新たな学び - 保母須弥也先生の『オーラル リハビリテーション』を読み進めながら咬合の勉強 その4

保母先生著「オーラルリハビリテーション」からナソロジーを学ぶ

1920年代にアメリカのMcCollumがStallardと協力して新しく作り出した用語、「ナソロジー」について紹介します。



Gnathologyの語源について説明いたします。


"Gnatho-"
これはギリシャ語の"γνάθος" (gnathos) に由来し、「顎」を意味します。
生理学の英訳は"physiology" です。生理学は、生物の機能や生命プロセスを研究する科学分野です。この用語は以下のように分解できます



従来の歯科医学への批判

McCollumは、従来の歯科医学が口腔を中心感染源としてのみ取り扱い、その結果、口腔の持つ機能的な役割を無視する傾向にあったと述べています。そのため、より良い歯科治療は美しい充填や補綴を意味するという誤った思想が植え付けられ、咀嚼機能の重要性にはあまり関心が払われなかったと指摘しています。



咀嚼機能の重要性

咀嚼機能の主役を演じるのは歯牙ですが、歯牙単独では咀嚼機能を完全に果たすことはできません。歯牙は咀嚼機能を果たすための一つの道具に過ぎないのです。咀嚼機関の中で歯牙が果たすべき役割を無事に遂行できるよう、その機能状態を管理することが重要です。歯牙の最も重要な役割は咬合です。



治療範囲の拡大

治療範囲を歯牙単独のものから、咀嚼に関係するすべての組織を含む範囲にまで拡大しなければならないとMcCollumは述べています。



ナソロジーの樹立

McCollumの考える理想的な口腔ではない場合、エネルギー源の摂取口である口腔が異常であれば、長い年月をかけて悪い影響が出てくるだろうと述べています。咀嚼機関の生理学的関係を重視し、咀嚼機関の疾病の早期発見を意図してナソロジーという新しい学問の一形態を樹立しました。

1920年以来、Stallard、Stuart、Thomas、Granger、Lucia、DePietro、Kornfeld、Guichet、Swanson、Whipら先人によって種々工夫がなされ、オーラルリハビリテーションとして応用されました。



歴史的発展

1. 初期の功績

  • 1921年:McCollumがターミナル・ヒンジ・アキシスの存在を実証

  • 1926年:カリフォルニア・ナソロジカル・ソサエティーの設立

  • 1929年:ナソグラフ(口外法測定装置)の開発

  • 1934年:ナソスコープ(現在のナソロジカル・インスツルメントの原型)の完成

2. 治療目標の変遷

  • 当初:バランスド・オクルージョンを擁護

  • 後期:ミューチュアリー・プロテクテッド・オクルージョン(後にオルガニック・オクルージョンと改名)の提唱


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