゾール錠
・ニフェジピンCR錠
・ミコンビAP(テルミサルタン、ヒドロクロロチアジド)
・アレンドロン酸錠35mg
・アルファロールカプセル
・イムラン錠

こんな内容で、Q1は少し考える問題、Q2は調べる問題という感じです。
幸いインタビューフォームはオンラインで検索が可能(PMDA:https://www.info.pmda.go.jp/psearch/html/menu_tenpu_base.html)となっているため調べてもらうことが可能でした。

調べて回答してくれた内容がこちら

・ベルソムラ錠→不可 無包装状態での安定性試験において、光、湿度の影響を受けやすいことが確認されており、両面アルミ包装としている。ゾルピデムを粉砕orODへの変更をする。
・アスパラカリウム錠→粉砕可能(しかし吸湿性が極めて高いため服用直前に粉砕することが望ましい) グルコン酸K細粒へ変更する。
・ラベプラゾール錠→ 粉砕不可。腸溶性のコーティングを施した錠剤であり、粉砕後に投与すると胃 酸で失活するため。ランソプラゾールOD錠へ変更する。
・ニフェジピンCR錠→主薬の放出調節が破壊して持続性を失う。吸収が増大し血圧低下の恐れあり。セパミットR細粒へ変更する。
・ミコンビAP(テルミサルタン、ヒドロクロロチアジド)→合剤は均一性が保てないため、不可
・アレンドロン酸錠35mg→ 不可 口腔咽頭部に潰瘍を生じる可能性があるため。点滴静注に変更する。
・アルファロールカプセル→ 不可 液状の内容物を含む軟カプセル剤であるため。散剤へ変更する。
・イムラン錠→極力避けることが望ましい。粉砕時には粉塵が飛散し作業者が吸引しやすいので発がん性、催奇形性の危険性あり。粉砕する場合は手袋、マスク、ゴーグルを装着し、集塵装置のあるところで行う。

私は、粉砕ハンドブックで調べて伝えますが、インタビューフォームだけの情報でもこれだけの情報がまとめられます。代替薬の選択については、いくつか他にも手段があるかなと思うものもありましたが、よくまとめられていました。

〇 保険薬局でみかける感染症について

これ、ちょうどTwitter上で「たろだい@tassideki」さんが「サンフォード感染症治療ガイド」がファイザーのサイト経由でみれます(サイトへの登録は必要ですが)というツイートをしていたのを見たのがきっかけで思い付いた内容でした。買えばそれなりの値段がするものです。

病院勤務から保険薬局勤務となってからは、抗菌薬への興味が自分自身少しうすれていた感じがありましたが、再度興味が湧きました。

以下、課題の内容です。

保険薬局でよくみられる感染症について
〇膀胱炎
〇小児の尿路感染症
〇急性中耳炎、副鼻腔炎
〇咽頭炎、扁桃炎、上気道感染症
〇市中肺炎、マイコプラズマ肺炎
〇細菌性胃腸炎
〇溶連菌感染症
〇腎盂腎炎
等々
この中のうち、膀胱炎、市中肺炎について治療期間、治療薬剤について以下のサイトを参考にしながら考えてみて下さい。
また、各種抗生物質(特にセフェム系抗菌薬)のバイオアベイラビリティや組織移行性、適応菌種(グラム陽性、陰性、球菌、桿菌など)についても余裕があれば確認してください。
★ファイザーのサイト(サイト経由でサンフォード感染症治療ガイド閲覧)
https://pfizerpro.jp/cs/sv/sanford/index.html?aid=top_gn_group
★日本感染症学会ホームページ  ガイドラインINDEX
http://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=2
★耳鼻咽喉科関連ガイドライン
http://www.jibika.or.jp/members/guidelines/index.html
用語についても覚えておいた方がいいもの(一部)
・エンピリック治療
・起炎菌
・PK/PD
・Time/MIC
・Cmax/MIC
・AUC/MIC
・MPC
・MIC
・MSW
・PAE

ファイザー経由のサンフォードは内容を検索できるし、すごく便利でした。

ここでは、ガイドライン上の推奨品だけでなく、実際に今までの実習の中で手に取った処方内容と見比べながら、その内容について評価(どうしてその抗生剤を使っていたのか?もっといい抗生剤の使い方はなかったか?など)してもらいました。

これについても、過去の自分が経験した抗生剤処方についてよく覚えていて答えてくれました。

〇 インシデントレポートの記載

インシデントレポートについては、書き方を知ってもらうということと、再発防止策を考えるときの考え方を伝えるという目的で行いました。
書式はこれを使ってます。

セレコックス100mgと200mgの取り違え(規格間違い)
バクタ配合錠とダイフェン配合錠の取り違え(代替調剤の間違い)
セルタッチテープとセルタッチパップの取り違え(剤形間違い)

