黒いけん玉

玉が黒いけん玉を見た。けん玉の玉は基本的に赤だから、かなり違和感がある。こんなにも印象が変わるとは驚きだ。

玉が黒いけん玉は、一部のエクストリーム・ケンダマプレーヤーが使用する玉が鉄で出来ているけん玉（別名「アイアンバッファロー」）ぽい。アイアンバッファローは、その玉の重さによりダイナミックなトリックが可能になるのだが、手元が狂えば大怪我を負いかねない危険な代物だ。しかし、高速で玉を振り回し、コンクリート等に擦らせることで火花を出す技「ローリングフェニックスファイヤー」を成功させたときの観客の盛り上がりを考えれば、リスクを冒してでも使用する価値はある。

もしくは、玉が黒いけん玉は、少年マンガ『けん玉ファイターカケル！』の主人公カケルのライバルのリョータが、悪に心を乗っ取られてしまったときに使うけん玉っぽい。元の心を取り戻すように説得するカケルに対してリョータはこう言う。「無駄だよ……僕の心はもう真っ黒に染まってしまったんだ……この玉のようにね……」。そうして、かつての仲間同士による激しいけん玉バトルが始まった。

あるいは、玉が黒いけん玉は、毎日好き勝手に遊び回っているように見えた大学生のけん玉が、急に就活モードに切り替えたときっぽい。仲間とつるんでバカみたいに騒いだりダラダラ過ごしたりした時間。永遠に続くように思えていた日々にも終わりが来ることを突きつけられる瞬間だ。

玉が黒いけん玉。あなたには何っぽく見えるだろうか。