病気のこと。

他人から見たら、そして自分でも客観視できればそんなに大したことではないのかも知れない。
それでも。

…精神的にとても追い詰められていた、20代前半のわたしは、外出すると不安な気持ちから吐きそうになる。卑猥な言葉を口走るかも知れないという恐怖もあった。自分がどこかおかしいんじゃないか、思うと、ほんとうにおかしい人間は自分をおかしいとは思わない。だからおかしくないんだ…そう思うのだけど、おかしくないと思うということは、やはりおかしいのかも知れない?    堂々巡りでわけがわからない。

当時、出掛けなければならない時はバッグに誰に見せるでもない手紙をしのばせていた。「わたしはおかしいけど、自分がおかしいことは知っている」

家でも居場所はなくなっていた。そのうちほんとうにおかしくなってきた。人を殺めるのではないか?という強迫観念が消えなくなったのだ。
絶対に、殺したいわけがない。誰かの大事な命を、わたしの身勝手で奪っていいわけがない。そこはちゃんとわかっているのに、もしそんなことをしてしまったらどうしよう。自分のことが怖くて恐ろしくて堪らなかった、23歳の秋。そうしてわたしは精神科に入院することになる。

子どもの頃から会食恐怖症でもあったので、入院して、よく知らない人たちとの食事ができなかった。そうしてひと夏で9Kg体重は落ちた。目はくぼみ、鏡を見るのが辛くなった。
U先生という女医が、主治医だった。
秋になってもわたしは変わらず食事は摂れないわ、色々な強迫観念に振り回される毎日。出口のないトンネルから抜け出す気力すらなくなっていた。

でも。
苦しい日々が嘘のように、その冬を境にわたしはかつての自由な思考の日常を取り戻すことができた。U先生が何度も何度も試行錯誤して出してくださったお薬が、そしてU先生からの教えの「自分への言い聞かせ」がその頃ようやく功を奏したらしい。
世間ってこんなにも素晴らしくて、楽しいものなのか!    と何事をも前向きに考えられるようになったのだが…。いま思い返してみると、その頃はその頃でちょっと躁状態だった気がするわたしは、25歳になろうとしていた。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?