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ほぼ毎日の10分配信を約3年8か月続け、実に1222回目(!)をもっていったん区切りで打ち切った希代の漫才コンビ、エル・カブキに関する雑感の序の序ーー

ーーを書こう、書いておかなければならないと思ったのだが、エル・カブキを書くのはとても難しいことに気づかされる。いや、そんなことは前からわかっていた。なぜなら、ちょっと、ならぬ、かなり相当に風変わりな芸風の彼らをあらためて文字にしようとすると、思いきり虚しいものになるのが目に見えているから。

 自分はまだ彼らのおもしろさ(無二の個性、資質)に気づいてわずか1年ほどで、ファンとしては完全に若輩者であり、それが2人を語り切れない最大の理由の気もしていたのだが(けっこう前からの自問自答する課題でもあった)、最近そうでないことがわかった。昨年たまたま知りあいになった――彼らの長年の(10年ぐらい?)筋金入りのファンの人間との対話の中で何気なく尋ねたところ同じような答えが返ってきた。「2人の笑いを、他人にちゃんと説明するのは本当に難しいこと」と。

 2人の漫才は一般に“時事ネタ漫才”ということになっている。しかし、はたして、そうだろうか。それだけで彼らの漫才、芸風は言い切れるものだろうか。

 ほかの漫才コンビには到底マネできない配信が、いったい、なぜ、区切りという形になったのか。それもこの時期に。終わると言っても完全に終わるわけではなく、2人が語るところによると不定期の形でもって続けていく予定の様子だが、その決断に至った理由はやはり気になるところ。

 以下、(とりあえずの)ラスト回となった10分配信『エル・カブキの今日の10分おろし』の2人のやりとりより。

「毎日ニュースを扱うことによって、もう凝縮された漫才になったっていうのがけっこうあって」(エル上田)
「ハイハイハイ」(デロリアン林)
「それをやっぱり凄いがんばって、わぁ、これは毎月凄いいい漫才できてんなあって最中(さなか)、M-1で一回戦で落ちたら、まあ、ちょっとやりがいないっすね、いまね(笑)」(上田)
「ハハハ! ハッキリ言った。ハッキリ言っちゃったよ」(林)

  まあ、そういうことなのだろう。その一因、いや、主因としては、やはり先だっての「M-1一回戦で敗退」という不測の事態に尽きるのだろう。コンビ結成12年目にして初というM-1一回戦敗退は彼らにとって(ファンにとっても)相当相応にショッキングなものだったのは間違いない。

 そんな中、自分は、先だってのエル・カブキ、新道竜巳(馬鹿よ貴方は)、さかまき。(マッハスピード豪速球)の4人で行われたトークライブでの、新道氏のエル・カブキへのこういった指摘がかなり気にかかっている。彼らのM-1敗退が決まった直後のライブで、それを踏まえての発言。(※このライブ「新道竜巳のごみラジオ×エル・カブキの今日の10分おろし」の配信視聴は8月17日まで可能)

「ボクは一番エル・カブキがおもしろいって思ってた時期は、もう誰彼かまわず噛みついてた時期なんだよね。あれはオレはもう、凄い好きで。けっこうもうアイツがおもしろくないとか、けっこう言ってたじゃない。そんときは、あ、エル・カブキはこれで行き切ったらテレビに出るのかな? っていう気はしてたんだけどね。でもある日からそれももうやめたじゃない。(以下略)」(新道竜巳)

 なるほど、毒っ気がなくなってきた? というのは、自分の中でこの1年ほどの間でも、なんとな~く感じていた変化ではある。自分が彼らのトークと笑いに感銘衝撃を受けて、まず最初にしたことの一つは、膨大な(膨大過ぎ!)量の過去の配信をかたっぱしから聴いていく(2人の大半の配信はラジオスタイル)というものだったが、確かにここ1年、いや、ここ半年ぐらい、リアルタイムで聴いているものと、以前のものでは、微妙になにかが違っていると感じる。で、それをあらためて分析してみると、一因として新道氏も指摘するように、噛みつきや毒っ気というものの変化に行き着くように思われる。今回の突然の配信休止の背景には、そういった変化も関係している……と断じるのはちと早計だろうか。(つづく?)

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