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保母須弥也先生の『オーラル リハビリテーション』を読み進める その7

早期接触について

はじめに

オーラルリハビリテーションを理解するためには、まず「中心位」と「咬頭嵌合位」という2つの重要な概念を把握する必要があります。

  • 中心位:下顎骨の顆頭が関節窩内で緊張せずに最も後方の位置にあり、そこから自由に側方運動ができる頭蓋と下顎の位置関係。

  • 咬頭嵌合位:上下顎歯列の相対する咬頭と傾斜面が最大面積で接触し、咬頭が密接に嵌合して安定した状態。

理想的な咬合では、患者が中心位で閉口したときに、上下顎歯列が咬頭嵌合位でかみ合います。これを「中心位咬合」と呼びます。



早期接触の実態

しかし、現実には多くの患者さんで中心位と咬頭嵌合位が一致していません。多くの場合、咬頭嵌合位が中心位よりも0.5~0.75mm程度前方にあります。

筆者の調査では、日本人150名の上下顎石膏模型を分析したところ、中心位と咬頭嵌合位が精密に一致していたのはわずか4名でした。

早期接触の原因と影響

中心位と咬頭嵌合位が一致しない主な原因は、一部の歯が早く接触して下顎の閉口を妨げることです。これにより、下顎は妨害する歯を支点として前方や前側方に滑り、中心位から離れた位置に咬頭嵌合位が形成されます。この現象を「早期接触」と呼びます。

早期接触は下顎の様々な運動(閉口、前方、側方)に影響を与え、特に平衡側での早期接触は中心位の早期接触に次ぐ悪影響があるとされています。

早期接触の影響と症状

早期接触は下顎の正常な運動を妨げ、顎関節と咬合の調和を乱します。これにより:

  1. 顎関節や顎筋に負担がかかり、顎関節症の原因となる可能性があります。

  2. 症状が現れない場合もありますが、歯周組織や顎関節に問題が生じることもあります。

オーラルリハビリテーションの重要性

早期接触が顎関節症や歯周病の誘因となる可能性を考えると、これを適切に取り除くことは非常に重要です。この課題に取り組む方法が「オーラルリハビリテーション」です。


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