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14_「で、おーもり君は、どうしたいの?」 ~木崎さんが本を出したんです~

中学3年の時に学区編成が変わり新設校に転入した。新規に造成された住宅地に出来た学校で、転入組と転向組が半々で混じる面白いクラスになった。転校組の一人に貝田君という、いわゆるシティー調のカッコいい男がいて、俺らはシェル田(だ)となどと呼んで、いじっていたのだが、女子の彼への目線は、それはそれは熱いものがあった。その貝田くんが吉川晃司の「You Gotta Chance」の物まねを休み時間にしていて、女子がそれはそれはたいそう喜んでいた。(のを、横目に見ていた。)吉川氏がテレビに出るたびに、翌日、なぜか貝田君の株が上がるという、教室はストップ高の上げ相場。無駄に悔しかったのは、僕の方が彼よりもはるかに吉川晃司を好きだった(と思っていただけかもしれないが…)からだ。

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(このジャケット。なぜか当時、すごく惹かれた。海の中で「エメラルドのカクテル」。もちろん、やったこともやる予定もないが…。このあと、椅子の足が埋まり晃司氏が水浸しになった…かもしれない、などと撮影現場を妄想。ワクワクしてきたぞ)

家に帰ると、クリスマスプレゼントでONKYOのRADIAN(興味があるなら調べてみると良い)を手に入れた姉が(こんなデカい代物、サンタも大変だったはずだ)、当時深くはまっていた大沢誉志幸の新譜「in・Fin・ity」を爆音でかけている。

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そもそも、僕が大澤誉志幸氏を知ったのは、晃司(ファンはこう呼ぶ)のシングル「LA VIE EN ROSE」を大澤さんがカヴァーしているTOKYO-FMの公録(※公開録音=あったんだよ。無料招待でお客さん入れて行なうラジオ局主催のライヴ番組がさ)のライヴ音源を聴いたからだった。で、調べると、「LA VIE EN ROSE」を作曲したのが何を隠そうその大澤誉志幸氏であることが判明。姉の留守を狙い、彼女集めた大澤氏のLP4作をこっそり持ち出して、自室で聴く。知らないアーティストの音源を聴くというのは、なんとも大人になった気分にもなるわけでだ。「姉が大事にしているLPを拝借してこっそり聴いている」この事実がまた格別に良かった。

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(ネットより調達。素晴らしい1stアルバムです)

大澤さんのジャケットにも、僕の持っていた吉川氏のアルバム「LA VIE EN ROSE」にも、KENJI KISAKI(WATANABE MUSIC)(※漢字だったかもしれない)が、クレジットされていた。「あ、おんなじ人が担当なんだ」そう思ったのが木崎さんを意識した最初である。

時を経て、就職し、縁が縁を呼び、僕がトライセラを担当するようになってから、木崎さんは、よくカフェでお茶しながら、打ち合わせがてら、いろいろな話を聞かせてくれた。古巣の後輩だからかは分からないが、僕が困って電話すると必ず時間を割いて会ってくれる、とても良くして下さる大先輩。

で、木崎さんがいつも話してくれるのは、つまりは「人と人の心」の話。どういう気持ちでものを作っているか、どうしたら相手に伝わるか、どうしたらわかってもらえるか、どうしたら相手を理解できるか。突き詰めると、全てこのあたりの話である。で、話の中でいつも必ず聞かれる。「で、おーもり君は、どうしたいの?」

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そんな木崎さんが本を出した。タイトルは「プロデュースの基本」。僕がカフェで伺った話も含めて、今までの御経験と、木崎さんが思っていることや感じてきたことがが、経験も含めて、たくさんたくさん詰まっている。で、この本のさらに凄いところは、「いつものように木崎さんが目の前で話してくれている」のとおんなじ文体で書かれているところ。普通、本を書くとなると、すこしカッコつけたり、飾ったりしちゃうもんだと思うんだけど、この本にはそれが無い。僕の知ってる、いつもの木崎さんが、いつものまんま、ここにいる。

学生から大人まで、「今、いろんなことに悩んでる」方に特に読んで欲しい本。文章には一切書かれていないのに「で、あなたはどうしたいの?」って問いかけられて、答えを導き出すきっかけになれそう。そう、いつものカフェでの俺みたいに。

全223ページ。しかも税込968円の安価。第一刷は完売間近と聞く。アマゾンでの品切れも頷ける。

さっき所用で電話したら「今、本のプロモーションでラジオ出てた。しゃべるのもだんだん慣れてきたよ」と笑う木崎さん。今日も、新しいことに挑戦している、いつも通りの木崎さんがいた。

明日は名古屋へ。トライセラのツアーが始まります。

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