ぼくは眠りにつく〜#シロクマ文芸部
愛は犬が運んでくれた。
思えばずっとひとりだった僕をきみは慰めてくれた。ぼくが疲れて帰ってくると、おかえりと尻尾を振って出迎えてくれた。
きみがごはんを食べている姿を見るだけで、ぼくの空腹は満たされた。
ごめんね。
僕がもっと賢かったら。
要領がよかったら。
もっとこの『人の世界』を上手に渡っていけたなら、きみにひもじい思いなどなせなかったのに。
ぼくはドアの鍵を外して少しだけ開けた。
きみだけでもここから出て誰かに助けられて生きながらえてほしい。
でもきみはそうしなかった。
きみは痩せ細り、傍らで静かな呼吸の音だけを子守唄のように聞かせてくれる。
ぼくはもうきみに触れることもできない。
腕を上げることもできない。
愛は犬が運んでくれた。
子守唄は止まり、ぼくの瞼は重く、二度と開くことはない。
小牧さんの企画に参加しました。
2回目です✨(いいのかな)
よろしくお願い致します☺️
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