未来警察ウラシマン研究同人誌のこと

2021年3月現在取材中の未来警察ウラシマン研究同人誌は、ウラシマン第49話「愛と死の超能力」に焦点を当てたものになります。

ウラシマン自体は50話からなるテレビシリーズであり、当然その膨大な分量の中に様々な見所があるわけですが、個人的にはその魅力の中心核は第49話に凝縮されていると思っています。

ウラシマンが放送されていた時代は、日本はバブル好景気直前の1983年。全てが明るく上り坂だった頃です。

ネアカ・ネクラという言い方に代表されるような、楽しくなくっちゃテレビでないとかフジテレビがブチ上げ、軽さや煌びやかさが持て囃されていました。

ウラシマンも放送開始当初はそんな時代の空気を作中に色濃くまとい、近未来ポリスアクションコメディー風に始まりました。

明るい未来都市ネオトキオを舞台に、エアカーがハイウェイを突っ走るバラ色の未来を、悩みのない明るい主人公ウラシマリュウの冒険を、面白楽しく描く。

おそらく番組の当初のコンセプトはそんなよくあるものだったはずです。

しかし第13話「過去にささったトゲ」が、いきなりその能天気アニメにぶっこまれてきます。

それはウラシマンの敵組織「犯罪帝国ネクライム」の若きNo.2ルードヴィッヒの過去譚。

12話までのテレビアニメ未来警察ウラシマンは、ただネアカなだけの登場人物が気の良い相棒とともに、ちょっと抜けてる悪の軍団と意味のないから騒ぎに奔走する、どっちかといえば毒にも薬にもならないしょーもないものでした。

ですがこの13話「過去にささったトゲ」はルードヴィッヒがただのキザな格好つけ野郎ではなく、悲しい過去を持つ感情豊かな青年であることが描かれ、ルードヴィッヒは俄然血肉を持ったキャラクターとして魅力を帯びます。

他方主人公ウラシマリュウは記憶喪失というエクスキューズを与えられてるものの、本当に何を考えているのかよく分からない、気は良いもののただのネアカ能天気野郎に過ぎず、どうにもバランスの悪いアニメ作品が未来警察ウラシマンの1クール目でした。

未来警察ウラシマンのドラマが本格的に動き出すのは、なんと2クール目も超え第32話まで待たなければなりません。
しかしこれまたこの32話から始まるフューラー三部作ともいうべき3話が素晴らしい内容で、リュウとフューラーの因縁、そしてルードヴィッヒのネクライム下剋上が描かれます。

4クールの半分以上を費やし、ウラシマンの長過ぎた前半戦は34話で終わります。

以降、物語は加速の一途をたどります。

ルードヴィッヒによる地球上の全ネクライム統一。

リュウの超能力開発。

そしてリュウの最大の敵かと思われたルードヴィッヒは、身内の裏切りにより倒され、最後はやはりリュウと血を分けた兄弟、フューラーがリュウの前に再び現れ、超能力と過去への回帰を賭けた、ウラシマン世界全てに決着をつける第49話「愛と死の超能力」によって、過去からのストレンジャー、リュウの冒険は一旦幕を閉じます。

実際の最終回、第50話「サヨナラ2050年」は後日譚で、どちらかというと未来警察ウラシマンPART II第一話的な内容です。

人間個人の虚しさ、悲しさ。

それでも人間が生きていく最低限守るものは何かを、テレビアニメーションの中で懸命に問いかけたシリーズが、未来警察ウラシマンという物語です。

人生に完璧なラストが無いように、ウラシマンには完全な終わりはありません。しかしそれゆえいつまでも未来警察ウラシマンは見るものに、何かを訴え続けるのではないでしょうか。

未完



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