の3つで行いました。代表的だと思えるものです。

MicrosoftのOnedriveに置いたファイルを共有してそれに記載してもらうことで、オンラインでもスムーズなやりとりができました。

〇 トレーシングレポートの記載

トレーシングレポート(TR)については、過去の実際の事例を用いて、その内容について説明したのち、TRを記載してもらいました。

TRを記載するときの参考資料として、「特集 トレーシングレポートの正しい書き方、教えます(調剤と情報,vol.25,No.11,p1652-1679,2019)」を使用しました。

書籍を届けるわけにはいかなかったので、薬局にある雑誌をOfficeLensで読み込みPDFファイルにして共有しました。

この本の内容がよくできていたからだと思いますが、しっかり医師に提出したとしても読みやすく、誤字脱字もない文章が提出されました(実際にはOnedriveでのファイル共有)。

〇 文献検索をやってみる

これが週の最後の課題でした。

普段質問をするととりあえずGoogle検索をすることが多かった学生ですが、そのたびにどれが真実なのか?本当にあっているのか?という疑問は持っていたようです。

今回は、

Pubmed
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed

J-Stage
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/-char/ja

Google scholar
https://scholar.google.co.jp/

iyaku search
https://database.japic.or.jp/is/top/index.jsp

これらのサイトを用いて調べてもらいました。

Q1 αグルコシダーゼ阻害薬(αGI)を食直前に飲み忘れてしまった。その場合の対応としては何が正しいか?
Q2 レボチロキシンの服用タイミングは食前、食中、食後どれが一番適切か?

これもしっかりと調べてくれました。

〇 医薬品安全性情報報告書を書いてみる

 過去に薬局で経験した副作用事例で、実際に「医薬品安全性情報報告書」の提出に至ったケースを例にとり、報告書を記載してもらうことにしました。

画像1

 書式はLineでOnedrive共有リンクを送りましたが、今回ファイル保護されており直接入力ができない状態だったので、Pmdaのサイトから直接ダウンロードして、そこに入力してもらうこととしました。

個人情報を消した薬歴を用いて記載してもらいました。

〇 ポリファーマシーについて考えてもらう

ポリファーマシーのお題で、資料を3つほど読んで、
・概要(あらすじ)
・印象に残った部分
・実際の処方でポリファーマシーが起きそうな場面の予想
 (いくつか書いてみる)
・今後に活かしていけそうなこと
についてまとめてもらいました。

使用した資料はこちら(自分が作成したスライド+拾いのPDFファイル2つ)です。

自分でスライドを作成するときには、「ポリファーマシーで困ったら一番はじめに読む本」を参考にしてつくりました。

結果、よくまとめて記載してくれて、昨日行った「医薬品安全性情報報告書」の症例ともリンクさせて考えてくれて、実際の事例とつなげて考えられるようになっていることが感じられました。

〇 疑義照会事例について考える

①疑義照会について考えさせられる事例があった​ため、その内容について考察してもらう。

繰り返されてはいけない事例であるし、事例の内容をとがめるのではなく、事例に対する対策が重要だと思います。

②日本医療機能評価機構のホームページで事例検索をしてもらう

日本医療機能評価機構のホームページで「薬局ヒヤリハット事例収集・分析事業」のページを使用。

無題

2019年4月~2020年4月までの1年間​での「疑義照会」​
・過量投与​
・実施あり​
の事例報告の内容を閲覧、参考にする

画像の様な検索式で検索してみるといくつか該当するものがピックアップされてきます。

・知っていたこと
・添付文書、インタビューフォーム等で調べたらわかりそうだったこと​
・文献検索、製薬企業への問い合わせでわかりそうだったこと​

の3つでいくつか気になった症例を挙げてみる。

〇 アビガン(ファビピラビル)について考える

 最近いくつか話題になっているCOVID-19に対する治療薬について添付文書と文献を読んで自分なりの考えを出してもらうということを行ってみました。

①添付文書をみて注意すべきだと感じた点

作用機序や警告、用法、副作用など添付文書の各項目を確認して、実際に使用するにあたり注意するべきと感じたことを書いてもらう。

②最近出されている文献を読んでもらう

レムデシビル
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31022-9/fulltext?utm_campaign=tlcoronavirus20&utm_source=twitter&utm_medium=social

ファビピラビル(FPV)とロピナビル(LPV)/リトナビル(RTV)の効果
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2095809920300631

ファビピラビル対アルビドール
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.03.17.20037432v4

日本感染症学会のホームページに掲載れている症例報告
http://www.kansensho.or.jp/modules/topics/index.php?content_id=31#case_reports

単純に論文を読んでまとめてもらうと、まとまりのない文面になっていまっていたので、PECOについても以下のサイトを参考にして考えてもらいました。 👇

さいごに

実際に現場で行っていることを感じ取れるような課題を考えることはすごく大変ですが、自分でも意識していなかった気づきが得られることがあります。今回あたえた課題をもとに、また次回来てくれる実習生のために準備をしておきたいと思っています。



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