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課長の憂鬱【涙鉛筆】(毎週ショートショートnote)


クライアント受けの良い、黒のリネンブラウスに袖を通す。
勤続20年。がむしゃらにやってきて気づいたら課長になっていた。
結婚歴無し。
子無し。
仕事に誇りをもっている。決して大きくはないが会社の理念が好きだ。
次のプロジェクトの成功の為に全力を尽くす。


それなのに。
恋に落ちてしまったのだ。
しかも10も年下の駆け出しのWEBライターに。
いいのか悪いのか。
いいことは彼が料理が上手なこと。
家に帰るとおかえりの声が聞こえること。
悪いのは?
疲れてる?と気を遣われること。



涙活ルポ。
彼の新しい案件。
人はどうして泣くのか。
あなたの泣いたところを見たことがないと言われ、アイデアをメモしていた鉛筆を転がした。
何故か鉛筆じゃないとダメなのだ。
泣いてる暇があったら動け。それが信条なの。
涙を流すのは人の特権だよ。
辛い時も悲しい時も流せば無くなる。
彼が私の髪を撫でる。
あなたがいなくなったらその時は。
目の奥に涙が溢れる。
鉛筆を握り直して仕事に戻った。


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