見出し画像

「VIVI」のお話

ココロオークション、メジャー4枚目のミニアルバム「VIVI」が2019年4/3にリリースされました。
ここでは「VIVI」に関する製作のお話を一曲ずつしたいと思います。

「RUN」
この曲の原型はある有名なアニメの主題歌のコンペに出す用に製作しました。コンペには華麗に選ばれなかったんですが、「間違いなくいい曲」という確信があったので次にアルバムを出すときには絶対候補にしようと思っていた曲です。仮タイトルは「Run Song」
といってもコンペ用に製作していたデモ音源は打ち込みガンガンでパリッパリのプラスチックみたいな質感だったので、結局原型だけ残してあとはスタジオでみんなでアレンジしました。2番のアレンジや、Cメロから大サビの流れは胸熱だと思います。2番のテンメイのギターがお気に入りです。
逆にBメロとかは加工して作った音もたくさん入れていて、バンドアレンジだけでは出ない感じになってると思います。
リズムアレンジ的にはインディーズ時代にリリースした「ここに在る」という楽曲に近い感じで、製作中にも「ここに在る」に似すぎないようにドラムのさっちゃんはすごく気を使っていました。結果似てるけどちょっと違ういい塩梅になったと思います。
この曲をリード曲にしようと思っていた時期もあって、実はMVを撮ってくれた加藤監督にも最初この曲で撮影してくださいってオファーしていました。
聞き所としては冒頭のコーラス部分。
これ製作しているときに「僕らは奇跡でできている」というドラマを見ていてエンディングテーマでSUPER BEAVERの「予感」って曲がめちゃめちゃドラマにマッチしていてめっちゃハマってて(オープニングのShiggy Jr.もめちゃいいです。)、この曲のイントロがハミングっぽいちょっと不思議な感じで歌が入ってるんです。
そのアレンジがすごく好きでドラマ見終わったらその部分をいつも口ずさんでいたんですが、そこから紆余曲折あり「みんなでウォーっと歌う」というアレンジに行き着きました。
こういうセクションを録音するときって、粟子さんの声をたくさん重ねるのか、みんなで歌うのかで迷うんですが今回はみんなで歌うとこってりしすぎたので粟子さんの声だけで歌セクションを構成しました。
さらに暑苦しくないちょっと神秘的な質感が欲しかったので、ほんのりバイオリンの音とピアノの音を混ぜているのが隠し味です。
この曲はレコーディング前からライブでも披露したので(年末フェスで初披露でした。しかも「タイトル未定で」)他の曲よりもさらに勢いがあって、楽器のレコーディングはあっという間に終わりました。

