空のブロック

車に乗って走っている。山の中腹を通る道だ。ガードレールの先は崖。母親が運転している。助手席には父親が座る。僕は車の後ろの席に座っている。事件のことを思い出す。その日祖父が祖母を殺人未遂して血を流した。部屋の畳に祖母の血が滲み廊下の壁にはべっとりと血痕がついた。母は2階で騒ぎを耳にし1階へ急いで駆け降りた。祖父がリビングで放心状態にある。祖母は廊下で頭を抱えて泣いていた。わたしのせいわたしのせい。母はそう呟く。リビングの椅子に座る祖父の前に行きこう伝える。目を閉じてそして好きな動物を教えて。運転する母はその日の苦しみやそれまで両親に虐げられて蓄積した苦しみを再体験する。ガードレールに向かってスピードを上げる。僕ら三人はそのまま崖へと車ごと転落した。僕は車内で頭を強打し死亡する。気がつくと空の上にいた音のない世界眩しいただ眩しい。空へ落ちてゆく。ふんわりとゆるやかに。気がつくと診療所に辿り着いていた。受付の人に聞かれる。どうなさいましたか?ここがどこだかわかりせん。僕は山にいて事故に遭ってそれで。どうなったんでしょうか?お客様はこちらへどうぞ!職員たちが皆慌てて僕を裏庭の方へ案内する。夕方の空だ。眩しい空。僕は屋上へと案内された。白いタイルにネットの建てられていない屋根の上。僕は歩く。いくつかのプールがありドレスを着た男が水中で体を伸ばしくつろいでいる。屋上の端から下を見下ろす。遥か下には雲海が広がっていた。どこまでも続く空。眩しい日差し。僕は飛び込んだ。落下するはずがゆっくりと浮遊して落ちていく。建物の横から四角形のブロックを外す。すると中には赤髪の美少女が現れた。その時に問われた。山に戻るか霊界に行くか。僕は霊界入りを望んだ。

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