「アイデンティティ」
「RUN」の次に作ったのがこの曲です。RUNの方向性がだいたい決まって次はどんな曲を作ろうかなという時に、粟子さんとデモ音源を持ち寄って会議する日があったんですが、その時に僕が持っていたデモ音源の仮タイトルが「閃光ステップ」と「風に運ばれて」「夏の風になって」というなんともさわやか〜な曲しかなくて、もっと汗をかくような熱量がある曲が欲しいなと思い、会議の前日の夜中に作ったのが「アイデンティティ」のデモ音源です。
「とにかく勢いがあってズバーン!・・・・ズバーン!!うりゃ!とりゃ!!」と独り言を言いながら作ったので仮タイトルは「shot!!!」でした。
系譜としてはCANVASというアルバムに収録されている「スパイダー」という曲の流れになるのかなと思います。
まずはドラムパターンを作ってコードを鳴らして、あとは納得の行くギターリフができるまでひたすら弾き続けました。
ドラムのさっちゃんとは長い付き合いで、大学の軽音サークルの時から彼のプレイを見ているけど、この曲のようなちょっとバウンドしていて、スネアのゴーストが細かくなっているパターンを叩いている時に一番輝いている気がしていて(汗的な意味も含めて)、とりあえずさっちゃんに汗かいてもらうならこれでしょ!っていう事でリズムはすんなり決まりました。
冒頭のがちゃがちゃしているパートは実は別の曲用に作ったパートで、ギターリフが出来上がったときにふとそのパートの存在を思い出してくっつけました。
始めてデモを聞いてもらったとき粟子さんが冒頭のパートを「ガラスが割れるみたいな音でかっこいいね」と言っていて、「なるほどガラス割るとかっこいいのか」と思ってガラスが割れるイメージの音がちょいちょい入っています。サビの頭とか。2サビの頭とか。
デモ音源の段階から完成度は高く、これにどんな歌が乗るのか楽しみにしていたら予想以上にクール粟子な歌が入りました。
今回歌詞を作るときは粟子さんが「作家」。僕が「編集者」みたいな関係性で製作を進めていました。
最初はちょっと気になるところを「これってこういうこと?」みたいな話をする程度だったんですが、その時に「忘却のサチコ」っていうドラマにすごくハマっていて(これまた主題歌のスカート「忘却のサチコ」が素晴らしいんですよ〜。)、その主人公が小説の編集者で、劇中で作家といろいろディスカッションしている姿を見て「あ、こういうのいいな」ってふと思って、作家が粟子さんで僕が編集者ということにしました。
といっても大したことしてないんですけど、この曲に関してはテーマを決める段階でかなり時間を使って、僕自身も歌詞の思想に入り込みすぎちゃって最終的にちょっと重たーい窮屈な歌詞になってしまい、どうしたもんかなと思ってました。
すると録音する日に粟子さんがサビの最後の一節を今の
「普通じゃないこと それ自体に価値があるんだ」
という節に変えて。その一節を変えるだけでこの曲の風通りがすごく良くなりました。作家粟子さんさすがです。
ドラムのさっちゃんはこの曲が一押しだそうです。テンメイはこの曲を弾くと腕がパンパンになるそうです。

「ハンカチ」
このアルバムのリード曲です。
「RUN」「アイデンティティ」と2曲が出来上がって、次はどうしようという時に、粟子さんが持ってきた弾き語りのデモ音源を膨らませてハンカチは製作しました。この曲のBメロ(「いたーい」の部分)がサビになっているデモ曲があって、それを聞いて「Bメロがキャッチーな曲」というざっくりしたイメージが浮かんだので、Bメロに採用することにしました。さらに良いサビを追加で作る必要があったので粟子さんは「マジカ・・・」って顔してました笑。
そこを起点にサビとAメロを構築していきました。さらに良いサビを追加で作る必要があったので粟子さんは「マジカ・・・」って顔してました笑。でもサビは和風な感じがしてお気に入りです。
メロディーの大まかな形が出来上がってから他のパートのアレンジ作業に入ったんですが、普通にやるとどストレートな曲になることがなんとなく予想できたので、変なパートを作って、どストレートを具材を変なパートで挟んだサービスエリアにありがちなハンバーガーアレンジにしようと思い、冒頭の流れを考えました。
歌詞も平行して進んでいくなかで、歌詞の主人公が「ちょっとバカなやつ」という設定が見えて来たので、サウンドにも少し反映できたらいいなと思って冒頭のサウンドや、大サビ前のセクションなど微妙にカチャカチャチンチンしているところを入れ込んでいます。
歌詞には粟子さんの中の「恋した男の子あるある」みたいなのをたくさん考えて入れ込んでいるんですが、いかんせん男性目線のみで作りあげたので女性が聞いたらどう思うんだろうという一抹の不安は常にありましたが、どうやら恋したらバカになるのは女性も同じみたいで、思いの外共感してもらったのには面白いなと思いました。
インディーズ時代にリリースした「ターニングデイ」という曲と近いアレンジかなと思っていますが、グルーブという点ではもう少し丸っこいキャッチーなグルーブになっているかなと思います。
テンポはかなり早いんですけど、サビのコードが基本的に2小節づつ進行していくので急かされる感じではなく、突き抜けるような感じが似合う構成だと思います。Bメロは逆に1小節づつコード進行してキュッとさせています。
実はレコーディング途中くらいからサビの抜け感や突き抜ける感じをどう演出するかで直前まで迷っていて、一応予定通り楽器を録音した後もまだサビ感が足りないなと思って、いろいろアレンジを変えて現状にたどり着きました。
CINEMAというアルバムを録音していたときにレコーディングエンジニアの方に「ココロオークションはタンバリンってあんまり使わないんだね」って言われた事があって、その言葉がふわーと、レコーディング疲れの頭の中に走馬灯のように浮かび上がり、神のお告げならぬエンジニアのお告げのお蔭で今のアレンジに落ち着きました。サビにうっすらとタンバリンが入っているんですがこれがあるのとないのとではビックリするくらい曲の明るさが変わるんです。だからタンバリンのこともたまにでいいから思い出してあげてください。
「VIVI」全般に言えることですが、粟子さんの歌い方が前作とガラリと変わっていてすごくいい感じです。
アルバムのリード曲を決める時に僕は「RUN」か「タイムレター」がいいなと思っていたんですが、会議の時にテンメイが「この曲がファンの人達に一番聞かせたい曲です。」という言葉に撃ち抜かてハンカチに決定しました。
いざ演奏してみるとこの曲サビが長くて多いなと改めて感じます。曲からアレンジしているとたぶんこのサビの長さと頻度はアレンジして変えていただろうなと思うんですが、聞いていると全然気にならないんですよね。
それって歌詞がしっかり進んでいるからだと思います。歌詞が先にあったからこそのアレンジだなと思います。

「向日葵」
この曲は「マジで航海してます。~Second Season~」というドラマのエンディング曲として書き下ろしました。
前作「Musical」と今作のちょうど中間に制作した曲なんですけど、アレンジや歌詞的にもほんまその通りって感じで、当時はそこまで意識していなかったんですがリズムの方向性やこれまでの道のりを肯定してくれる歌詞なんかは今作に通じると思います。
ミニアルバムをリリースするってまず最初に決まって、そこから製作に入ったんですが既に配信限定でリリースしていたこの「向日葵」は収録したいなと思っていて、だいたい5,6曲くらいのパッケージで一曲は向日葵は入れたいな。っていうところで、「じゃあ後の曲は全部テンポ速めでも面白いかも」って思ったのが今回の様にロックアルバムになった発端でもあったりします。当時は向日葵がミドルテンポのバラード寄りの曲だと捉えていて、テンポ速い曲ばっかり入れても向日葵がまとめてくれるでしょ〜と思っていました。
いざ他の曲ができあがり、この後登場する「手のひら」の収録も決まって、向日葵を聞いてみると全然聞こえ方が違うくて「こんなに明くて前向きな曲やったんや・・・!」と驚きました。
ドラマのために書き下ろしで作った曲ですが、その時から「VIVI」は始まっていたんだなと思わせてくれます。

「手のひら」
この曲はインディーズ時代にリリースした曲で、ECCの企業CMソングに選んでいただいています。みなさんもTVで見かけることもあると思います。
2013年にリリースした曲なんですが、メンバーみんなこの曲が好きでアコースティックで演奏したり、ずっと大事にしてきた曲です。
今回、再録という形で録音し直した音源を収録することになったんですが、アレンジをどうしようかちょっと悩みました。
実際何パターンか自分の中で作って、いろいろイメージしていたんですがどれもあまりしっくりこず、結果的に大枠は原曲に忠実に、リズムがより乗れるように今のバンドの解釈でアレンジする。というところに落ち着きました。
主にベースとリードギターのフレージングが変わっているところなんですが、そういう細かいところを変えるだけでノリが変わるっていうのは昔はよくわかっていなかったので少しは成長しているんだなと思いました。
「手のひら」のタイアップが決まった時に、このアルバムに収録するかはちょっと悩みました。メンバー一同「ロックアルバム」というイメージで製作を進めていたのでこの曲はちょっと合わないんじゃないかなと。
ただスタジオでアレンジしていると「タイアップだからこの曲をやる」というレベルでは全然なくて「普通にいい曲やからみんなに聞かせたい」という思いがふつふつと湧き上がってきて、結果収録することにしました。
向日葵の時もそうなんですが、アルバムに収録すると聞こえ方が変わるのが本当に面白いです。
僕の中で「手のひら」は少しのっぺりしていて静かなイメージだったんですが、このアルバムでは生命力が溢れていてすごくエネルギッシュに聞こえます。
粟子さんの歌が一番変わっているところだとは思うんですが、再録することによって曲の新しい一面が見られました。

「タイムレター」
この曲は「ハンカチ」と同時期に作り始めました。粟子さんがハンカチのサビメロに取り掛かっているときに「映画のエンディングみたいに、走馬灯の様にいろんなシーンが浮かぶ曲」を作りたいなと思ってデモ音源を作り始めました。
僕の中でその映画のストーリーは少年が空飛ぶじゅうたんを作る物語だったので仮タイトルは「飛べ!絨毯」という名前でした。
まずはじめにリズムアレンジのイメージはあって、いろんな情景を呼び起こす音にしたかったのでリズムはできるだけ変わっていったほうがいいなと思っていました。始めは疾走感の在る8ビート。Aメロはゆったり歩いているようなリズム。Bメロで少し視界が変わって、サビで過去を振り返る。振り返った先にまた未来がある。みたいなイメージでリズムを構築しました。この辺のアレンジは前作「Musical」を作る時の経験で作り上げられた気がします。
僕、ドラえもんの映画で「ドラえもん のび太の大魔境」っていう映画がすごく好きで(エンディングテーマの「だからみんなで」って曲はまじで涙腺崩壊します)、うろ覚えなんですが最後のスタッフロールで登場人物が歩きながら横で昔のシーンが流れるんですよ。ほんでシーンが進むに連れてだんだん歩く仲間が増えていって・・・みたいな感じだったと思うんですが、そのスタッフロールのシーンが未だに頭に残っていて、この曲はそれを頭に流しながら製作していました。
ただリズムをセクション毎に変えてしまうと、とっちらかっちゃって落ち着きがない感じになってしまうこともあるので、スタッフロールが流れていくように一筆書きのアレンジになるように気をつけました。
デモ音源を先に作るときはあんまりこういう作る時のイメージとかは伝えないで粟子さんに歌詞やメロディーを自由につけてもらえるようにしているんですが、歌詞がデモ音源のイメージとほとんど同じ世界観だったので驚きました。
歌詞は何回か大枠から書き直していたんですが「ロックバンドを組んだんだ」という一節だけは初めからずっとあって、結果この曲、このアルバムに色をつけた一番の言葉になったと思います。
2番はサビがなくてギターソロにいくんですが、構成を考えている時になんか「いい音のソロがいいな〜」と漠然と思って、テンメイの持っているレスポールってギターはめちゃくちゃいいやつなんですけど、僕が思うレスポールのいい音って歪ませて粘りのある音と、もう一つはクリーンの角の取れた優しい音だなと思って、その音ってテンメイのキャラクターにも合ってるし、ここはレスポールでクリーンで弾いてもらおう!と楽器と音色から決めてテンメイにオーダーしました。結果めちゃめちゃ優しいソロになったなと思います。
ドラムはなんか律儀で真面目な音だなと思うし、歌はもはや自分の事を歌っているわけだし、メンバーの血が濃く通っている曲になったなと思っています。
ちなみにタイトルはBURNOUT SYNDROMESのベース石川大裕につけてもらいました。
アルバムの曲順を決める時に全員で案を出し合うんですが満場一致でこの曲がラストでした。

・・・・

この解説文が「VIVI」をより楽しむ材料になれば幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?